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令和6年度NHK新人落語大賞における審査員の傾向について

いよいよ本番が目前に迫ってきたNHK新人落語大賞の決勝大会。
出場者と演目、審査員など大会概要が明らかになるにつれ、今回はどんな戦いが繰り広げられるのかと、楽しみが日に日に増幅してゆく。

大会の鍵を握るのは、なんといっても審査員だ。
彼らが出場する6人の落語家の芸をどう評価し、どういった採点をするのだろうか。
今回審査をする5人の審査員は、過去の大会で審査経験のある人たちばかり。
この5人の審査員が、過去にどのような審査をしてきたのか。審査に傾向はあるのだろうか。
それらをデータから考察してみたいと思う。


激戦を審査する審査員は?

それではさっそく、令和6年の大会を審査する審査員の顔ぶれを見ていきたいと思う。
※カッコ内は審査員を務めた回数

桂文珍(11年連続11回目)

いわずと知れた上方落語界の重鎮であり、吉本興業の看板タレント。若いころからメディアで売れてたお茶の間の人気者であり、現在もNGKの舞台で老若男女のお客さんを爆笑の渦に巻き込む現役バリバリの落語家でもある。
高座では小拍子をマウスに見立てた仕草を取り入れるなど、世相を取り入れた新作落語を数多く演じている。

柳家権太楼(3年ぶり8回目)

『寄席の爆笑王』の異名をほしいままにし、豪快さと繊細さを兼ね備えた東京落語界を代表する看板真打。
1970年に5代目柳家つばめに入門。師匠の死後は大師匠である5代目柳家小さん門下に移り、1982年に18人抜きの抜擢で真打昇進。その後、落語協会常任理事、監事、相談役と要職を歴任。
名実ともに落語協会の大看板だ。

片岡鶴太郎(7年連続8回目)

元は声帯模写で活躍しした片岡鶴八の弟子であり、その後『オレたちひょうきん族』で一躍テレビの人気者となる。現在ではヨガに傾倒し、ストイックすぎる生活が話題を呼んで再ブレイクを果たした。
ものまねタレント、リアクション芸人、プロボクサー、俳優、画家、歌手、ヨガインストラクターと、多様な肩書を持っている、まさにタレント(=才能)と呼ぶに相応しい人物。
師匠の片岡鶴八は落語協会に所属したこともあり、寄席演芸にも造詣が深い。

赤江珠緒(2年ぶり2回目)

朝日放送のアナウンサーとしてキャリアをスタートさせたのち、フリーに転向。
長らくTBSラジオ平日午後の人気番組『たまむすび』のパーソナリティを務め、夕方の顔として人気を集めた。
番組のゲストコメンテーターとして春風亭一之輔が出演するなど、落語家との共演も多い。

堀井憲一郎(2年ぶり10回目)

早稲田大学卒業後、雑誌にコラムを執筆し人気を博す。以降、紙面やテレビなどで40年近く活躍を続けるコラムニスト。
なんでも徹底的に調べ上げるスタイルで知られ、日本唯一の演芸専門誌『東京かわら版』の連載でも、自身が実際に聴いた高座のデータをもとに独自の切り口でコラムを執筆している。
このNHK新人落語大賞の審査員を2007年から務めている最古参(途中ブランクあり)。5人の審査員のなかで、もっとも「お客さん」としての目線を持っているであろう彼がどのような審査を見せてくれるのか楽しみだ。

赤江のみ今回が2回目の審査だが、他の4名は過去7度以上審査員を務めているベテランぞろい。
今回はその5人の過去の審査の傾向に焦点を当て、どんな審査をしてきたのか見ていこうと思う。

審査員5人の採点分布

最初にお断りしておくと、今回のデータは私が集計を開始した2016年以降のものを用いている。
赤江以外の審査員は2015年以前から審査をされているが、上記理由により、それ以前のデータは含まれていないのでご留意いただきたい。

では早速、5人の審査員の過去の採点分布を見てみよう。

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