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【ネタバレあり】『キャプテン・マーベル』:オジ&デス対談第3弾 Vol.5

《母性信仰と恋愛至上主義からの脱却》

 Vol.4まででも語ってもらったように、女性キャラクターは男性キャラクターに比べてパターン化されていたり、より完璧を求められたりする傾向がある。分かりやすく言えば「母性」を発揮するキャラかファム・ファタルのどちらかとして描かれがち。また、そうしたことに抗うようなキャラクターであってもヘテロ恋愛描写が付きものだった。そのどちらからも自由になったキャプテン・マーベルが(文字通り)宙を駆ける姿を観るのは本当に楽しく幸福な時間である。

Cheers to you all! Higher, Further, Faster baby!

ワンダーウーマンとキャプテン・マーベル

デス マーベルは『キャプテン・マーベル』一本で色んな意味でDCを完全に引き離した気がする。『アクアマン』とか『シャザム!』でやっと数年前の『アベンジャーズ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(以下GotG)あたりに追いついた感じだもんね(※裏を返せば、『アクアマン』『シャザム!』の二作で一気に距離を縮めた関係者の創作力も相当なものである)。

オジサン あの、しつこくワンダーウーマンを引き合いに出しちゃってほんと申し訳ないんですけど、比べると分かりやすいんですよね。多くのひとが言及していると思うんですけど、衣装を比べてもワンダーウーマンは露出が多いけれど、キャプテン・マーベルはほぼゼロなんですよね。好みの問題もあると思いますけれど、現実的に考えて、ワンダーウーマンの衣装は闘うのには向かないですよね。あんなに素肌出してるのは。山登りだって長袖が基本ですからね。

デス まぁ、そうは言ってもあの人は神の子だからね。トゲとか刺さってもなんともないんだよ、多分(笑)

オジサン その設定自体が「都合が良いな」みたいな気がしちゃうんですよねぇ…。

デス それよりも、前にも言ったけれど、やたらと戦いたがる割に「美しい慈愛に満ちた女神」みたいな役割を押し付けられてるのがどうかと思う。

オジサン 別にそういう「母性愛」みたいなの出さない神様いますからねぇ、戦争の女神とか。

デス マーベルのソーだって神様だけど、そこらへんの兄ちゃんみたいなノリのとこあるし、だからこそ愛されてるわけだよね。

オジサン その辺がDCとマーベルの違いなのかもしれませんね。マーベルの方が全体的に親しみやすいキャラになることが多くて、DCの方が近寄り難いキャラが多い気がします。バットマンも、近寄りやすいキャラじゃないですからね。

デス そうだね。

オジサン なんか、精神的引き篭り野郎みたいなのが多くないですか、DCは?

デス まぁ、ワンダーウーマンもね、いろんな女性キャラがいて、そのバリエーションの中の一つ、って考えればそんなに悪くないと思うんだけど、単独映画であれだけヒットして「女性ヒーロー代表」みたいになっちゃってるから、となると、ああいう母性があって衣装がセクシーで…みたいなことになるとノれないってひともいるよね。

オジサン それでも、ガル・ガドットがキャスティングされたときに、「スタイルがセクシーじゃないからワンダーウーマンぽくない」とか言われてたらしいですよ。

デス そうなの?

オジサン なんか原作コミックではもっと胸とお尻が大きいから…って。

デス 要はマリリン・モンロー的なセクシーさが足りないってこと?(呆)

オジサン そういうことらしいです。ほんと、なにからなにまで…。

デス まぁ、なんだかんだ言っちゃったけど、『ワンダーウーマン』は映画としてはやっぱ画期的だったんだよね。

オジサン 曲もカッコいいですよね。

デス うん、カッコいい!で、あれもスタッフとか大部分が女性だから、そういう映画が作られただけでも、それ自体に意味があったしね。

オジサン メイキング見てるとすごいエンパワメントされるんですよね、『ワンダーウーマン』。それなのに、できた作品は「なぜこうなった?」みたいなところがあって…。

デス 戦闘シーンとかはカッコいいんだけどね…。

オジサン まぁ、いろいろ言っちゃいましたけど、『ワンダーウーマン』も続編が撮影中ですよね?次はもうちょっと頑張って欲しい部分がありますけど。

デス コミックの方のワンダーウーマンはね、別に変な母性みたいなのないんだけど…うん。なんで映画になった途端、「しょうがないわね、男の子たちは」って感じの…みんなのお姉さん目線みたいなのがさ…。

オジサン ワンダーウーマンは神だし長生きだから、普通の人間の男なんかみんなガキ臭いのかもしれないですけど、でも、いい歳したおっさんですからね、充分に。

デス ま、やっぱね、その「男の子」に、よりにもよってベン・アフレックのバットマンが含まれているっていうのが余計にカンに障るんだよ。

オジサン そうですね、エズラ・ミラーくん達だけなら「しょうがないわね」でも許される感じがあるんですけど、ベンアフはねぇ…

デス 演技中とはいえ、こいつはもうクソオス扱いでしょ、って言いたいよ。クソオス以外の言葉で表現してはならん!みたいなさ。それこそ、アマゾネスの定めである!と。男と呼ぶにももう勿体ない!クソオスで充分。ましてや、「男の子」?「しょうがないわね」だと?みたいな…。だって、ベンアフのバットマンって、ストーリー的にもクソだし、中のひともクソなわけじゃん。ワンダーウーマンが真っ先に叩き斬らないといけない相手だよね。真実の投げ輪で縛り上げてさ、「お前、なんで『バットマン vs スーパーマン』んときにあんな意味不明なことやってたんだ?」「お前の足りない脳みそで何考えてたんだよ?」みたいに吐かせろよ、って思う。ま、ベンアフは退場するからね。

オジサン これでジャスティス・リーグとDCの川の流れもよくなるんじゃないですかね(笑)

愛は世界を救うのか?

