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デフ・レパードはすごい!〜英国が生んだダイアモンド・ヒーローズ〜:オジ&デス対談 第9弾 Vol.1

 この記事は、カエルのぬいぐるみ「オジサン」と私の夫「デス・バレリーナ」が対談形式で映画や音楽について語る「オジ&デス対談」シリーズの第9弾です。
 前回(第8弾)の対談では、米国のハードロックバンドBon Joviの魅力を中心に据えつつ、ハードロックやヘヴィーメタルに対する偏見や雑な論評への反論をお届けしましたが、約1年ぶりとなる今回の対談では、英国のハードロックバンドであるDef Leppardの意外と見落とされている気がする独自性についてなどを語っていきます。Vol.1では、Kアリーナ横浜で2023年11月に行われたモトリー・クルーとのジョイントライブの話を中心にしています。
 ファンの方には「そうそう!」と頷きながら読みつつ、「いや、待て!ここが語り足りてないぞ!」と指摘していただければ嬉しいですし、ファンではない方には、この記事がデフ・レパードやハードロックと出会うきっかけになってくれたら…と思います。少々長めの記事ですが、よろしくお付き合いくださいませ。
 
 なお、バンド名やアルバムタイトルがアルファベットのものとカタカナのものが混ざっているのは、ぱっと見た時に読みやすい方を優先させた結果です。


デフ・レパードとの出会い

オジサン:じゃあ、今回はDef Leppard(デフ・レパード)について話すということで、よろしくお願いします。

デス:よろしくお願いします。

オジサン:ちょうど1年くらい前に「Bon Joviはすごい」っていう対談をやって、一部で大変ご好評頂いたわけなんですけども、それからちょうど1年くらいして、今年(2024年)の4月26日からBon Jovi(ボン・ジョヴィ)のデビュー40周年を記念したドキュメンタリーシリーズの配信が始まるということで…えっと、どこで配信されるんでしたっけ?

※対談の収録は4月の始めで、収録時点ではまだ配信が始まっていなかったため、今回の対談ではドキュメンタリーの内容には触れていません。

デス:アメリカのHuluで制作されて、日本ではDisney+で配信です。

オジサン:まぁ、そういうこともあって、ボクたち「持ってる」な、なんて思っちゃいますね(笑)。
 で、もともとは、音楽は語るのが大変だから…、と言ってたんですけど、前回やってみたらけっこう楽しかったこともあって、じゃあ、今度は80年代のイギリスのハードロックの大御所バンドでもあるデフ・レパードの話をしようということになりました。

デス:デフ・レパードはBon Joviのレーベルメイトでもあるし、ともに80年代のハードロック・ヘヴィーメタル(以下、HR/HMと略す)全盛期を駆け抜けた盟友バンドとも言えるしね。

オジサン:で、「なんでデフ・レパードなのか」ですけど、やっぱり去年ライブに行ったから、ですかねぇ。

デス:そうです!

オジサン:去年(2023年)の11月にデフ・レパードとMötley Crüe(モトリー・クルー)のジョイントツアーの来日公演があって、それに行ったことで、改めてデフ・レパードはすごいなぁという話になったんですよね。それで、「次はデフ・レパードのことで対談しようか」って言ってるうちに半年くらい経ってしまって…。

デス:そうそう。

オジサン:じゃあ、まず、とりあえずデフ・レパードのすごいところってのを端的に言うと、どうですか?

デス:そこはオジサンから語ってくれてもいいよ。

オジサン:え?そうなんですか?なんでですか?

デス:いや、だってさ、モトリー・クルーとデフ・レパードのジョイントってなったときに、当初はどっちかというとオレがモトリー・クルー担当で、れっどさん(珈音のこと)がデフ・レパード担当みたいな感じだったでしょう?オジサンは、もともとはれっどさん家のコだしさ。

オジサン:それはそうですけど…。

デス:でも、まぁ、オレから語ってもいいけど。

オジサン:あのー、ほら、れっどさんはBon Joviの次にハマったのが、多分、デフ・レパードみたいな…

デス:順番的にね。

オジサン:そうです、そうです。Bon Joviのベスト盤『Cross Road(クロスロード)』とデフ・レパードのベスト盤『Vault(ヴォールト): Def Leppard Greatest Hits (1980–1995)』が出たのが、だいたい同じ時期じゃないですか。

デス:うん、そうだね。1995年頃だよね(Bon Joviの『クロスロード』は1994年)。

オジサン:そのベスト盤がきっかけでHR/HM好きになったとかで、どっちかと言えばBon Joviが先だったけど、中学高校くらいのときに一番聴いてて思い入れがあるバンドの一つがデフ・レパードで、それに対してモトリー・クルーは当時もその後もなんとなくあんまり聴いてなかったらしいんで。
 逆にデスの人はモトリー・クルーの方が好きだったということで、なんとなくライブ前はそういう担当の割り振りになってたって感じですよね。
 ちなみにデスのひとも、デフ・レパード入門は『Vault』ですか?

