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『ジョーカー』【ネタバレ】:オジ&デス対談 第6談 Vol.4

『ジョーカー』についての対談、やっと最終回です。もっといくらでも良い映画に出来たはずなのに何故?DCコミックはもっと自分たちのコンテンツの持つ潜在的な力に気づいてほしい!というファンならでは視点で語っています。なお、しつこいようですが、このnoteはデス・バレリーナとカエルのぬいぐるみ(たまに他のぬいぐるみの乱入)の対談を珈音が書き起こし・編集したものです。よろしければ、こちら↓のnoteも合わせてお読みください🐸
「ぬいぐるみと対談するとは?」

DC作品は「暗い」のか?

デス よく「マーベルは明るくてDCは暗い」って言われるんだけど、それってさ、MCUとバットマンのイメージの違いだよね。どっちも暗いところあるわけよ。マーベルだってさ、X-MENは暗いじゃん。で、DCもクリストファー・リーヴ版のスーパーマンとかさ、明るいじゃん。『アクアマン』は原作よりは明るいところあるけど、別に原作も暗くはないし、シャザムもフラッシュもコミカルで明るい。だから、「DCは暗い」って主にバットマンのイメージだよね。

オジサン そうですね、バットマンがああいう感じだから…。っていうか、前回もそういう話してますけど、DCはジョーカー人気にもだけど、そもそもバットマンに頼り過ぎなんですよね。映像化する際に。

デス そうそう。もうね、バットマンから一回離れよう?って。バットマンってジャスティス・リーグにおいてはさ、アベンジャーズのキャプテン・アメリカとニック・フューリーを足したようなポジションなわけじゃん。

オジサン 確かに。ニック・フューリー的ですよね。司令塔っぽい。

デス 周りのスーパーパワーを持ったひとに対して身体能力は普通の人間だし、頭脳やリーダーとしての役割を担ってる。だから戦闘では、相手が強大な敵になってしまうとウロウロしてるだけであんまり役に立ってないこともある。だからさ、バットマンいなくてもジャスティス・リーグはやれるんだよ。アベンジャーズだって最初はスパイダーマンいなかったし、ウルヴァリンは今もいない。そもそもジャスティス・リーグは映画一作目が中途半端な出来で続きがあるのかもよくわからない。ベンアフはバットマンから降ろされるし、ヘンリー・カヴィルもスーパーマン続けるかわかんないみたいなかんじで。

オジサン もうクリストファー・ノーランのダークナイト三部作でとりあえずバットマンは終了、ってしておけばよかったんですよね。で、出すにしても、ジャスティス・リーグの司令塔として、何かあったときにヒーローをバックアップするために通信を確保したりハイテク支援するみたいな形で、あまり表に出てこないようにすればよかったのに…ベンアフがあんなもこもこスーツ着て出てきてうろちょろして目障りなだけっていう…

デス いや、ほんとそうだよ。で、『ジョーカー』で描こうとしたとされる、格差・差別・分断みたいなことってさ、過去のバットマンですでに描かれてるんだよね。
 例えば、ティム・バートンの『バットマン・リターンズ』、これ、キャットウーマンってのはざっくり言えば女性差別が原因でキャットウーマンになるわけだし、暗黒街を牛耳るペンギンは弱者であるがゆえにヴィランになってしまった。で、それを利用する人間が出てくるわけだよ、ポピュリストみたいな雰囲気のさ。

オジサン クリストファー・ウォーケンのやった役ですね。

デス そうそう。
 で、『ダークナイト・ライジング』だけど、『バットマン・リターンズ』とはだいぶカラーが違うけれど、こっちにもキャットウーマンが出てるし、ベインとかタリア・アル・グールとかは「持たざる者」だよね。

オジサン 「いないことにされているひとたち」ですよね、あんな地下に放り込まれてて。

デス そういう人たちからしたら、バットマンってのはエスタブリッシュメント側なわけだよね。

オジサン 警察なんかと協力してるし。

デス すでに過去の作品でそうやって描かれてるんだよ。
 もちろんね、ああいうテーマについては何度でも語る必要がまだあるし、別の角度から掘り下げることもできる。だから同じような路線でもいいんだけど、『ジョーカー』は過去のその二作に全然及んでないし新しい何かを提示しているわけでもないし、どうしようもない。
 で、ぶっちゃけさ、バットマンに頼り過ぎって話だけど、ロビンにしてもDCは今まで一度たりともロビンのこと映画でまともに描いたことないわけだよ。『バットマン・フォーエバー』と『Mr.フリーズの逆襲』で出てくるけど、れっどさんも「ロビンうざい」って言ってたくらい雑な描写で、ロビンに対して魅力的なヒーローのイメージを世間に与えることができてないじゃん。まぁ、作品自体が失敗作だから、あの二作見てもロビンに好印象を抱くはずがない。ノーラン版のロビンは完全に反則技だったし…

