極楽のバトルハイスクール②
ギャグでH中(前回S中と書いたが誤りです)の頭だと言ったらマジにとられて同学年のヤンキー全員を敵に回した俺は、以降バトルを繰り広げる事になる。
俺は持ち前の発想の転換とハッタリでこれらをのらりくらりと潜り抜けた。
中でも役に立ったのが「偽引き分け」という秘技である。
ダントツで族が多く競合ぞろいのY中の危ない奴エースケ(仮名)戦である。
エースケはあしたのジョー、あるいはスネ夫のような直角に飛び出た直毛という凄い髪型で、常に手で口元を隠すと言う危ないルックス、その上カッターナイフで中学で暴れただの逸話を持つ、早い段階で「関わりたくねえ…」と思ってた奴だった。
が、案の定「てめーか、フカシの頭ってのはよ」とウワサを聞きつけたエースケとタイマンを張る羽目になった俺。
ここにY中の切り裂きジャックVS自称H中のアタマ極楽のバトルが切って落とされた。
ここで、明日を戦う高校生諸君の為に俺がこのピンチを乗り越えた奥義「偽引き分け」のレシピを公開しよう。
1.「ギャラリーが仰山おる所がええわい」などと言って、トイレなど目立つ場所を決戦の舞台に選ぶ
2.とにかく防御に徹し、可能な限り時間を延ばす。この時、自分の攻撃はたまにしか見せないのがミソである。
3.「あ、これ以上はアカンわ」と思った辺りで「授業の時間だ、この辺にしとこうぜ。」などと言って突然バトルを中断する。
4.当然「ふざけんなコラ」などと相手は怒るが、「もうこれ以上やっても仕方ねえよ」などと、さもお前の技は見切った的な態度で余裕振る。
5.ギャラリーから「あいつ実は凄えんじゃ…」的な空気が産まれ決着がうやむやになる。
この技により俺は数々のピンチを乗り越える事が出来た上、大人になってからのバトルでも多様する事になる。
しかし弱点は相手の恨みを買うので、倍々ゲームで敵が増える事である。
しかしこのハッタリもいつかはバレてしまう。というか俺がバレてないと思い込んでるだけで既にバレてるかもしれない。
それにバトルばかりの毎日もいい加減勘弁してほしい。
このまま孤戦も限界だと感じていた頃、俺にも仲間が出来た。
最初の仲間はYS中の銀太(仮名)だ。
銀太は現役の族でれっきとしたヤンキーなのだが、同じ中学の奴がいなかった事で孤立しており、俺と同じくシュールなギャグ好きでノリが軽いためか最大勢力のヤンキーとソリが合わず、俺と行動を共にする事になる。
そこにやはり同じ中学の奴がいなかった無口な天野(仮名)が加わり、ここに枢軸連盟が結成された。
もう一つはパンクスである。
時は2000年代。まだまだエアジャムの影響があり、パンク高校生が沢山いた。
俺がピストルズを無理やり銀太に聞かせていると「いよぉーお!極楽(当時極楽とは呼ばれてなかったけどめんどくさいので極楽で通します)、パンク好きなんかよ!」とスパイキーヘアのコースケ(仮名)が話しかけ、パンクスの仲間を紹介してくれた。
クラスのパンクスは缶ペンに好きなバンドをずらっとマジックで書く習慣があり、誰がパンクスがすぐに分かった。
コースケはハードコアとミクスチャーが好きなようだった。
「族とパンクスは共存する」とは特攻の拓だが、このクラスも同様にお互いを刺激し合う事がなかった。
実際、パンクスで好きなバンドの話で盛り上がってたらヤンキーが「あーん?便所の話かー?」と絡んできたら全員で「おい、パンク舐めんよ」と怒ったりし、ヤンキーもそれは悪かった、などと素直に認めるなどの距離感を保っていた。
これらにより「フカシの頭極楽」騒動は風化するかに思われたが、最後の最後に事件が起きたのである。
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