「我が姿は正義。我が姿は世界。」
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我が正義が宇宙を満たす。
今日、この日この時より宇宙の新章が始まる。
その歴史に刻む名前はザマス。
永遠の正義をうたうものだ。
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23の時に会社を出した。
自分では意図したことではなかった。
今思えば完全に世界を
手中に収めたと感じていた。
いや・・・
今思えば完全なる勘違いだ。
道をはずれ、普通であれば就職して
しっかりとした、それなりの名の通った会社に
属して普通に金曜日の5時を楽しみに生きる、
一般的な生活ができたものを・・・
どこで道を間違えた?
あ。あの日に狂ったのだ。
求人募集に35万円でお昼13時出勤。
若々しい男女がピースをしながら
こちらに笑いかけている、ペ-ジ。
その世界は完全にアンダーグラウンドな世界だった。
世間はその世界の商売を・・・
「デ-ト商法」と名付けていた。
結論は・・・
知らない女性とテレアポにより、
勧誘し、最終的に100万を超える宝石を売るのである。
罪悪感はあるか?
仕入れはたかが10万円である。
それが100万で売るとなれば利益は90万だ。
はじめはあった。
罪悪感というものが。
ただ、当時はクレジット契約を行うので、
信販会社への手数料をとられるが、たかがしれている。
てことは手数料を抜いても80万は純利益ということになる。
20の時この世界に足を踏み入れた。
平日の仕事といえば
もっぱら13時に出勤し、いかにして
どっから手に入れたのか知らない家電に電話してそのリストに記載された女の子の名前を、でた先の対応者に問う。
「あ、〇〇ですけど〇〇ちゃんいますか?」
大概は親がでて、
「いません」とガチャ切りされる。
しかし、時にその本人が電話口にでる時。
そのタイミングを必ず逃さない。
いや、逃すわけにいかない。
「大阪のアクセサリーアパレルメーカーの〇〇っていいます。
今度そっちの大分県の方で宝石展示会をすることになったんですけど
簡単な現地調査のアンケートなのでご協力くださいね。
声聞いた感じ、若そうですけど何歳の方ですか?」
相手は20歳。
・・・当然だ。
なぜなら20歳のリストに電話をかけてるのだから。。。
「え⁉︎まさか、こんなことある?俺と同い年やぞ笑笑。
大阪と今、大分でこうやって同い年が知らない者同士なのにたまたま繋がって話してるなんて奇跡に近くない?」
どこかの世界で聞いたような偶然を装った演出。
アンケートなんかは口実に決まっている。
「アンケート終わっちゃったんやけど、
せっかく20歳同士だし、少し話さない?
俺普段、こんなアンケートかける奴ちゃうねん。
たまたまバイトの奴が休みで人手たりないからって部長に言われて無理やりかけさせられててけど、俺、ほんまはジュエリーデザイナーの卵やねん。」
んなわけない。
「今部長、飯いっていないからちょっとだけ電話つきあってよ笑笑」
向こうの顔などわからない。
時代はiモ-ドの携帯がでたばっかり。
携帯にカメラなんてものもついてないし、
ましてやカラ-でもない。。。
このタマタマという演出をかけた魔法で
電話の向こうの彼女もその魔法にかかって
しまったようだ。
「俺今度そっちの大分県、展示会の案内でいくねん。〇〇ちゃん、大分やろ?
時間あるなら会おうや。ひとまず普通にお茶しょうや。
だから来週の土曜と日曜で展示会でいくから
俺、途中抜け出して〇〇ちゃんに会いにいくから近くの大分駅に待ち合わせしょう!」
電話口でお互いの携帯電話番号をワンコ-ルして交換する。
そこからは彼女の私生活に入り込む。
おはよう。
おやすみ。
昼ごはん、パスタたべたよ。
〇〇ちゃんは?
・・・出会うまでの1週間はこんな形でのやりとりが続く。
最終的には彼女を展示会に誘うために。。
ことの成り行きを知ってるだけに罪悪感が募っていった。
こちらはそんな女の子を3.4人やりとりしているのだけど、彼女はそれを知らない。
部長に問う。
罪悪感に潰されそうだと。。。
ノ-トにある図がかいた紙を渡される。
「幸福のスペースにいきたいとしょうか。
でも赤い線を通れないとなった時、
お前は❶と❷・・・
どちらが一番近道だとおもう?」
・・・。
❷?