オジサン ロビンとして出してないですからね、あれ(笑)

デス 要するにロビンをきちんと描いたものがない。コミックでは歴代4人のロビンがいて、それぞれ独り立ちしてナイトウィング、レッドフード、レッドロビンになってて、今は4代目ロビンがいる。彼らのことも映画で描こうとしてない。特に初代ロビン(=ナイトウィング)はコミックのDCユニバースではすごく重要なひととして描かれている。
 他にもグリーン・ランタンはリブートが予定されているし、フラッシュの映画化の話も。グリーンアローとかスーパーガールとかドラマで描いてるヒーローもいっぱいいる。なのに、いつまでバットマンに頼ってんだよ!と。しかも、「ジョーカーは続編は作らない」とか言ってたくせに、ヒットしたら「ホアキンがやる気なら撮ってもいい」とかほざきだしやがって、そういうところもイラつく。節操がないんだよ。
 で、せっかくベンアフがやめたのに、ロバート・パティンソン主演で『ザ・バットマン」とか作るとかさ…いや、面白いのかも知れないけど、もうしばらくバットマン抜きでいいんじゃない?と思う。

オジサン なんで意地でもバットマン作り続けようとすんの?ってのはありますよね。

デス だってさ、スーパーマンだって、クリストファー・リーヴ以降のさ、スーパーマンの作品って必ずしも成功してないんだよね。ヘンリー・カヴィルのスーパーマンもさ、ヴィジュアルはいいし、アクションシーンもかっこいいんだけど、作品としては微妙だったし、『ジャスティス・リーグ』でもさ、れっどさん(珈音のこと)に「ぼんやりしてるだけ」とか言われるかんじで。

オジサン 「ずーっとぼんやりしてやがって…」みたいに言ってましたね。

デス 要するにクリストファー・リーヴ版に匹敵するスーパーマン映画って作れてないんだよ。そっちをきちんとやろうという努力はしないでバットマンに頼るのがね…。
 マーベルの方ではさ、アイアンマンはともかく、当初はソーとかキャプテン・アメリカとかさ、「さすがにあんな古典的なヒーローを今映画化して大丈夫?」とかファンにも思われてたわけじゃん。「ましてアベンジャーズ?ハルクとかいるし…」ってさ。でも、それをマーベルは成功させたんだよ。それと同じようにね、DCもスーパーマンっていう一歩間違えたらギャグにしかならないようなヒーローをきちんと描くってのをね、ちゃんとやれよ、と思う。

オジサン 確かに。そこサボってますよね。

デス あのね、DCってドラマだと映画ほど変に肩に力入れてないというか変な色気を出してない感じで成功してんのよね。マーベルのドラマは、映画の存在感がデカ過ぎるから、そこからの差別化もあってあんまりコスプレヒーローっぽくないかんじにしたり、いわゆるアメコミ映画・ハリウッド映画的な外連味のない演出にしていたりとかして、それはそれで成功してる。むしろDCはドラマの方がすぐにマルチバースを出したりとか、けっこうストレートにアメコミっぽいことやってるんだけど、変な気負いがなくてうまくいってる。
 『アクアマン』、『シャザム!』と2作連続で素晴らしかったから、DCもやっと映画でも本領発揮か!と…思ったんだけどね。多分ね、『アクアマン』や『シャザム!』を見てDCらしくないって思ったひともいると思うんだけど、ぶっちゃけバットマンが暗いだけでそれ以外は別に暗くないから!

オジサン バットマンが暗かったせいで、新しいスーパーマンとかもひきずられてなんとなく暗くなっちゃったってことですね。

デス アクアマンやシャザムにDCらしさがないかって言ったらそんなことなくて、ふたりともめちゃくちゃ強いじゃん?海版スーパーマンみたいなアクアマン、魔法使い版スーパーマンみたいなシャザム。そういう神のごとき力を持ってるヒーローってDCらしいじゃん?商業的にも成功したんだし、あの路線を続けりゃいいのに…。

マーベルには出来てるのに…

デス 繰り返し映像化されているヒーローものといえば、マーベルのスパイダーマンなんかはさ、紆余曲折あるけど、その時代その時代でそれなりの作品を残してるわけだよ。サムライミの三部作もだし、『アメイジング・スパイダーマン』も時期的に恵まれなかったから三作目は作れなかったけど素晴らしい。当然、トムホの今のスパイダーマンは本当に素晴らしいし、『スパイダーバース』も素晴らしかったよね。

