見出し画像

猛禽類と共生する

環境省湿原野生生物保護センターの一角は、猛禽類医学研究所が占め、そこでは環境省事業として傷ついた希少猛禽類(国が保護増殖事業を行っているシマフクロウ、オオワシ・オジロワシ)保護、治療、リハビリテーションが行われているそうだ。残念ながら死んで回収された希少猛禽類の病理解剖も行っており、その死因究明の結果明らかになっている猛禽類が傷つく原因として、とくに交通事故、感電事故、鉛中毒、発電用風車との衝突事故(バードストライク)などが大きな割合を占め、それは「人為的」な影響で傷ついていると言えるとのことだ。希少猛禽類に該当しない傷病鳥の治療、例えばタンチョウなどを受け入れることもあるそう。ほかに個体を野生復帰させ自然環境下での行動生態を明らかにするための追跡調査を実施するなど、幅広に活動しているらしい。今回、センターのバックヤード見学をする機会があったので、その様子などを述べる。
11月になり朝の寒さも厳しくなってきた。車で湿原地帯を貫通する舗装道路を走る。湿原は草が枯れて一面薄茶色になっている。目指す湿原野生生物保護センターに少し早く到着する。車のヒーターで暖を取りながら待つ。時間になったのでセンターに入り、猛禽類医学研究所の今日の案内の方とあいさつし、展示室を抜けて、会議室で1時間ほどレクチャーを受ける。スライドを観ながら、数多くの野生動物が人間の生活によって怪我や病気になり死亡している現状を学び、それを受け止めて、どのように改善していけば良いかを考える「環境教育」の取り組みが重要だし推進しているといった説明があった。
続いて、展示室のモニター越しにシマフクロウを見る。野生復帰のための訓練中の個体は、人への警戒心を保ち、交通事故などに巻き込まれないようにする必要があるため、人との関わりを避けて飼育する必要があるらしい。
外に出てバックヤードと呼ばれる野外のケージがある区域に行く。巨大なケージがあり、窓がついていて見学者が随時覗き込み、わたしも写真を撮る。10羽ほどのオオワシやオジロワシが鳴き交わしながら過ごしているのを見る。彼らは「終生飼育個体」ですと案内の職員から説明があった。事故などで怪我をし、治療を受けて一命はとりとめたものの、翼を失ってしまったりして野生に帰ることができない動物達とのこと。30年は生きるであろう彼らに生きていることの意義を見出したいと考えていて、傷付いて運び込まれた仲間の救護のため、手術の際の輸血のドナーになったり、事故対策器具の開発ということで、今はケージの中に大きな発電用風車の模型が設置され、どんな形状や色だったら大丈夫か試験しているとのことだ。そして環境教育活動を手伝ってもらい、啓発普及活動の最前線で活躍し、たとえ終生飼育となってしまっても、野生動物本来の生き方を尊重しながら、彼らの可能性を模索していく、その一つ一つの命と真摯に向き合っていきたいと説明があった。
館内に戻り、展示室などを観てから、案内の職員にお礼のあいさつをして帰る。野外はもちろんだが館内もたいへん寒い。環境省の施設なので、温暖化対策の一環で室内の温度を絞っているのだろう。もっと厚着をしてくればよかったと思った。


いいなと思ったら応援しよう!