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宅建士試験合格講座 保証金制度 > 営業保証金 #2

■ 4 営業保証金の還付

 営業保証金は、宅建業者と取引をした者が、その業者に対して取得した債権の弁済を受けること(還付という)に意義があります。よって、還付を受けられるのは取引から生じた債権に限定されます

宅建業者と宅建業に関して取引をした者(宅建業者に該当する者を除く)は、その取引上の債権について、供託した営業保証金から弁済を受けることができる。
 
 弁済が受けられるのは、宅建業に関する「取引上の債権」です。したがって、宅地建物の購入者、媒介、代理を依頼した者(要は「お客」)は含まれるが、銀行の融資債権、広告業者の広告代金、使用人の給料債権などは含まれません。
 還付を請求する者は、債権額、債権発生の原因たる事実等を記載した一定の書面を提出しなければなりません。

宅建業者と宅建業に関して取引をした者が「宅建業者」である場合は、営業保証金から弁済を受けることができない。

 そして還付がなされると、当然のことながら営業保証金の額に不足が生じます。すると、後で宅建業者に債権を持つに至った人が弁済を受けられなくなり不都合であるから、還付があった場合には、宅建業者は、不足額を補っておかなければなりません。

還付によって営業保証金が不足することとなったときは、免許権者からその旨の通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければならない。
不足額を供託したときは、供託した日から2週間以内に、その旨を供託書の写しを添付して免許権者に届け出なければならない。

 供託金が還付されると、供託所から免許権者に通知され、その通知を受けた免許権者は、直ちに宅建業者に対して営業保証金に不足が生じた旨を通知することになっています。
 この不足額の供託も有価証券によって行うことができます。


■ 5 営業保証金の取戻し

 営業保証金は、以下の場合に業者が取り戻すことができます。

・供託不要
① 免許の更新なく、有効期間が満了
② 破産・解散・廃業により免許失効
③ 死亡・合併により免許失効
④ 営業保証金の供託済届を提出しないため免許取消処分を受けた
⑤ 免許の取消処分を受けた

・余剰
⑥ 一部の事務所廃止により、営業保証金の額に余剰を生じた
⑦ 主たる事務所の移転に伴い、二重に営業保証金を供託した
⑧ 保証協会の社員となった

 ①から⑤までは、これらの事由によりもはや宅建業を行えず、「宅建業に関する債権」も発生しようがないので、取り戻すことができます。これに対して、⑥~⑧は、宅建業自体は続けるが、法定の営業保証金の額に余剰を生じることになるので取り戻すことができます。

 次に取戻しの方法であるが、いきなり取り戻すことを認めると、まだ債権の回収が済んでいない債権者(還付請求権者)がいるかもしれないので、問題があります。そこで、宅建業法は次のように定めます。

取戻しをしようとする者は、還付請求権者に対して6カ月を下らない期間を定めて申し出るよう公告し、その期間内に申し出がなかった場合に取り戻すことができる。また、公告をしたときは、免許権者に遅滞なく届け出なければならない。
ただし、次の場合は公告せずに直ちに取り戻すことができる。
① 営業保証金の取戻事由が生じてから10年経過したとき
② 主たる事務所を移転し、新たに営業保証金を供託し、従前の供託所から取り戻すとき
③ 保証協会の社員となったとき

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