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宅建士試験合格講座 宅地建物取引業法総論 > 事務所

第2節 事務所

 宅建業を開業するためには、必ず事務所を設けなければなりません。事務所は、免許権者の決定、営業保証金の額、取引士の数などを定める場合の重要な基準となります。

 

■ 1 事務所とは

 宅建業法施行令は、事務所について次のように定めます。
① 本店(主たる事務所)
② 支店(従たる事務所)
③ 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業にかかる契約締結権限を有する使用人を置くもの

本店で宅建業をしていなくても、支店の一つが宅建業を行っていれば、本店も事務所として取り扱われる。本店は会社の頭脳であり、支店に対していろいろな指示をしているからである。



■ 2 事務所に備えるべきもの

 宅建業法は、事務所に備えるべきもの、事務所以外の案内所等に備えるべきものを定めます。事務所だけでいいのか、案内所等にも備えなければならないのかがポイントとなります。
 事務所については、いわゆる「5点セット」を備え付ける必要があります。順に覚えましょう。なお、いずれのものも本店にまとめて設置するのではなく、事務所ごとに設置しなければなりません

(1) 標識
 
いわゆる業者標のことをいいます。一般消費者に潜脱業者でないことを知らせるため、掲示が義務づけられています。免許権者から交付される「免許証」とは別のものであるため、免許証を掲示しても標識を掲示したことにはなりません。

(2) 報酬額の掲示
 
宅建業者は、公衆の見やすい場所に国土交通大臣が定めた報酬額を掲示しなければなりません。顧客が報酬額を正確に把握するためです。 

(3) 従業者名簿
 
事務所には、その事務所で業務に従事する従業者の名簿を備え付けなければなりません。後述する「従業者証明書」の発行台帳となります。 

【従業者名簿の記載事項】
①氏名
②従業者証明書の番号
③生年月日
④主たる業務内容
取引士であるか否かの別
⑥当該事務所の従業者となった年月日及び当該事務所の従業者でなくなったときはその年月日

 従業者の住所は記載事項ではありません。
 宅建業者は、従業者名簿を、最終の記載をした日から10年間保存しなければなりません。また、取引の関係者から請求された場合は、閲覧させなければなりません。ここにいう『従業者』には、非常勤の役員や一時的に事務を補助する者も含みます。 

(4) 帳簿
 
いわゆる取引台帳のことをいいます。取引のあったつどその内容を記載し不正や脱税などを防ぐものです。 

【帳簿の記載事項】
① 取引のあった年月日
② 取引にかかる宅地建物の所在及び面積
③ 取引態様
④ 取引当事者及びこれらの者の代理人の氏名及び住所
⑤ 取引に関与した他の業者の商号又は名称(個人業者の場合はその者の氏名)
⑥ 宅地の場合にあっては、現況地目、位置、形状その他その宅地の概況
⑦ 建物にあっては、構造上の種別、用途その他その建物の概況
⑧ 売買金額、交換物件の品目及び交換差金、または賃料
⑨ 報酬額
⑩ 取引に関する特約その他参考となる事項

※ 帳簿は各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間は保存しなければならない。
※ 従業者名簿と異なり、帳簿は一般の閲覧に供する必要はない。

(5) 成年者である専任の取引士
 
事務所は、土地や建物の取引が行われる重要な場所です。一般の顧客に対し、土地建物等の物件について詳しく説明できる者を置いておく必要があります。
 そこで宅建業法は、事務所には、従業者5人に1人以上の割合で、成年者である専任の取引士を置くことを義務づけました。
 成年者である専任の取引士とは、18歳以上の常勤の取引士のことです。ただし、未成年者であっても、個人で免許を受けて宅建業者となった場合と、法人業者の役員となった場合には、主として業務に従事する事務所等について成年者である専任の取引士とみなされます。

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