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『児童養護施設』を退所。その後の未来をどう切り開いていけばいい?親族に頼れず貧困・孤立化する若者たち

 内定取り消しや採用控え、アルバイトの減収や経営不振による解雇など、新型コロナウイルスが若者の行く手に暗い影を落としています。そんな状況下にあっても、実家に頼ることができず、今もなお苦しんでいるのが、虐待や、ネグレクト、経済的理由など、さまざまな事情で親のもとで暮らせなくなり、社会的養護下にいた子どもたちです。

■施設を退所した後に待ち受ける苦難・困難

 私もその一人でした。小学生の頃に大阪にある児童養護施設に入所し10代のほとんどを養護施設で育ちました。
私は約10年間養護施設で暮らし、児童養護施設や里親の元などを転々としてきました。小学校や中学校の授業参観では、クラスメートの親の顔が並ぶ中、自分だけは「施設の先生」で寂しい思いをしました。孤独で眠れない夜を重ね、死にたいと思ったこともありました。

 私の周りの友人も当初は児童養護施設で育ったと聞くと「可愛そう」などといったイメージを持たれることが大半でした。しかし、施設で育った「経験」が「強み」になることを今振り返ると強く感じます。

例えば、幼少期から様々な生い立ちや年齢の子供たちと関わることで培われるコミュニケーション能力や共感力。

そして18歳の自立に向けて自身で進路を決め、そのために必要な資金を集める力などが身に付きます。これらは貴重な経験となり、財産になりました。

話が逸脱してしまいましたが本題に戻ります。
現在、国内にいる社会的養護下にいる子どもたちは約4万5000人。(令和2年発表「厚生労働省子ども家庭局」より引用)主に児童養護施設や里親、ファミリーホームなどに振り分けられます。

そのうち6割は児童養護施設で暮らしていて、児童養護施設は原則的には18歳で退所しなければなりません。実は児童養護施設で暮らす児童たちの9割以上に親がいます。しかし、安心して頼れる状態ではないケースが多いのが現実です。退所後、頼れる親や大人のいない中で、衣食住、就職、進学、すべてのことに対応していかなければなりません。そんな状態でこの現社会情勢をサバイブしていくのは、苦難の連続だと思います。孤立が続けば、最悪の場合、犯罪被害にあったり、犯罪者になってしまったり、最悪のケースではホームレス化につながる可能性もあります。

■7人に1人は貧困という衝撃

 つい先日、朝刊を手に取り記事に目を走らせていて知ることのできた認定NPO法人ブリッジフォースマイル(B4S)。

児童養護施設や里親家庭で暮らす子どもたちの自立支援を行っている団体があります。認定NPO法人ブリッジフォースマイル、通称B4Sです。
子どもたちをサポートするための各種プログラムを用意されています。社会と子どもの架け橋となり、子どもたちの理解者を増やすためのセミナーも行うなど、さまざまな形での支援を行っています。
目玉プログラムの「巣立ちプロジェクト」という記事が取り上げられており、養護施設の退所を控えた18歳の高校生を対象に、巣立ち(ひとり暮らし)に必要な知識とスキルを学ぶ場を提供しています。

 『家計について』。住民税など各種税金や衣食住、医療費や冠婚葬祭といった臨時の出費など14項目をゲーム感覚で学んでいきます。かなり踏み込んだ内容ですが、子ども1人に対してボランティアが1人ついており、個々の理解が進むようサポート体制も充実しています。
B4Sでボランティア活動を始めて3年目に入った大貫美恵子さん(57)は、参加のきっかけを次のように語ります。

「5、6年前、子どもの貧困が大々的にニュースで取り上げられたことがあって。そのとき、こんなにモノがあふれている日本で、7人に1人は貧困という事実に衝撃を受けたんです。何らかの支援ができたらと調べるうち、いくつかの団体とともにB4Sの存在を知りました。子ども関係のボランティアにもいろいろあって、例えば虐待を受けた子どもたちに関しては専門的な知識が必要です。そこで、そちらは寄付という形を取りました。B4Sもハードルが低いわけではないのですが、ボランティアのための研修制度が整っていたので、私でもお手伝いできるかな? と思ったんです」
初めは複雑な家庭環境の子どもに何と声をかけ、どのように接したらいいのか戸惑いがあったと大貫さん。

「だけどそれは、こちらの勝手なイメージ。言い方はよくないかもしれませんが、みんな明るい普通の子どもたちで、抱えている事情も千差万別。思い込みはすぐに払拭されました」

では、サポートを受ける側はこの機会をどのようにとらえているのか。
養護施設に入り、実際に巣立ちプロジェクトを利用された方への談論を予定しておりますので後日配信させていただきます。

■退所者への支援とさまざまな課題

 私の経験からもそうでしたが、お金の不安はもちろん、冠婚葬祭のマナーや頭痛がひどいときは何科に行けばよいのかまで、社会に出れば大小の疑問の連続です。その多くに答えてくれる大人が近くにいない場合、退所者はすべてを自分で抱え込むことになります。

そこでB4Sでは、巣立ち後の退所者と自立ナビゲーターと呼ばれるボランティアが2年間ペアを組み、月に1度の面談を行いながら、何かに躓いたときに手を差しのべるプログラムも用意しています。先程の大貫さんも自立ナビゲーターとして活動しているひとりです。

専門の研修を受けた後、高校生が『この人の話を聞きたい』と思ったら申請をし、マッチングして初めて成立するシステムになっています。面談といっても堅苦しいものではなく、一緒に食事をしたり、子どもたちが行きたい場所に出かけたり。目的はあくまで、『何か困りごとがあった際、相談できる大人がいる』ことを思い出してもらうことです。

 人に相談をもちかけるのは社会生活を送る上で必要なスキルですが、不慣れであれば難しいのも事実です。そこでB4Sでは、中学生向けにもセミナーを行い、団体の認知活動にも力を入れています。

 地道な働きかけを重ねたことで近年、「巣立ちプロジェクト」の参加者は右肩上がりだといいます。子どもたちの口コミも大きく、自立ナビゲーションを利用する退所者も増えています。

 私も、コロナでなくても、莫大な不安を抱えている子は多いと思います。そんなとき、第三者的意見をくれたり、相談できる大人がいるのは、ありがたいことだと思います。私が施設を退所したのが2015年、当時もこちらの様な活動に参加できていたら、もう少し生きやすかったのかなと思います。

■最後に

私自身がそうだったのでわかるのですが、つらい経験があったぶん大人に対して萎縮してしまうところがありました。子どもたちがもっと気軽に心の内を話せる若いお兄さん、お姉さん的存在の人にも、このようなボランティアに目を向けてもらえたらと思います。

未来を作っていくのは子どもたち。その子どもたちが夢に向かって職業を選択し、個々のスキルが発揮できるよう、少しずつでも私たちにできることはある。




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