オジサン そうですね。

デス アイアンマンだって、3で終わりかと思ったら、アベンジャーズにも引き続き出てきて、でも、常に素晴らしいわけだよ。だから、どれだけ出されたって文句はない。バットマンの場合は、よく失敗してるわけだよね。なのに懲りない。

オジサン もしかしてDCのキャラって実写映像化に向かないんじゃないですかね。ってちょっと思っちゃうくらいですね。

デス まあね。キャロルパイセン(注:『キャプテン・マーベル』のキャロル・ダンヴァースのこと)なみに強いひとが多いから、どうしても人間離れした感じになりやすいし…でもなぁ、今は映像技術が発達してるからな…

オジサン マーベルでは、確かにキャロルパイセンが飛び抜けて強いですけど、他のひともかなり強いし、一方でホークアイやブラックウィドウみたいな「生身のひと」も一緒にチームで闘っていて違和感を感じさせないようにできてるわけで…。
 強過ぎるひとがいるとチームのバランスがとりにくいってのはあると思うんですけど、昨日『ワイルドスピード スカイミッション』見てて思いましたけど、作品内での整合性がきちんととれていれば多少リアリティに欠けても「この作品内でのリアリティの地平はこの辺なのね」という了解ができて、荒唐無稽なことが起ってもそこまで違和感を覚えずに楽しむことができる。でも、そういうのがうまくないんですよ、DC映画。

デス で、さっきドラマの話したけど、マーベルのジェシカ・ジョーンズ、彼女なんかはややダークヒーロー寄りだよね。「品行方正」とは言い難いし…アメリカンニューシネマ的なアウトローの現代版というか…

オジサン アル中みたいなかんじですからね…

デス 若干セックス依存症っぽいかんじもあるしね。作品自体もネトフリ制作だからバイオレンスな描写があるし。シーズン1のヴィランはキルグレイブ(原作ではパープルマン)っていうDVストーカー野郎っぽい奴で、ただ、こいつも可哀相な過去がある。本当にクソなやつだしやっつけないといけないんだけど、要所要所でちょっと憎めないところが見え隠れしたり気の毒な部分もあったりとか、そこら辺のキャラ描写もうまかった。もともとマーベルのヴィランの中では二流ヴィランくらいのポジションなんだよね、名前もかっこ悪いし。

オジサン でも、なかなか恐ろしい敵になってましたよね。

デス でしょ?ああいうことが、マーベルはできるのに…。(ホアキンの)ジョーカーもキルグレイブも人間としてはクソだけど、映像化作品でどっちの方がヴィランとして魅力的かと言えば、圧倒的にキルグレイブなわけだよ。
 この前の対談で話した『ザ・ボーイズ』のホームランダーもクソだけど魅力的だったよね。あとは、『スパイダーマンFFH』のミステリオ、あいつはクソな人間だし好きになれる要素がないんだけど、作品には絶対に必要な存在だし、ジェイク・ギレンホールの演技も見事だった。あの衣装なんてよくよく考えたらギャグみたいなのにね笑

オジサン 頭に金魚鉢みたいなの被ってますからね。

デス そうそう笑 でも、あの衣装をすることにさえ、ちゃんと理由があってうまく表現されている。あいつはもともとはホワイトカラーで成功者の側なのにルサンチマンを拗らせてる。映画としてはフェイクニュースの問題なんかもテーマになってて、すごく2019年的な映画だし、『ジョーカー』なんか足元にも及ばないくらいヴィランの描き方にしても作品にしてもクオリティが高い。

結論

デス なんかねぇ…。ま、とにかくね、結論として言いたいことはね、あ、必ずしも成功しているとは言えないけれど、同じワーナー映画で同じピエロものだったらね、『イット The End/それが見えたら終わり』の方がちゃんと2019年に提示すべきことを表現しようとしているし、一定の成果を出してる。

オジサン そう言えば、ワーナー(公式)がピエロものってことで、『ジョーカー』と『イット』を結びつけてツイートしてましたね。

デス そういうのも地味にイラつくんだよね。

オジサン 日本のワーナー公式とかDC公式アカの『ジョーカー』に関する調子こいたツイートとかもかなりイラつくんですよねぇ…

デス 寒いよね。ヒットしてすごい浮かれてるかんじでさ。

オジサン 「これまではアメコミ映画と言えばアイアンマンとかアベンジャーズとかマーベルのイメージだったけど、これからはアメコミ映画と言えばジョーカー!ってなったよね」みたいな空気出してんですけど…、なってねーよ!ってかんじで…

