見出し画像

第25話 :「なりきりシンデレラ」

つい先日ディズニーランドで、小さな「シンデレラ」に出会いました。
長蛇の列の脇にあるベンチ。5歳くらいのカワイイ女の子がちょこんと座っています。
足はきちんと閉じられ、手はひざに。
着ているものはとてもカジュアルですが、頭にはきれいなベールが飾られています。
お母さん「アレーッ、○○ちゃんシンデレラみたい!」
女の子 「そうだよ、だって私シンデレラだもん」
口元はちょっとおすましのにっこり笑顔。目はキラキラと輝いています。

私は学生時代、いくつものアルバイトをしました。
その中で特に印象深かったのは、夏休み中ずっと旅をして回った、子どもぬいぐるみ劇団でのアルバイト。
題目は『シンデレラ』でした。
残念(?)なことに、背の大きい私は王子様とのつり合いがとれず、シンデレラにはなれませんでした。
その代わり、1回の公演で1人4役という早業を、夏休み公演の間中続けました。
1日3回公演。あまりのスポットライトの暑さに冷房も形無しで、7キロもやせたうれしい(!)記憶があります。
役の上ではシンデレラではありませんが、公演終了後のサイン会では、スタッフが順番にシンデレラになってサインをします。
子どもが手渡す色紙。その色紙にこう書くのです。
『○○ちゃんへ シンデレラより』
その時によぎったやわらかな思いを、今でも覚えています。
「私、今シンデレラなんだ…」

生保の管理職時代、新人さん向けの朝礼でよく次のような質問をしました。
「もしも今、何にでもなれるとしたら何になりたい?」
新人さんの答えはいろいろです。
「私は世界で超有名な女優になる」
「私はネコがいいなぁ」
「私はもう一度赤ちゃんになって抱っこされたいなぁ」
子どもの頃は全く躊躇せず、「○○になりたい!」と口にしていました。
それが年齢を重ねるにつれ現実を直視し、その中で自然と口にすることを止めてきたように思います。

小さな「シンデレラ」に会ったあと、私はそーっと自分に問いかけてみました。
「あなたは何になりたーい?」
浮かんできたのは、ミュージカルで汗を飛ばしながらかっこよく踊っている女性でした。
その瞬間、思わず背筋を伸ばし、かっこよく軽やかなタッチで歩いていました。

大人になったって、現実を知ったって、心の奥に「なりきりシンデレラ」がいてもいいのかも。
密かに「なりきりシンデレラ」になってみようっと。
何だかやんちゃないたずらっ子の気分です。


いいなと思ったら応援しよう!