【凡人の対談 6.「凡人のコミュニケ術」(1):そんなに頑張って喋らなくていい。】
これは、とある凡人が、さまざまな人間から、彼の経験談や、考え方を根掘り葉掘り聞かれまくるという、しょうもない話である。
〜とある怪しげな一室〜
「凡人さん、こんにちは。」
「はいこんにちは。」
「本日はよろしくお願いします。」
「はいよろしくお願いしまーす。」(ちょっと慣れてきた)
「本日は、あなたの飲食店の店長時代のお話をお伺いしたいと思います。」
「はいわかりました!」
「凡人さんは、飲食店の店長をされていたということですが、その中で、多くのスタッフたちとコミュニケーションをとりながら、お仕事されてきたかと思います。」
「はい、だいたい1店舗あたり30〜40人くらいのスタッフはいましたね。」
「その際に、ご自身のコミュニケーションに関して、大事にされていた事はありますか?」
「はい、もちろん、いくつかあります!」
「まずは、内容は良いので、それらを端的に教えていただいてもよろしいでしょうか。」
「はい。『三つ』あってですね、①『傾聴力』②『言語化力』③『理解力』ですね。」
「なるほど、その三つですね。それでは、それぞれ詳しく聞かせていただきます。」
「はいどうぞ。」
「では、まず①『傾聴力』についてですが、これは一般的に言われる傾聴力、『相手の言葉に意識的に耳を傾ける。』という解釈でよろしいですか?」
「はいそうですね。」
「そうですか。。何と言いますか、わりと『ありふれたこと』ですね。」
「はい、わたくし『凡人』ですから。。」
「そうでしたね。。何というか、失礼致しました。」
(謝られると逆につらい。。)
「いえいえ、大丈夫です。」
「それでは、どういう理由から、『傾聴力』というものを大事にされているんですか?」
「はい、店長をやっていく中で、スタッフから『信頼』されること、そして『付いて来てくれる』ことが重要です。」
「はい。それはそうですね。」
「僕に、万人を惹きつける『カリスマ性』とやらがあれば、もしかすると、『傾聴力』などなくても、勝手に人がついてくるのかも知れません。」
「ただ、それは残念ながら『凡人の所業』ではありません。」
「なるほど。それも同意します。だから『傾聴力』が必要。と、こう仰るわけですね?」
「はいそうです。これは僕の経験上の話ですが、人は『めっちゃ喋ってくる人』より、『めっちゃ話聞いてくれる人』の方を信頼する傾向があります。」
「なるほど。それでは、どのようなスタンスで話を聞くのですか?」
「はい。『実際に僕が聞いているか聞いていないか』よりも、相手が『聞いてもらえていると感じるかどうか』に、重点を置きます。」
「だからパソコンをしながら聞くとか、口だけで返事するとかは、無しですね。」
「なるほど。それにはどういう理由があるのですか?」
「はい。例えば、あなたが体調を崩して、医者にかかったとします。」
「はい。」
「あなたは、目の前の医者にこう聞きます。
『先生、最近、何だか身体がずっとダルいんです。どこか悪いのでしょうか?』
それに対し、目の前の医者が、
『違います。病気ではありません。疲れているのです。寝てください。』
そんなふうに即答されたとします。これ嫌じゃないですか。」
「確かに。本当ですか?、と不安になりますね。」
「こんなふうに、『いきなり否定せず』、『いきなり答えを言わず、相手の話を最後まで聞く』、そういう聴き方が大切だと思います。」
「なるほど。」
「僕も店長初めの頃は、やる気もあったし、知識・経験・能力もそれなりにあったので、それこそ『喋りまくって』ました。」
「スタッフの話も聞かず、
『これがマニュアルだから、こうしてください。』『こっちの方が、効率的だからこうしてください。』『そのやり方は違います。正しくはこうです。』
そんなふうに、喋りまくり、指摘しまくっていました。」
「そうだったんですね。それでどうなったのですか?」
当然嫌われましたし、辞めてしまうスタッフや、ついて来なくなるもいました。
「ついて来なくなるスタッフ『も』ということは、それでもついてくるスタッフもいたのですね。」
「僕は、最終的にそのお店をうまく作り上げられなくて、異動することになったのですが、
後になって考えると、最後まで付いて来てくれたスタッフたちには、ある『共通点』がありました。」
「共通点ですか。それは何ですか?」
「はい。彼・彼女たちは、出勤数の多いスタッフたちで、一緒に働く中で、家庭や学校の話を聞いたり、仕事上の悩みを聞いていたスタッフたちばかりだったのです。」
「最終的に残ったスタッフは、僕が彼・彼女ら自身のことについて、よく知っているスタッフたちばかりだったのです。」
「なるほど。それで、『話を聞くこと、相手を知ること』の大切さを知った。そういうことですね。」
「はい。その事実を、僕自身に照らし合わせた時、僕が信頼している人は、『僕のことをアルバイト時代から知ってくれている上司』だったし、『新入社員時代から、僕の話をよく聞いてくれていた上司』だったんです。」
「なるほど。それで、『傾聴力』なのですね。」
「はい。人から信頼される上で、意外に『喋らなくてもいい』んです。自分の能力の高さを示す必要もないし、正論もいらない。誠実さをアピールしなくてもいい。
『ただただ、しっかり、親身になって話を聞く。』
能力高ければ高いほど、知識・経験があればあるほど、すぐに否定したり、話を切りたくもなります。
そこはある種の『我慢』みたいなものも必要です。
「なるほどわかりました。ありがとうございます。」
「少し、休憩を挟みましょう。その後、②の『言語化力』についてのお話を聞かせていただきます。」
(休憩!!)
「はいわかりました。」
つづく