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「Super Being : 人智を超越したもの」世界遺産の語り部Cafe #17

今回の世界遺産は、ノルウェー🇳🇴の【ガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルド】について。



フィヨルドの定義



“フィヨルド”とは、ノルウェー語で「内陸部へ深く入り込んだ湾」を意味しており、氷河の侵食作用によって形成された湾、入り江のことを指します。

フィヨルドの土台となる「深く削られ、狭く急な崖が海中まで続く谷」は、氷河によって運ばれた岩や粘土などが、堤防のように堆積した「モレーン」と呼ばれるものです。

モレーン

約100万年前、北欧全体を覆っていた分厚い氷河が徐々に溶けだし、谷底を削りながら海へと流れた結果、そこに海水が侵入してフィヨルドが形成されました。

世界遺産に登録されている2つのフィヨルドは、それぞれ異なる特徴を持ち、「ガイランゲルフィヨルド」は全長約60キロで、頂上には永久凍土が広がる高山に囲まれています。

ガイランゲルフィヨルド
セブンシスターズ

一方の「ネーロイフィヨルド」は、全長約100キロ、頂上に氷河湖などを有する、なだらかな山々に囲まれているという特徴があります。

ネーロイフィヨルド


ガイランゲルに牧師はいらない フィヨルドが神の言葉を語るから


数ある中でも「最も美しい」と評されるガイランゲルフィヨルドは、20世紀を代表するノルウェーの作家で、ノーベル文学賞も受賞した「ビョルンスティエルネ・ビョルンソン」にも深く愛されました。

ビョルンスティエルネ・ビョルンソン

ビョルンソンは、ガイランゲルの美しさ、壮大さを評して

‘’ガイランゲルに牧師はいらない。フィヨルドが神の言葉を語るから‘’

という言葉を残しています。

幻想的なフィヨルドの風景

フィヨルドが、我々の人智を超越したものであることを比喩で例えた、著名な作家ならではの表現ですよね。

また、蛇足ではありますが、牧師という役職は「プロテスタント三大原理」のひとつで‘’万人が祭司である‘’という、プロテスタント的な概念に基づいています。

カトリックのように聖職者を置かず、誰しもが祭司であるというルター的思想に準拠した原理ですが、宗教改革の時代にノルウェー国教会がルター派を奉じたことを考えれば、いかにもノルウェー人らしい表現と言えるかもしれません。


ノルウェー5大フィヨルド


ノルウェーを代表するフィヨルドとして、「5大フィヨルド」と呼ばれるものがあります。

そのうち、世界遺産に登録されるのはガイランゲルフィヨルドのみですが、世界遺産登録されていないその他4つのフィヨルドについても、合わせて触れていきます。

  • ソグネフィヨルド

ソグネフィヨルドは、全長200キロメートルを超えるノルウェーで最大のフィヨルドです。

“フィヨルドの王様”の異名を持ち、支流には、世界遺産のネーロイフィヨルドが含まれています。

ソグネフィヨルド

また、ソグネフィヨルドの近郊には有名な「フロム鉄道」も走っています。

フロム鉄道に乗らずしてノルウェーを語れないと言われるほど、滝や山々の美しい絶景がどこまでも広がる鉄道です。

フロム鉄道
  • ノールフィヨルド

ノールフィヨルドでは、ヨーロッパ最大級のブリクスダール氷河と、フィヨルドを同時に見ることができます。

全長113メートルで、数多くの滝を見ることができ、近くにはヨーロッパ最深の湖である、ホーニンダルスヴァトネ湖があります。

ノールフィヨルド
ブリクスダール氷河
  • リーセフィヨルド

‘’光のフィヨルド‘’を意味するリーセフィヨルドで最も目を引くのが、「プレーケストーレン (ノルウェー語で演説台の意)」と呼ばれる、海面から突き出た断崖絶壁の巨大岩です。

プレーケストーレン

リーセフィヨルドには、高さ1000メートルを超える岩山に挟まれた“奇跡の岩”こと「シェラーグ・ボルテン(Kjeragbolten)」という名所もあります。

シェラーグ・ボルテン
  • ハダンゲルフィヨルド

全長179メートルで、ソグネフィヨルドに次ぐ2番目に大きなハダンゲルフィヨルドは、所々に花や果実を見られることから、‘’フィヨルドの女王‘’と呼ばれています。

最大の名所は、「トロルの舌(トロル・トゥンガ)」と呼ばれる、崖から水平に突き出た岩塊です。

トロルとはノルウェーの民話に出てくる妖精で、長いトロルの舌に似ていることからそのような名称で呼ばれています。

ちなみに、トロルの舌までたどり着くには最低でも8〜10時間の登山が必要で、私も近くまでは足を運んだのですが、体力面が理由で都合が合わずに断念しました。。

トロルの舌(トロル・トゥンガ)


ヴァイキングの始まりと超自然的な死生観



ヴァイキング(Viking)の“Vik”は古ノルド語で入り江・フィヨルドを意味することから、フィヨルドはヴァイキングたちにとっても特別なものであったことが伺えます。

史実に近い形で描かれたヴァイキング

ヴァイキングの時代はしばしば、793年にイギリス・ノーサンバーランド州にある小島、「リンディスファーン」の襲撃に始まるとされることがあります。

リンディスファーン修道院の廃墟

フランク王国のカール大帝は、襲撃で捕虜になった修道士のために多額の身代金を用意したと伝わっていますが、この時の「リンディスファーン修道院襲撃事件」は、すでにキリスト教が定着していた西欧社会を震撼させました。

カール大帝(シャルルマーニュ)

死すらも恐れない勇猛なヴァイキングは、「七王国時代(ヘプターキー)」のイングランドでは「デーン人」と呼ばれ、数世紀に渡って脅威の存在となりました。

アングロサクソン七王国(ヘプターキー)

ヴァイキングの強さの理由のひとつには、彼らの超自然的な死生観にありました。

北欧神話を信仰するヴァイキングたちは、戦場で亡くなった者は「主神オーディン」に仕える「ヴァルキリー(ワルキューレ)」によって選別され、死者の館「ヴァルハラ」に送られると信じていました。

ヴァルキリーのイメージ
ヴァルハラのイメージ

ヴァルハラに送られた者たちは、終末戦争「ラグナロク」に備える兵士となるのだと伝わっています。

ラグナロクのトール

ヴァルハラのイメージは、北欧における聖山信仰がベースにあると言われています。

もしかすると、フィヨルドのように壮大な自然環境が根源となって、超自然的な世界観を持つ北欧神話は生まれたのかもしれませんね。

【西ノルウェーフィヨルド群 -ガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルド:2005年登録:自然遺産《登録基準(7)(8)》】



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