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プロジェクト推進の判断基準となる“メタな合意形成” の大切さ

こんにちは!
合意形成ラボ研究員のゴウイケイコです。

タイトルの「メタ」とは「高次の」「超越した」といった意味です。人工知能のシステム開発等を手掛ける株式会社IFの小塩篤史さんは「メタな合意形成」が大切だと指摘しますが、いまひとつよくわかりません。教えて、小塩さん!

コロナ禍で現場の動きが止まって初めて気づいたこと

ゴウイケイコ:前回「会議の決定事項がひっくり返る」という話が出ましたよね。あのあと友人から「うちもそう!」というメッセージがいくつも届きました。

小塩さん:極端な言い方かもしれませんが、日本の会議は合意形成しない会議なんです。だらだらと始まり、ぱらぱらと報告して、偉い人がコメントを言って終わりみたいな。権限を持つ人が何を感じたのかを探るための場になっていて、偉い人がOKの雰囲気だと「一応合意が取れたぞ!」となる(笑)。

ゴウイケイコ:組織の意思決定とはそういうものだと思っている人もいそうです。

小塩さん:去年の5月から8月、コロナ禍で多くのプロジェクトが止まりました。日本の会議で重視されてきた雰囲気や空気はオンラインで再現できないので、多くの企業が何も決められなかったのでしょうね。最近は少しずつオンラインに慣れてきて、アジェンダの作り方や議論の進め方に工夫が見られるようです。いままで通りの企業もあるでしょうが、本質的には会議を変革する良いチャンスだと見ています。

ゴウイケイコ:お取引先とのオンライン会議はコロナ前と比べて円滑になったと感じるので、着実に変化しているのかも。

小塩さん:伝統ある企業ほど、過去の成功体験がベースにあるので、あえてメタな合意形成をしなくても問題ないと思っていそう……。

ゴウイケイコ:小塩さん‼ いまの「メタな合意形成」って何ですか?

小塩さん:おっと、今日も前のめりですね(笑)。

「メタな合意形成」というのは、「合意形成がどうあるべきかに関する合意」です。プロジェクトを推進する上で、プロジェクトのビジョンはもちろん必要ですが、それ以前に、自分たちはどういう会社で、何を目指しているのか、このプロジェクトに取り組むことで、どのようなインパクトを社会にもたらそうとしているのかといった合意形成も重要だと思うんです。

ゴウイケイコ:なるほど、大局的な観点で合意されていなければ、プロジェクトの方向性にもブレが出そうです。

小塩さん:事業環境が大きく変化するなかで新しいことにチャレンジする際には特にメタな合意形成が重要。たとえば、最近はSDGs関連の案件が増えていますよね。SDGsは良い取り組みですし、それを否定するわけではありませんが、安易に外部の評価軸に頼るのはいかがなものかなと。自分たちがどんな社会的価値を創造しようとしているのか、自分たちの評価軸をもってプロジェクトに取り組むべきだと思います。

前提となる知識や情報を整えるインプットセミナー

ゴウイケイコ:SDGsは企業だけでなく、自治体や地域でも取り組んでいます。小塩さんも地域情報化アドバイザーとして活動しておられますが、企業の合意形成と、地域コミュニティの合意形成では何か違いがありますか。

小塩さん:日本はこれから人口がどんどん減少し、新しいチャレンジをしない地域は生き残れませんから、合意形成はますます重要になるでしょう。ただ、地域の規模によって合意形成の在り方は違うと思います。

比較的合意形成しやすいのは人口1万人未満の小規模自治体で、ここは将来への危機感も強く、新しいことに挑戦しやすいです。一方、政令指定都市など大規模な自治体は規模感を生かして、合意形成や新しいチャレンジを促す仕組みを作るところからのアプローチが可能です。一番大変そうなのは人口10万人くらいの中規模自治体。でも、その規模だからこそNPOなどのコミュニティ活動が生きてくるはず。トップダウンでは動かしづらいですが、「街のあるべき姿」などある種のメタな合意形成のもとに人が集まって合意形成を重ねていくイメージです。

