「土湯温泉バイナリー発電所」 - 震災復興から地域経済へのリーダーシップ
福島県福島市郊外の山間部、吾妻連邦の中腹に位置する温泉地、源泉温度約130度、8種類の泉質、伝統工芸品の土湯こけしの産地
以下の内容は『コミュニティと共生する地熱利用』から引用し、学習用に内容をまとめたものとなります。
土湯温泉16号源泉バイナリー発電所 概要
運転開始年月日:2015年11月
発電事業者:土湯温泉温泉エナジー株式会社
建設時の環境配慮:ー
出力:440kW
発電方式:バイナリー方式
稼働率:90%以上
土湯温泉と地域の課題について
2011年 東日本大震災と福島第一原子力発電所事故で状況が一変する
建物の倒壊や風評被害により経営圧迫、旅館16 → 11軒に減少
宿泊客 2010年まで25万 → 震災後15万
旅館の稼働率が3割を下回り、人口と産業の活力を大きく失う
地熱開発の経緯
1980年代 NEDOによる地熱資源調査 → 豊富な地熱資源を有する
当時、発電事業に関して地元の合意が得られなかった
2011年10月、地元有志らによって土湯温泉の再生復興に取り組む「土湯温泉町復興再生協議会」を結成。メンバーは町内会、観光協会、旅館組合
復興計画の基本テーマ「訪ね観る・誰もが憩う・光るまち」
5つの計画の柱
(1)温泉観光地の将来を占うモデル地域の構築
(2)少子高齢、人口減少社会への対応
(3)自然再生エネルギーを活用したエコタウンの形成
(4)産官学との連携
(5)計画を支える組織の確立「土湯温泉町地区都市再生整備計画事業(総額21.5億)」
- 廃業旅館活用、損傷インフラ・景観整備など小水力発電 - 温泉町周辺の砂防堰堤を活用
温泉バイナリー方式地熱発電 - 既存の温泉井を活用
「(株)元気アップつちゆ」設立 - 共同源泉管理、有事などに備えて、組合員から配湯料を徴収、その積立金を資本金に
温泉バイナリー方式地熱発電
井戸から湧出する高温の温泉が、発電機の中にあるペンタンという程沸騰媒体を沸騰させ、発生したペンタンの蒸気でタービンを回転させ発電する
高温の源泉と低音の冷却水が必要、土湯はその両方に恵まれていた
130度C以上で湯量も豊富な温泉水と、400m上流にある沼から年間通じて10度C前後の冷却水を確保している既存の源泉を利用し、新たな井戸の掘削がなく、温泉供給に影響がないため、地域住民の反対派なかった
復興の象徴としての発電事業
2012年1月 環境省「平成23年度再生可能エネルギー事業のための緊急委託業務」に採択される。温泉資源調査により400kWの発電が可能と分かる
経産省の「再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援対策事業」
建設費の1割を賄うJOGMECによる債務保証。金融機関から借り入れる残り9割のうち、8割をJOGMECが債務保証する制度となり、発電施設建設において5億5700万を地元金融機関より借り入れられた
2015年11月20日土湯温泉16号源泉バイナリーは竣工式を迎えた
運用開始後から、当初想定していた売電収入1億円を達成
恵まれた自然条件と豊富な地熱資源、現在も設備利用率90%以上で運用
未利用熱を活用したエビ4万尾養殖
毎分4000Lの媒体の温度を下げた冷却水(21度C)を養殖に活用
東南アジア原産のオニテナガエビを陸上養殖
養殖に最適な温度25度C、温泉水65度Cを加えて水温を維持
経済産業省の補助金「平成28年度 第一回地熱開発理解促進関連事業支援補助金」を活用
補助金対象外の人件費や、養殖技術指導料は元気アップつちゆが自己投資
養殖したエビの釣り堀を温泉街に整備