ボッケ
ボコッボコッ
泥の沼が煮え立っている音がする。硫黄の濃い匂い。「ボッケ」という。阿寒湖の遊歩道に来ている。遊歩道沿いに柵があり、立ち入りが制限されている。柵を越えてボッケに近づくと、地面が陥没して埋まり大やけどする。過去にそんなことが実際にあったそうだ。火山活動により地中のガスや水蒸気が泥の沼から噴出している。
阿寒湖畔の遊歩道を見学したあと、スキー場に行った。夏なので、ロッジは閉鎖されている。山登りの準備を整えて、スキー場の草地の斜面を登り始めた。今日は暑かった。汗が流れ落ちる。スキー場の中腹に「白湯山自然探勝路」と書かれた看板があり、そこから登山道が始まっている。
よく整備された登山道を登っていく。イタヤカエデを多く見かけたので、秋の紅葉がきれいそうだ。白湯山の登山道の途中にもボッケがある。地響きのように、ボコッボコッと音がし始め、硫黄臭が立ち込めてくる。
カトリックの伝統的な黙想の中に「地獄の黙想」というのがある。こんな文章です。
霊操66 想像の目で、激しい炎、および火の体の中にあるかのように魂を見る。
霊操67 耳で、泣き声、悲鳴、喧騒、わが主キリストと諸聖人に対する冒涜の言葉を聞くこと。
霊操68 嗅覚で、煙、硫黄、汚水溜や腐敗した物を嗅ぐこと。
霊操69 味覚で、涙、悲しみ、良心の呵責のような苦い物を味わうこと。
霊操70 触覚で、ものに触れること。すなわち、炎が霊魂をなめ、焼き尽くすのを体験すること。
ボッケに落ちた自分を想像して身震いしました。
登山そのものは頂上に着いて、雄阿寒岳と阿寒湖の壮大な景色を見て、爽やかに終わっています。