アスリートが試合で勝つことと、毎朝ベッドメイキングをすることは直結している話
仕事柄、アスリートの皆さんと会話させていただく機会が多いのですが、「アスリートが競技を通じて培っているのは技術や体力、精神力以外にあるのでは?」と感じる瞬間に多く出会います。
そして他でもない自分自身も、サッカー人生を通じて培われた1番の素養は「心技体」以外の部分にあったことを、現役を引退してから10年経った今実感しています。
一生懸命競技に打ち込んできたスポーツ少年少女は「プロになれる選手」と「プロになれない選手」の2グループに分類され、無論その多くは後者です。
「楽しむために・上手くなるために・勝利するために・チームのために・上のカテゴリーで戦うために...」等、競技に取り組むモチベーションは年代や、選手それぞれの個性・性格に応じて様々ですが、プロ選手になれなかったからと言って、スポーツをやってきた時間は無駄だとは思いません。
好きなプレーを仕事にする
一緒にサッカーをするとその人がどんな人間なのかよく分かりますが、サッカーにおいてピッチ内とピッチ外は密接につながっています。サッカーで長年培ってきたスタイルは自分のアイデンティティであり、それはピッチ内でもピッチ外でも不変です。
かく言う僕自身もプロ選手には遠く及びませんでしたが、沢山のことをサッカーに与えてもらいました。サッカーを通じて心と身体が強く豊かになったし、サッカーを通じて人と繋がり、自己表現ができるようになりました。
何より、サッカーを通じて自分が好きなことが何かを知ることができたことが1番大きかったと感じています。僕の好きなプレーは「人を活かして、自分も活きるプレー」と「意外性のあるパス=アイデアを通すこと」の2つです。
それは元々僕が身体が小さくて足も遅く、フィジカルや個人技術が同世代の中でも低い水準だったために見出さざるを得なかった生存戦略でもありました。(一方で、フィジカルや個人技術から逃げずに、その部分を伸ばせばもっと高いレベルまで到達できたかもしれないと思うことは多々あります。)
常に周りを見て、自分がどのポジションに立ってれば良いか考えながら動き、2手先・3手先でパスが回ってくる場所を見つけたり指示すること。味方と連携したパスワークで相手を崩し、ゴールを奪うこと。意外性のある縦パスやスルーパスを通すこと。そんなプレーが好きで、とっくに現役を引退した今もボールを蹴っています。
USJの再建でも有名な株式会社刀 代表の森岡毅さんは「やりがいを探す時、まずは好きを“動詞”で書き出してみてください」と話します。
まず自分自身の「個性・特徴とは何か」を自己分析してみること。そのためには、人生の中で、自分がどんな行動をしているときにうまく行き、それを「好き」と感じてきたのかを、「動詞」の形で書き出してみるといいでしょう。自分自身の個性・特徴がわかれば、自分自身の強みもわかってきます。そうすれば、仕事の適性も見極められるはずです。
私を例にすれば、子どもの頃から、「人を勝たせること」に、無上のやりがいを感じるタイプだったんですね。私自身も負けず嫌いなんですが、自分だけが勝っても、あまりうれしくない。ところが、自分の力で「チーム」を勝たせると、もう天にも昇るほどにうれしいんですよ。それで、「勝つために、チームが何をすればいいのか」という戦略を、戦う前にひたすらに考え抜いて、それをメンバーに実行してもらうことに、血道を上げていたわけです。
「人を活かして、自分も活きるプレー」と「意外性のあるパス=アイデアを通すこと」は、私生活や仕事など、サッカー以外のシーンでも僕自身が好きなプレーです。
そして、それは「思考様式」とも言い換えることができます。
冒頭の仮説に話が戻りますが、今日お伝えしたかった内容は、「アスリートが競技を通じて培うのは『心技体』だけでなく『自分ならではの思考様式』を養う」のだと思います。言い換えると、それは「知性」です。
長くプロ選手を続けている選手や高いレベルでプレーしている選手は、例に漏れず「自分ならではの思考様式」を持っています。高い目標を達成したり、コンディションを常にキープするためには「拠り所」が必要だからです。
彼らは物事に向かう時、課題を解決しようとする時、組織の一員として動く時にどのような立ち振る舞いや役割を担えば1番力を発揮できるのかを知っています。そしてその思考様式はアスリートの拠り所となり、ピッチ外のキャリアを支える強いバックボーンにもなるでしょう。
毎朝ベッドメイキングするJリーガー
10年以上Jリーグでプレーを続けているJリーガーの友人は「勝ち癖を付ける」ことを日頃から徹底しているそうです。「勝ち癖を付ける」と言うと、すごく難しそうに聞こえますが、そんなことはありません。
プロスポーツ選手にとって、勝敗は何も試合結果だけの話ではありません。
試合中のひとつひとつの局面に対戦相手との勝ち負けがあり、日々のトレーニングではチームメイトとの勝ち負けがあり、私生活では「妥協・甘え・怠惰」など自分との勝ち負けが存在します。
