月の裏側は見えない
大昔から人類が眺める月の模様は、いつも同じものだった。いつも同じ地球に向いた側の月面しか見ることができなかった。1959年、ソ連の月探査機ルナ3号によって、月の裏側の写真を人類は初めて見た。月の裏側は、表側のように「海」と呼ばれる黒い部分のあまりない、クレーターだらけの地形だった。
月が地球に同じ面しか向けないということは、月は自転していないのだろうか。そうではなくて、月は自転している。月の自転周期は27.32日、一方月が公転する周期も27.32日。自転と公転の周期が同じということは、地球にはいつも同じ面を向けるということ、このことが最初はどうにも飲み込めなかった。だって自転しているんだから、裏側を向くこともあるだろうという気持ちだ。天文宇宙検定という資格試験の問題集を見ると、次のような問題がある。
問「地球から月の裏側が見られない理由として、正しいものはどれか。」
①月は自転していないため
②月と地球の自転周期が同じなため
③月の自転周期と公転周期が同じなため
④月の自転周期と地球の公転周期が同じなため
正答は③月の自転周期と公転周期が同じなため
解説 図は、地球とそのまわりを回る月である。左図のように月が自転しなければ、地球からは月のあらゆる場所を見ることができる。一方、図の右のように月の自転と公転の周期が一致すると、地球からは月の同じ面しか見られない。見えない半分を月の裏側といっている。なお、地球に大きさがあること、月の公転軌道が楕円形であり、周回の速度が変化することなどで起きる秤動という現象で、わずかに月の裏側の端が見えるので、月の59%までは地球上から見ることができる。
そうか。月が自転しない方が月のあらゆる場所を見られて、月が自転しているから地球からは同じ面しか見えないのか。なんか感覚的に逆なような気がして、なんとなくすとんと落ちない。しかし、そうだということで、丸暗記する。頭の中で地球と月の模型がぐるぐる回るイメージを繰り返し再生する。「月の裏側見えない問題」を今日もまた考える。