オジサン あ、あと、『ワンダーウーマン』は最後に「やっぱり、愛なの、愛が大事なの」みたいになったじゃないですか。『キャプテン・マーベル』はああいうなんかよくわかんない一般論に落とし込んだりしないで終わったのも良かったですよね。

デス そうそうそう。まぁ、恋愛の要素が一切出てこないからね。

オジサン ワンダーウーマン個人が個人的な恋愛感情によって覚醒したのは、まぁ、百歩譲っていいんですよ。でも、愛こそが世界を救うって話されちゃうと、ちょっとどっ白けちゃうっていうか、鼻白むっていうか…ですよね。

デス そう、あなたはそうかもしれないけど、みんながそうだと思わないでって話で。特に神キャラがああいうことを言うと、ご神託になってしまう。

オジサン ですよね。だって、むしろ勘違いした愛ゆえに起こる戦争みたいなものもありますよ、って…思うし…。だから、戦争については、キャロルが「自分は正義のためだと思ってたけど、罪のないひとを攻撃してしまっていた」って反省したときにタロスが「戦争とはそういうものだ」って言うじゃないですか。それだけにとどめて、「○○こそが平和への道」みたいな台詞を言わなかったところがよかったですよね。なんであんなこと言っちゃったのかな、ワンダーウーマンは?って今思ってるんですけど。

デス なんかキメ台詞が必要だと思って出てきたのがあれだったんだろうね。

オジサン いま、ふと思ったのは、「私は愛によって成長した」とか「あの島を出て、他の人間たちと関わって、こういうことを学んで成長した」とか個人の体験として語っておけば、それはそれで結構感動的になったんじゃないですかね。普遍的な話みたいなかんじで語られるから、ボク、ドン引きしちゃったんだと今気づきました。

デス あとね、どうしても目立った女性ヒーローっていうのは、男性とセットにされがちなんだよね。もともと男性ヒーローの映画だからっていうのもあるけど、キャット・ウーマンならバットマン、メラにはアクアマンがいる。それ以外でも、ブラック・ウィドウはハルク…てかブルース・バナに好意を寄せていたし、スカーレット・ウィッチはヴィジョンでしょ。X-MENでもそういう恋愛関係は描かれるし…。女性キャラっていうのは、出す以上は…

オジサン なんとかして男とくっつけようとするんですよね。

デス そうそうそう。ワンダーウーマンもその流れを断ち切れてなかった。でも、『キャプテン・マーベル』にはそういう恋の話が一切出てこないし、キャロルの性的指向とかわかんないわけよね。っていうか、そんなもの必要ないから、過去の恋愛も描かれないし、キャロルがスーパーヒーローとして成長して覚醒するのに、恋愛的なものが全く介在しない。これは、ヘテロ恋愛至上主義的なものに辟易としているひとからすると、クールで良いよね。

オジサン 親友のマリアがシングルマザーなところもいいですよね。

デス そうそう。

オジサン あそこにモニカの父親とか出てきちゃうと、絶対にマリアは宇宙に行かせてもらえないですよ。「お前は母親なんだからそんなことするわけにいかないだろう!」とかクソオスは言ってきますからね。って、勝手にクソオスって決めつけてますけど。

デス モニカがキャロルのことを「キャロルおばさん」って呼んでいるけど、実際には歳の離れたお姉ちゃんとか従姉妹とかみたいなかんじに接しているように見える。ただ、モニカは母親のマリアに対しても割とそんな感じで親子というよりも、友達っぽい。だから、モニカには友達のような親っぽい存在がふたりいて、どちらも女性で、白人と黒人で…っていうかんじ。これもある種のダイバシティで、古典的・保守的ではない家族のあり方だよね、あの感じはGotGっぽい。そういうところもいい。

オジサン なんか変に男が絡んでこないのは本当に爽快でしたね。映画見始めて、ジュード・ロウが出てきたときに「このふたりはカップルとかそういう設定だったりするのか?」ってちょっとモヤーっとしたんですけど、全然そんなことなくて…

デス むしろ吹っ飛ばされるっていうね(笑) マーベル作品にはけっこうそういうものがあるけど、特に『キャプテン・マーベル』はいい意味で予想を裏切られたっていうのが本当に多かった。キャプテン・マーベルはコミックだとアベンジャーズのメンバーで、映画でいえばブラック・ウィドウっぽいポジションだし、GotGのメンバーだったこともあって…。だから、これからMCUに参入してきて、『アベンジャーズ/エンドゲーム』にも出ているし、GotG3なんかとも関わってくるかもわからない。どちらの世界観とも違和感なくフィットできるキャラだから、いろいろと楽しみですね。

オジサン そうですね!とりあえずは『エンドゲーム』での活躍についてまた別個で収録しましょう(笑)

=第3弾 完=

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