ゴウイケイコ:市民活動に参加して感じるのは情報格差です。課題感は同じでも、話していくうちにかみ合わなくなることがあります。

小塩さん:重要な観点ですね。合意形成と言っても個々人の意思決定の集合なので、特定の情報のもとには賛成といっていた人がインプット次第で合意形成の方向性が変わる可能性は多分にあります

情報工学の視点で言えば、情報がフルオープンな状態での合意形成が理想です。前提となる知識や情報はもちろんのこと、関係者の頭の中や選択の仕方のことも全部見えるようにします。全員の幸福の最大化に繋がりそうな合意形成が一番達成しやすい環境です。結論だけでなく、考えるプロセスもわかりますから。でも、現実問題としてそんなことは無理なので、出版や講演活動などで前提となる情報を整えるわけです。そうすることで、比較的安定した合意形成になります。これは企業における合意形成でも有効です。

合意形成は一度では終わらない!

ゴウイケイコ:関係者の頭の中まで見える化って、小塩さん、面白過ぎます!

小塩さん:私が? いたって普通ですよ(笑)。

実際の企業への支援だと、インプットセミナーをやったり、視覚会議を使ったりしながら、より良い合意形成を目指すわけですが、唯一絶対の合意はありません。むしろ、プロジェクトを進めながら何度でも合意形成をやるべきだし、合意形成が有機的なネットワークを構築するのが一つの理想形だと思います。

ゴウイケイコ:有機的なネットワークとはどういう意味ですか?

小塩さん:プロジェクト開発をモデルにした、この図を使って説明しましょう。

小塩さん後編

小塩さん:先ほどメタな合意形成という話をしましたね。これがまずはプロジェクト全体を貫く重要な評価軸になるわけです。図には明示していませんが、全体に影響するものだと考えてください。

個別のプロセスにおいて、合意形成が必要な場面はたびたび出てきます。たとえば、真ん中の「プロジェクトデザイン/ユーザー中心」のところでは、どんなユーザーを想定するか、優先順位付けはどうするかなど、関係者間で目線を揃えておきたいですよね。これら合意形成は単独ではなくメタな合意形成とリンクしている必要がありますし、かつ前後の工程とも整合性が取れていなければなりません。

現実問題として、プロジェクトの最初に描いたビジョンは往々にして忘れられていきますから、折に触れてビジョンを振り返るだけでも結果は違ってくるはずです。合意形成はゴールではありません。自分たちで合意し、決めた評価軸は何度でも振り返るべきだし、必要なら何度でも合意形成を重ねればいい。そうやって合意形成がつながってネットワークを成していくのが理想だと思います。

ゴウイケイコ:図の下にある「政策・規制」って何ですか?

小塩さん:プロジェクトの進行は、外側の環境にも影響を受けますよね。代表的なのは「政策・規制」で、プロジェクトのビジョンを達成するために、新しい法律や規制緩和が必要になることがあります。私は医療分野で仕事をすることが多いのですが、規制との兼ね合いが重要で、法的に問題はないか合意形成が必要になります。

さらに、ここは理想というより妄想に近いですが(笑)。

いまは実務をする人と政策や規制を考える人が遠いですが、一緒に合意形成の箱みたいなものがあって、実務者と行政担当者、さらに市民がそこで合意を形成し、規制改革につながっていくような新しい体制も面白いと思っています。スマートシティなどの文脈ではぜひそういうことにも挑戦してみたいと思っています。

ゴウイケイコ:最後に夢のあるお話を伺えてよかったです。ありがとうございました!

今日のポイントを振り返ります。
(1)空気を読む会議では合意形成ができない。テレワークやオンライン化を契機に会議の変革を。
(2)合意形成の前提となるインプットセミナーをうまく活用しよう。
(3)合意形成は一度では終わらない。いつでも、どこでも、何度でも!

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