いや・・・❷でありたいと思った。
「答えは❶だ。」
その時はわからなかった。
なぜ部長がそんなことを言ったのか。
大分県でその彼女と会った日。
会う当日まで
メールのやり取りは毎日のように続いていた。
まるで彼女、彼氏のように。。。
大分には大阪から
大きなハイエースに営業マン全員が乗り込み、
目的の大分まで前日の夜にでて、
夜中高速を飛ばして朝には大分につく。
一人に新幹線代などだすより、
会社はハイエース一台に人間をぶち込めるだけ
ブチ込めるから経費は安くつく。
土曜の18時。大分駅前。
顔もしらないその彼女に会いに向かった。
これまでプライベートでも
女の子に路上で声かけてお持ち帰りしたり
してきた。
でも何かが違った。
あからさまにドキドキしている。
新人であった俺は、
この大分で取れたアポはたった1本だった。
だからこの1本は
アポキャンがこないように
おはよう。
おやすみ。
時には・・・
会社を終えてから電話で普通に
いろいろな話をした。
今の仕事のこと、趣味のこと。
将来のこと。
彼女も楽しそうに話していた。
顔はわからない。
交換さえできない時代だったから。
ドキドキしていた。
彼女らしい子が手を振っていた。
雷が打たれるおもいだった。
彼女の顔を見たとき、本当に大好きだった
前の彼女と顔が似ていたのだ。。。
なんという偶然、、、
なんということだ、、、、
「やっと会えたね」
彼女が笑っている。
「大分初めてって言ってたでしょ?
私、案内したげようとおもって
美味しいお店予約したんだよ!」
本来は、販売目的だから
基本、展示会に近い喫茶店に誘導しなければ
ならない。
主導権はこちらでなくてはならない。
しかし俺は彼女の優しさに気持ちが揺れた。
彼女の予約したお店の席に座っていた。
「ここのハンバーグ美味しいんだよ」
笑顔で話す彼女は
顔も知らないで会話してた1週間、携帯から
聴こえてきていた声、そのものだった。
俺はこの子を展示会場に連れて行って
宝石を売らなければいけない。。
会場に連れてこなければ
死ぬほどツメ殺されるぐらい会社に、
部長にキレられる世界。
女の子と会いに行って
会場につれてこれなかったとなれば、
それこそ変なことしてたか、
してないかの境界線は連れてきたか、
連れてこなかったでしか判断しないような業界だ。
罪悪感。
それしかなかった。
意を決して決断する。
だめだ。
もう全部話そう。
俺は彼女に全部うちあけた。
自分が君に宝石を売ろうとして家に
電話したことを。。。
でも今、自分の心の中で話さなきゃと思ったこと。
彼女は泣いていた・・・
そう。
すべてこの1週間のやりとりは
買ってもらうための行動だったんだなと
彼女が理解した結果が涙として流れていた。
立ち上がった彼女を追っかけることが
できなかった。。
俺は一人、展示会場の場所にかえる。
なぜか涙が流れてきた。
俺は一人の女の子を傷つけてしまったと。
会場にかえることもできなかった。
俺は新人ということもあり、
売れないでいるといつまでも
行きも帰りも運転をさせられる位置にいた
のでハイエースの鍵をもっていた。
悔しいのか、悲しいのか
罪悪感やいろいろなもので潰されそうになった。
ハイエースの一番後ろに震えるように
縮こまって・・・
あまりにも帰りの遅い俺を心配してか
同期のみんなからの携帯がなっていた。
それでも俺は車の後ろで泣いていた。
「こんなとこおったんかよ笑」
同期の二人が車の後ろで泣いている俺を
見つけた。。
同期の一人がいう。
俺より先に売れるようになっていた奴だ。
「俺さ、思うんやけど
この仕事ってさ、、、、
たしかに女の子に宝石売るって仕事だし、
ちょっとはじめ胸痛いとおもったけど
色とか使わず、普通に綺麗やから
自分のために1つぐらい身につけるぐらいの
モノもっててもいいんじゃない?って
言えたらきっと買ってくれてさ、
その後、いつもつけてるよって
大阪かえっても連絡くれる子もいるで。
お前は、その体験をしてない。
それがお前もできたら、
きっと「仕掛けたなら仕掛けた側の責任」
を回収する義務があるとおもうで。」
ハイエースのラジオから
古内東子の「誰より好きなのに」が流れていた
やさしくされると切なくなる
冷たくされると泣きたくなる
この心はざわめくばかりで
追いかけられると逃げたくなる
背を向けられると不安になる
誰より好きなのに
俺はあの子に
一瞬でも惹かれてたのかもしれない。
でもそれはたった1度きりのことだった。
この日から俺は忘れたことがない。
「仕掛けたなら仕掛けた側の責任」
営業って仕掛けて
嫌な形になったら
もうそれは一生相手のこころにきざまれる。
だから攻めて仕掛けたなら
最後は売らないと・・・
売り切ってあげないと
「買ってよかった」の言葉は
絶対に生まれないから。
だから一本、一本を外してはいけない。
だからト-クを磨くし、
自分が正義だと思わなければならないんだ。
我が姿は正義。
我が姿は世界。
前に聞いた質問の答えでたか?
部長が思い出したかのようにきいてきた。
「幸福のスペースにいきたいとしょうか。
でも赤い線を通れないとなった時、
お前は❶と❷・・・
どちらが一番近道だとおもう?」
❶です。
ほ〜早いね。
この前俺が❶って言ったから
そう答えたんじゃないのか?
俺は普通に就職した同年代とは違って
稼ぐために営業職を選びました。
だから❶です。
よろしい!
約20年前の話。