デス そうそうそう。ほんとね…

オジサン そういうのって、映画本体の責任ではないのだけれど、ああいう日本のプロモーションのやり方がね…大絶賛コメントとか楽屋裏話とか流してくるじゃないですか。そこでネタ帳はホアキンが作ったとか、トイレで踊りだす場面は脚本にはなくてホアキンが踊り始めたから慌ててカメラ回したとか、そういう話が紹介されてるんですけど、それさえも全部イラつくんですよね。わけのわかんないダンスの場面撮るくらいなら話の整合性がとれるようなシーン作れよ、みたいなかんじで。

デス しかもさ、あんな映画作っておいて、なに、そのプロジェクトXみたいなノリ?っていうかさ。
 だからね、もう、同じワーナー配給でピエロものだったら『イット』の方がいいし、同じバットマンで分断とか格差とか抑圧とか描いているものだったら『バットマン・リターンズ』とか『ダークナイト・ライジング』の方がいいし、DCアメコミ映画って枠だったら『アクアマン』や『シャザム!』の方がいいし、2019年的って意味だったら『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』とかアマゾンプライムのドラマ『ザ・ボーイズ』とかの方がいいですよ。

オジサン 『アクアマン』も、あれ、ちゃんと分断とか格差ってものも描いてますからね。

デス 描いてる描いてる。

オジサン 海底のひとたちは、地上の人間が好き勝手に海を汚している一方で、存在しないことになっているし、そういう理不尽に対してついに反旗を翻そうとしているって状況から始まるわけじゃないですか。

デス そうそう。で、アクアマン自身はさ、どちらの世界からもアウトサイダーとして扱われている存在だしね。っていうか、アクアマンも本名がアーサーじゃん。なに、同じ名前にしてんの?みたいな気持ちになるよね。難癖だけど。

オジサン ついでに、ジョーカーの方のアーサーのお母さんの名前はペニーで『イット』のピエロと被ってますよ。許しがたいですか?

デス なんかイラつくよね。そういうのも結局、なんかどっかできいたような名前にしてなんかこう…

オジサン アーサーって言えばアーサー王伝説ですよね。

デス ちなみにアルフレッドは苗字がペニーワース。

オジサン とにかく、ジョーカーにオリジンストーリーなんて要らないね、っていうのがボクの結論ですよね。『ジョーカー』っていうタイトルで、あんなピエロになる映画撮っておきながら、「いや、これはあのみんなが知ってるジョーカーじゃないって解釈もあるんですよ」みたいな言い訳しないでほしい。作るなら作るで、本気でジョーカーのオリジンを描いて欲しかったです。真面目にやってほしかったです。

デス あ、あとね、同じようなものならこっちの方がいいって話をしてたけど、ドラマの『ゴッサム』もまあまあ良いよ。

オジサン っていうか、『ジョーカー』はワースト映画枠なわけですから、『ジョーカー』見るくらいだったらもうなに観てもいいですよ!

デス そうだね。『エヴァンゲリヲン』と『ジョーカー』だったらちょっと迷うけどね。

オジサン それは迷いますね…。だったら『ジョーカー』の方が短い分マシかもしれないです。なんかね、さも、深遠なメッセージがありげな顔してるのがね、嫌なんですよね。

デス あと、ヒーローの存在抜きでいきなりヴィラン誕生の物語を作るっていうのは、『ヴェノム』の影響もあるかも知れないよね。ヴェノムの企画を聞いたDC側が「じゃあうちはジョーカーやろう」みたいなさ。「しかもヴェノムは意外なことに可愛い路線できたから、こっちは凶悪路線でいこう」みたいな。

ヴェノちゃん 『ヴェノム』は、前々からヴェノムを映像化したいひとがソニーにいて、念願叶っての単独映画化だったのに、それに便乗しようとか、厚かましい!

デス ね、思いつきでやってさ。

ヴェノちゃん 図々しい!それで成功しようとか、なんか、臍で茶が沸く!…ヴェノちゃん、臍、ないけど!

デス (笑)

ヴェノちゃん ゔぇ!

デス だいぶ長くなっちゃったね。

オジサン まぁ、また付け足したいことがあったら、改めてやってくことにしましょう。

デス これ、書き起こし大変そうだよね(笑)

オジサン 死にそうですね(笑)

デス まぁ、私たちは生温く見守りましょう(笑)

オジサン 生暖かく応援しておきましょうね(笑)

===第6弾 完===


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