デス:『Vault』が最初だね。さっきも言った通り、ちょうど、あの頃って、Van Halen(ヴァン・ヘイレン)とかAerosmith(エアロスミス)とか、ハードロック界の大御所がベスト盤をよく出してた時期なんだよね。

オジサン:そうですよね。ベスト盤ラッシュですよね。

デス:しかも、どのベスト盤もけっこう売れててさ。1990年代と言えば、あの「グランジ・オルタナ全盛期」なわけだけど、「ほれ、HR/HM系もバリバリ売れてましたよ」っていうね!

オジサン:(根に持ってますね) 
※詳しくは、オジ&デス対談「Bon Joviはすごい!〜ハードロック・ヘヴィーメタル雑語りへの反論〜」を参照してくださいね!

デス:で、オレもBon Joviの次くらいにデフ・レパードの『Vault』を…学校サボって聴いたりしてました。

オジサン:(笑)。すぐ学校サボってますからねぇ、デスのひとは〜。

デス:発売当時の中3の頃とかにね(笑)。なので『Vault』を聴くと今でも中学の思い出が蘇ります。

オジサン:まぁ、れっどさんもライブのチケット取りに行って学校に遅刻したりしてたみたいですけどね。


1995年のベスト盤『Vault』と関連するシングルとLD

ライブにおけるデフ・レパードの強み

デス:で、デフ・レパードのスゴさなんだけど、まぁまず去年のライブに関して言うと、想像以上にパフォーマンスの完成度が高かったよね。
 モトリー・クルーもデフ・レパードもどっちもメンバーによっては還暦を過ぎてたりするわけだから…

オジサン:そうですねー。大ベテランですよね。

デス:あと、あんなド派手な赤いジャケットが似合うジョー・エリオットもすごい。

オジサン:(笑)。完全グレイヘアになった髪にも似合ってましたよね。

デス:でさ、HR/HMってのは、ロックの中でも体力勝負っていうか、演奏するにしても、歌うにしても、わりと体力も必要とされるジャンルじゃん?だから、実際に見るまでは、メンバーの年齢とかを常識的に考えると、ちょっと厳しいっていうか、大変だったりもするかなーって思ってた。とはいえ、まあそれを差し引いても充分に楽しめるだろうねって感じで行ったんだけど、いやいやデフ・レパードのライブは年齢とかほとんど関係なしにものすごく完成度が高かった。もちろんモトリー・クルーもとても良かった。

オジサン:そうですね。
 一応、今回のジョイントライブについて簡単に説明しておくと、公演が2日あって、両バンドとも持ち時間は90分。初日はデフ・レパードが先でモトリー・クルーが締め、2日目は順番がその逆だったんですよね。で、ボクたちは2日目の、デフ・レパードが締めの方の公演に行ったわけです。

デス:うん。さっきも言ったけど、もともとはオレの方がモトリー・クルーをよく聴いてて、逆にデフ・レパードはれっどさんの方が好きって感じで。それで、れっどさん的に「先にデフ・レパードだと私はそこで気持ちが燃え尽きちゃって、後のモトリー・クルーはあんまり盛り上がれないんじゃないかなぁ」って言うんで、れっどさんの意向を尊重して2日目に(笑)。
 で、二つのバンドを続けて観たことで、こう言っては何だけど、デフ・レパードの格の違いみたいなものを痛感させられた、っていうか…。どっちかというとモトリーびいきだったオレが見てもね。

オジサン:そうですね。
 あの、一応言っておきたいんですけど、別にモトリー・クルーが悪いっていう話では全くないんですよ。

デス:そう、モトリー・クルーもすごく良かったんだよ。ここは強調しておきたい。ただモトリー・クルーも凄いけど、デフ・レパードはさらに凄すぎた。モトリー・クルーという比較対象が無かったとしてもね。