高卒でJリーグ入りした友人の彼は、プロの舞台で思うような活躍ができずに悩み、移籍を迫られたタイミングで「あ、全ての責任を自分で負って、全部自分で決めて生きていかなきゃいけないんだ」と気がつきます。
それからというもの、彼はどうすれば「勝ち癖」が身に着くのかを考えるようになりました。そして、試合の回数・相手と対峙する回数・自分と対峙する回数を考えた時、自分と対峙する回数が圧倒的に多いことに気がつきます。
であれば、勝ち癖を付けるためにまず日々の生活から「やりたくないなぁ、面倒だなぁ」と感じた時ほど自分自身に打ち勝つ選択がどちらかを考えて、即座に判断〜行動することを習慣付け始めたそうです。
その一例として、朝起きた時に「布団を畳んだり、ベッドを綺麗にするのは面倒くさいなぁ」と甘えてしまいそうな自分がいることを客観的に把握し、そんな自分に勝つために「朝起きてすぐにベッドメイキングする」習慣を付けようと試みました。
毎朝ベッドメイキングをすること自体は非常に小さな「勝ち」かもしれませんが、その習慣を毎朝繰り返していくとで「勝ち癖」が付いていきます。その選手は日々の生活やトレーニングから小さな「自分に勝つ」ことを繰り返すよう取り組んだことで、結果的に自信が積み重なり、自分に・相手に・結果的に試合でも勝てるようになっていったそうです。
「試合で勝つことと、毎朝ベッドメイキングをすることは直結している。」
そう語る彼は、結果を出すためにどのようなプロセスで物事に取り組めば良いのかを知っています。
そして彼に限らず、プロのスポーツ選手の皆さんがピッチ内外で局面のひとつひとつにこだわり、相手に/自分に勝ち続けようとする姿を見る度に「自分は到底プロスポーツ選手には手が届かなかったんだな」と痛感します。そんな僕でも、社会に出て何とか楽しくやっています。だからこそ、プロスポーツ選手になった人たちはもっともっと社会で輝ける(のに実力を発揮しきれていない部分がある)と感じています。
競技を通じて身に付けた「知性」はピッチ外でも活きる
僕は大学を卒業してから7年強、広告業界→スタートアップ→独立と社会人人生を歩んできましたが、その過程で出会った数多くのビジネスマン・社会人の中で、プロスポーツ選手の皆さんほど高次元な「思考様式」を身につけている人材は1%もいませんでした。「勝ち癖を付ける」はアスリートが持っている思考様式の一例ではありますが、物事に向かう時に自分ならではの「型」を持っているアスリートは、ピッチ内に限らずピッチ外でも活躍できるはずです。
また「プロとして活躍できる選手」「プロとして長年続けられる選手」「プロとして稼げる選手」など、プロ選手の中でも明暗は分かれます。つくづくプロスポーツ選手は自分の身ひとつで厳しい競走下に晒され続ける、実力至上主義の過酷な仕事だと感じます。
...と、何だかネガティブな書きっぷりになってしまいましたが、プロサッカー選手になれるのであれば、僕は迷わずプロサッカー選手になりたいです。自分がやりたいことに没頭しながらお金を稼ぎ、その上誰かに活力を届けられる仕事は世の中にそこまで多くありません。
サッカーとビジネス、全く違う世界の話に思えますが、本質的にはかなりダイレクトに繋がっています。特にチームスポーツはビジネスと共通する部分が多いです。(そもそもアスリートも、スポーツ選手という名のビジネスマンですよね。)
しかし、競技を通じて身に付けた「思考様式」「知性」がピッチ外でも活きることを自己認識できている選手は現状多くない印象です。そのような状況に、NPO法人izmは時間をかけて働きかけていきます。
最後に
最近は色々なメディアで記事作成を担当したり複数プロジェクトで具体的なアウトプットができている(且つSNSに出せないことが多い)ので、Twitterやnoteでの発信量が激減していますが、五勝出生きてます。笑
独立してから間も無く半年になりますが「やりたいことxできることx求められていること」の総面積を大きくしながら、2022年は自己発信の機会も増やしつつ、より大胆にチャレンジをしていきたいと考えています。(お世話になっている皆様、いつもありがとうございます。)
最後に告知ですが、仕事として
・スポーツ写真を撮りたい方
・スポーツ関連のインタビュー記事作成をやってみたい方
がいらっしゃいましたら、五勝出までご連絡ください!
条件や希望が合えば、是非一緒にお仕事したいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
fin.
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションに、マーケティング支援および教育・キャリア支援を行うNPO法人izm 代表理事◁Revive Inc.◁電通ライブ/テック◁東京学芸大学蹴球部 学連|著書『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』/マイナビ出版 http://urx.red/Fh0w
いつも読んでいただきありがとうござます:)