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蒸し暑い中、歩く

日曜日の昼間に妻と二人で銀座に来てみたことがある。平日とは違う風景だった。車をシャットアウトし、歩行者天国になっている大通り。たくさんの人が行き交う。あちらこちらに人だかりができていた。人の輪の真ん中では大道芸人がパフォーマンスをしていたり、若者が細長い太鼓を腰にぶら下げて叩きながら踊っていた。クラリネットを吹いているミュージシャンがいたので、しばらく立ち止まって聴いた。「お祭り会場みたいだね」と妻に話しかけると、「そうね、人がたくさんいるわね」と返ってきた。

金曜日。今週の仕事が終わった。午後8時。日比谷公園の横を通って銀座方面へと歩く。蒸し暑い夜。時折、生温い風が吹く。帰りはいつも、霞ヶ関から東京駅まで歩いていた。銀座から有楽町、そして「はとバス」のターミナルを越えて東京駅の丸の内口についた。総武快速線に乗って、小一時間の乗車で船橋を越え津田沼駅まで行き、新京成線に乗り換えて数駅。薄暗い住宅街を歩いて自宅に着く。古めかしい5階建の集合住宅の4階。

翌日。土曜日の午前、住宅街の中を抜け、新京成線の線路沿いに歩く。時々、あまり人を乗せていない休日の電車が通る。踏切を横切って渡ると目指す病院がある。「内科・心療内科」と看板に書いてあるその病院。以前、妻に「最近、気分がひどく落ち込む」と相談した時にすすめられて通い始めた。「これを飲むと気分が非常に良くなりますよ」と医者がすすめる錠剤。これを朝に1錠飲むようになった。

薬を飲んでもあまり目にみえる変化はなかったが、飲んでいるという安心感だけで十分満足した。仕事が苦になり始めていた。長い勤務時間と最低の人間関係。ただ、週末の土曜・日曜がきちんと休める職場だったので救われている。

病院の診察を終えて、また同じ薬をもらってきた。線路沿いを歩きながら、午後は何をしようかと考える。せっかくの休みを無駄にしたくないと思った。また蒸し暑くなってきた。

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