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DX推進のカギは「合意形成」って本当ですか?―前編―

こんにちは!
HackCamp【合意形成ラボ】研究員のゴウイケイコです(私たちが合意形成を研究する理由はこちらから)。

積極的なテレワークが推奨されて早一年。周囲からは「ウェブ会議に慣れた」「ハンコのための出社がなくなった」といった声も聞こえてきて、思いがけずコロナ禍でデジタル化が進んでいますね――とつぶやいたら、先輩の矢吹さんからDM。

「デジタル化ってデジタイゼーション? デジタライゼーション? それともDXまで含めて考えている? そのあたりにズレがあると議論がかみ合わないし、合意形成もうまくいかないんだよね」

なるほど。確かにDXの話って微妙にかみ合わないことがあるような……。

というわけで、今回は10年以上前から組織における合意形成の仕組みの研究と実践を続けてきた矢吹さんに「DXと合意形成」について教わります!

デジタル化の意味も実はいろいろ

矢吹さんと話す前に、研究員たるもの、まずはリサーチです。

思い返せば、これまでデジタル化という言葉を気軽に使っていました。文書をデータで管理することも、ハンコを電子化することも、職務上のやり取りをSlackやZoomで完結させることも、すべてデジタル化。なんて便利な言葉なんだ、ありがとう、「デジタル化」。

今回のお題である「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は数年前からのホットイシューで、当社もお問い合わせを多数いただいています。これを機に改めて調べてみると、経済産業省では定義を打ち出していました。

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デジタイゼーションの中にデジタライゼーションがあり、
その中にDXは位置付けられる。上下関係ではないことがポイント。
出典:「デジタルトランスフォーメーション レポート2中間とりまとめ」経済産業省

この定義を見ると、最も広い概念がデジタイゼーション。何でもかんでもデジタル化と言っていたのはあながち間違いではなかったんですね。ホッとしました。

その一方で、デジタイゼーションの中にデジタライゼーションがあり、その中にDXがあるというイメージは持っていなかったので、この図がとても新鮮に映りました。考えてみると、書類のデジタル化は業務のデジタル化の必要条件ですから、デジタイゼーションがデジタライゼーションを包み込むような構造になるのは当然ですよね。

そして、この図はデジタル化を推進すれば、DXになるというわけではない、ということも示唆しています。DXを上位概念のように描くと、デジタル化を頑張った先にDXがあるように思えますが、そうではありません。経産省の資料にも「必ずしも下から順に実施を検討するものではない」という補足があります。

ピラミッド2

私が思っていたDXは左側でした。
こうして並べてみると違いは一目瞭然。
やっぱり可視化するってすばらしい!

それってまるですれ違いコントですw

ゴウイケイコ:ここまで調べてみて、ふと思いました。何でもかんでもデジタル化と言うのは間違いではないですが、イメージする内容が違うと、話がすれ違うだろうなあと。

すれ違い

こんな風に、同じ電車旅でも認識を合わせないと見事にすれ違います。DXでもきっと似たようなことが起こっていて……。

すれ違い2

これってまさに、矢吹さんが言っていた「デジタル化ってデジタイゼーション? デジタライゼーション? それともDXまで含めて考えている? そのあたりにズレがあると議論がかみ合わないし、合意形成もうまくいかないんだよね」ではないでしょうか。

矢吹さん:そう、その通り。デジタイゼーションとデジタライゼーションとDX、人によって抱くイメージは違うかもしれない。だから、議論の際には何について話すのかを定義する必要がある。DXにしても、推進する目的が業務改革や業務改善なのか、新しい価値創出なのか、目指す方向性によって話の中身も変わってくるはずなんだよね。

ゴウイケイコ:私自身、DXの概要は知っているつもりでしたが、今回改めて定義を調べ直して新しい発見がありました。企業のみなさんはどのようにDXに取り組んでおられるのでしょうか。

矢吹さん:DXをやらないといけないと分かっているし、トップからも指示が出ているけれど、具体策が分からず、手探りで進めているのが現状じゃないかな。だからこそ、まずは認識合わせをお勧めしたい。DXで何をするのか、ゴールイメージも大切だけど、最初にボタンを掛け違えたら議論が進まないから。まずは何について話しをするのか、関係者間で目線を揃えましょうと。こういう認識合わせはDXに限らず合意形成の基本だと思う。

いま企業が抱えている課題の本質

ゴウイケイコ:多くの企業は基幹システムの導入やデジタルインフラの構築など、IT改革の経験がありますよね。その経験が生かせるのではないかと思うのですが、DXは何か違うのでしょうか。

矢吹さん:いままでは業務部門からIT部門に依頼すればよかったんだけど、DXは一緒に考えなければならないんだよね。どこにどんなデータがあるのか業務を知っているのは業務部門だけど、データの収集・蓄積・加工の知識を持っているのはIT部門だし、そこから新たな価値創出となれば経営層も含めた全社的な協業が必要。でも、さっき言ったように「認識合わせ」ができていなかったり、ゴールイメージが共有できていなかったりするから、なかなか進まない。

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必要なアクションを俯瞰すると
部門の垣根を超えて推進しなければならないことがよくわかります 
出典:「デジタルトランスフォーメーション レポート2中間とりまとめ」経済産業省

ゴウイケイコ:ここまでDXという言葉の解釈の多様性と、多様性ゆえに生まれる認識のずれ、その解消方法などについてご紹介してきました。次回はこの続きとして、どうしたらDXをうまく進めていけるのかを考えていきます。

注)4月15日、図に一部誤りがあったため修正しました。

>>> <DX推進のカギは「合意形成」って本当ですか?―後編―> へつづく。

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