オジサン:モトリー・クルーはメンバーが入れ替わった時期もあったし、バンドとしての活動を休止していた期間もあるけれど、デフ・レパードはそうじゃないことの強みってのがよくわかったというか。
 デフ・レパードも、ドラマーのリック・アレンが1984年に交通事故で片腕を失ったり、91年にはギタリストのスティーブ・クラークが亡くなってしまったり、不幸なことにも見舞われているわけですけど、ほとんど立ち止まらずにずーっとコンスタントに活動しているんですよね。ずっとライブもやってきているし。その積み重ねの差が出たのかな、っていう感じはありましたよね。

デス:モトリー・クルーは、かつては、一旦トラブルが起きると、バンド全体がそれにちょっと振り回されがちだったバンドなんだよね。リーダーのニッキー・シックス以外は出たり戻ったりが多かったりとか。それもモトリー・クルーらしさとも言えなくもないけど。
 逆にデフ・レパードの場合は、問題が起きてもその都度その都度対処してうまく建て直して活動を続けてきたって感じだから、そこら辺、デフ・レパードの方がプロのバンドとしての足腰がしっかりしているんじゃないかな。

オジサン:そうですね。メンバー仲もずっと良いですし。

デス:それが演奏とかにも反映されているっていうか。

オジサン:Bon Joviと同じでライフスタイルも健康的ですよね。
 まぁ、あとは、デフ・レパードはメンバー全員が「歌える」っていう強みがありますよね。ライブでも、スタジオアルバムのときと同じようにコーラスなんかも再現できますからね。

デス:そうだね。

オジサン:モトリー・クルーはアルバムでは重ね録りしている部分は、ライブだと「観客が頑張ってサポートしよう!」みたいな感じになりますよね。

デス:そうだよね。コーラスの厚みとかね。

オジサン:でも、そこは観客が一緒に歌えば、それが楽しさにもなりますし、曲によってはダンサー兼シンガーの女性二人がバックコーラスをやるので全然マイナスにはならないと思いますけど。ただ、デフ・レパードの場合はそこもメンバーだけで苦労しないでアルバム通りに演奏ができるんだなって改めて思いました。

デス:うん。あのライブを観に行った音楽ライターのひととかのレポートを読んでも、だいたいの人が「デフ・レパードの方がすごかった」っていうようなことを書いてるんだよね。モトリー・クルーも良かったけど、やっぱり粗いところもあって、デフ・レパードの完璧さってものを痛感させられた、みたいなことを言ってるライターの人とかがけっこう多かった。

オジサン:そうですか。SNSの感想を見てると「モトリー・クルーで燃え尽きたから(休憩後の)デフ・レパードどうでもいいや」みたいなテンションの人もまあまあいて、「そんな勿体ないことをっ!!」って…

デス:それは、もともとモトリー・クルー推しでデフ・レパードにはあんまり興味なかった人なんじゃない?

オジサン:まぁ、そうなんでしょうけど…。
 あ、ボクがざっと見た感じだと、「デフ・レパード全然知らなかったけど、良かった」ってひとももちろん沢山いましたよ。

ライブ開場前で張り切るヴェノちゃん

モトリー・クルー:かわいさと意外な真面目さ

オジサン:モトリー・クルーの方は、ニッキー・シックスがその場で指名したファンをステージに上げて記念撮影したり、謎の「トミー・リーおしゃべりタイム」があったりとか、ちょっと「キャラ推し」なところがありますよね。

デス:トミーが満面の笑みで「(日本語の)ヤバーイ!」を連呼したりしてかわいかったよね。

オジサン:はい。愛されキャラ感ありますよね。
 あと、今回はヴィンス・ニールが減量もして、声の調子がすごくいいってことも言われてましたよね。
 「昔のライブでは観客に歌わせたりして適当にサボってることも多かったけど、今回はちゃんと自分で歌っていた」みたいなこともBURRN!のライブレポートで書かれていたんですけど、それを読んでから、改めて昔のライブ音源(1999年のライブ盤『Live:Entertainment or Death』)を聴き直してみたら、あのひと(ヴィンス)、歌詞を間違ってんですよ!

デス:あ、そうなんだ(笑)。

オジサン:〈Kickstart My Heart(キックスタート・マイ・ハート)〉のサビの歌詞が、繰り返しのところで変わるのに全部同じになっていたりして…。

デス:へぇそうなんだね。英語ヒアリング能力が低いオレは気づかなかった(笑)。

オジサン:(笑)。だから、今回はすごく真面目にやってたんだなーって感じがしました。
 なんていうか、“年をとって真面目になった元不良“みたいな…、って、まるでデスのひとじゃないですか!

デス:(笑)。まぁ、モトリー・クルーはデフ・レパードのようにちゃんとプロフェッショナルに徹しているバンドじゃなさそうに見えるし、実際そういう側面はあるんだけども、でも、あれだけもともと破天荒な不良集団として名を馳せたグループにしては、けっこう努力もしてんだよね。
 ああいうバンドって「真面目に努力なんて下らねえ!ロックなんてその場の思いつきで適当に鳴らせばいいんだよ」とか言いそうな空気出してるけど、実際にはモトリー・クルーはそういう努力嫌いのバンドではないんだよね。それは、アルバムを出す度に着実に成長してたことからもわかるし、グランジ・オルタナっぽく変化した時代も、思いつきでやりました、っていう程度ではなくて、ちゃんと作ってる。

オジサン:あ、今思い出したんですけど、前の対談のときに、グランジっぽいアルバムの時のヴォーカルがヴィンス・ニールじゃなかったのも良かったんじゃないか、みたいな話をしたじゃないですか。

デス:うん。ヴォーカルがジョン・コラビだった1994年リリースの『Mötley Crüe(モトリー・クルー)』のことね。

オジサン:だけど、よく考えてみると、ヴィンス・ニール時代にもそこそこダークな曲もあって、それが別にミスマッチでもなかったんで、あのアルバムはジョン・コラビじゃなくてもイケたんじゃないかな、って気がしますよね。

デス:うん、そうだね。ヴィンスが歌うバージョンも改めて想像すると案外しっくりくる。

オジサン:そうなんですよ。
 れっどさんとボクは、せっかくライブに行くんだしってことで、モトリー・クルー強化月間を作って、時間のある時はモトリー・クルーばっかりを聴いて、さらにカラオケで3時間くらいモトリー・クルーだけ歌ってみたりとかやったわけなんですけど、それでわかったのは、意外に曲の構成が単純じゃないんだなーってことです。

デス:そうそうそう、そうなんだよね!

オジサン:なんか同じフレーズの繰り返しが多いイメージだったんですけど、意外と少なかったというか。Aメロ、Bメロ、サビ〜の繰り返しではなくて、曲調が変わったりとかもするし。意外と凝った作りの曲が多いことがわかりました。それでいてキャッチーで、歌メロもいいし、ギターは一本しかないのにジャキジャキ喧しくてHR/HMらしいし、カッコ良くて、ああスゴいバンドなんだなって思いましたねぇ。

デス:そうなんだよ。
 この前のBon Joviの対談でも話したけど、80年代のグラムメタルって言われたバンドたちの中でも、今でも活動してて若い人たちにも名前が知られているようなバンドってのは、単に出てきたタイミングが良かったとかルックスが良かったとか売り方が上手かったとかだけじゃなくて、音楽的に同ジャンルの他の人たちよりも一つ二つ頭抜けてるみたいなところがあるんだよね。
 デフ・レパードのヴォーカルのジョー・エリオットは「NWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)と呼ばれたバンドの中で、今でも残ってるのは俺たちとIRON MAIDEN(アイアン・メイデン)だけだ」と言ってたけど、これもデフ・レパードとメイデンが傑出してたから。

オジサン:そうですよね。

デス:そういう音楽的に肝心なところをね、HR/HMを馬鹿にしてる連中ってのは、全然分かろうとしない。分かるほど聴かないから。そして彼らはピンからキリまで想像だけで十把一絡げに論じている。

オジサン:キャッチーなところが商業主義的でダメとか思ってんのかもしれないですけど…。でも、グランジ・オルタナでヒットした曲だってみんなキャッチーじゃないですかぁ。

デス:そうそうそうそう。60~70年代にヒットしたロックソングもそうだし。

オジサン:みんなカラオケで歌ってるでしょー?みたいな感じですよね。

デス:そうなんだよ。

オジサン:まぁ、まあいいです。そういう文句は一旦脇に置きましょう(笑)。


=Vol.2に続く=


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