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デフ・レパードはすごい!〜英国が生んだダイアモンド・ヒーローズ〜:オジ&デス対談 第9弾 Vol.2

 Vol.1でも、2023年11月のMötley Crüe(モトリー・クルー)とのジョイント・ライブにおける両バンドの印象などを話していますが、今回はもう少しデフ・レパードの演奏や演出の話などもしていきます。


日本におけるデフ・レパード人気

オジサン:Def Leppard(デフ・レパード)に関しては、Bon Jovi(ボン・ジョヴィ)とかと比べると日本ではちょっと知名度が落ちるかなーって感じがあるんですけど…。

デス:そーだねぇ。でも、全世界でのセールスは、80年代のHR/HM(ハードロック/ヘヴィーメタル)バンドだったら、Bon Joviとデフ・レパードは同じくらいだよ。他に同じくらい売れたのはGuns N' Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)やAC/DCやVan Halen(ヴァン・ヘイレン)かな。

オジサン:ああ、そうなんですね。でも、来日公演があったときの会場の規模なんかは全然違ってて、れっどさんがまだ高校生だった頃なんかも、Bon Joviは東京ドームとか横浜スタジアムとかで、デフ・レパードは武道館とか横浜文化体育館だったわけじゃないですか。

デス:まぁ、それはBon Joviが日本では他の洋楽バンドと比べても特別にすごく人気があるからじゃない?若い世代への浸透度とかを考えるとBon Joviの方がその辺ではより成功してるかなって感じがあるけど、世界的に見ればもともとはセールス的にはそんなに変わんないんだよね。

オジサン:なるほど。

デス:どっちも、一番売れたアルバムが全世界で何千万枚売れてるとか、そういうレベルのバンドだから。

オジサン:デフ・レパードだと、やっぱ一番は『Hysteria(ヒステリア)』ですか。

デス:うん、2500万枚くらいだったかな。

オジサン:もう桁が大き過ぎて、ボクなんかは、どのくらいすごいのか分かるようでわからない…みたいになっちゃいます…。
 で、この前のライブ会場でも、どっちかと言うとモトリー・クルー推しの人が多いのかなって感じがしたんですよね。

デス:そうだね。Tシャツもモトリー・クルー着用率が高かったよね。
 まぁ、れっどさんのお姉さんなんかは、「デフ・レパードはロゴが…」

オジサン:…「ダサい」ですか?

デス:うん、まぁ、グッズの場合は単純にそういうデザイン的な優位性みたいなものも関係してるかもしれないけど。

オジサン:そうですね。モトリー・クルーの方はだいたいどのロゴもカッコいいですからねぇ。
 ちなみにれっどさんは、さっきも話した予習の段階でヴィンス・ニールが好きになり過ぎて、真似して金髪にしてライブに臨みました。

デフ・レパードのTシャツを着てケロミン(カエル型電子楽器)を演奏するデス

デス:でも、オレはね、意外だったんだよね。日本ではどっちかと言うとデフ・レパードの方が人気あるんじゃないかって勝手に思っていたからさ。
 モトリー・クルーも人気はあるけど、The Beatles(ザ・ビートルズ)とThe Rolling Stones(ザ・ローリング・ストーンズ)で言ったら、デフ・レパードの方がビートルズ枠じゃん?ハーモニーがしっかりしててメロディがドラマティックで、みたいな感じで。

オジサン:そうですね。(って、その「ナントカ枠」って話は一般に通じるんですかね…?)

デス:で、ビートルズとストーンズだったら、日本ではビートルズの方が人気があるわけじゃんね。

オジサン:そうなんですか?

デス:初来日もストーンズの方がずっと後だったから。

オジサン:でも、それって、メンバーがドラッグだかなんかで入国できなかったとかそんな理由じゃなかったですっけ?

デス:もちろん、それもあるけど、そのキャンセルになった公演自体もビートルズよりは後だったんだよ。まぁ、ビートルズ人気がいまだ図抜けてるのは全世界共通だとも言えるけど。

オジサン:そうですね。ビートルズは学校の音楽の授業で演奏したりとかもするくらいですからね。

デス:それに、日本人的にはビートルズの方が歌メロがしっかりしてるし、歌いやすい曲調だよね。

オジサン:確かに。ストーンズはミック・ジャガーじゃないと成立しないところがありますもんね。

デス:ストーンズはメロディーよりもリズムやビートだから…あるいは「ノリ」というか…。

オジサン:まぁ、「キャラ」ですよね。

デス:うん。ストーンズがミック・ジャガーじゃないと成立しないのに対して、ビートルズは上手い人が歌えばある程度はビートルズっぽくなると思う。だからか、ビートルズの方がカバーされる機会も多いイメージあるし。

オジサン:そうですね。

デス:もちろん、ジョン・レノンやポール・マッカートニーのように歌えるかどうかは別として。

オジサン:あの2人のハーモニーもなんというか「ハマり過ぎ」なところがありますから、なかなか再現が難しいとこもありそうですけど、でも、ビートルズの曲だけで作ったミュージカル映画(『アクロス・ザ・ユニバース』)があるくらいですからね。

デス:あるね。

オジサン:ああいうの、ストーンズの曲でやろうとするとけっこう無理な気がするんですよね。

デス:そうそう。

オジサン:あと、Queen(クイーン)もミュージカルありますね(『We Will Rock You』)。やっぱ歌メロがしっかりしているのがポイントですかね。

デス:そうだね。さっきも言ったように、デフ・レパードの方が歌メロがしっかりしててハーモニーもちゃんとしてて、ちょっと切ないメロディーもあったりして、割と日本人好みというか。たとえば、クイーンとエアロスミスだったら、クイーン枠なわけだよ、デフ・レパードは。

オジサン:そうですね。

デス:で、モトリー・クルーがエアロスミス枠だよね。エアロスミスも人気あるけど、もともとはクイーンの方が日本では圧倒的に人気があったわけだよ。

オジサン:そうなんですね。今ではエアロスミスも同じくらい人気ある気がするんで、意外です。
 で、思うんですけど、モトリー・クルーは、強いていうなら、KISS(キッス)枠じゃないですか?派手でアメリカンな感じで歌詞の内容も割と能天気っぽいイメージで…。

デス:ああ。キッスも70年代の日本でも凄く人気があったバンドの一つだしね。

オジサン:あの、なんとなくロックって男性ファンが多いイメージがありますけど、ボクが思うに、クイーンにしてもキッスにしてもエアロスミスにしても、なんだかんだで、女性ファンがちゃんと支えてるバンドの方が成功してますよね。

デス:そう!そうなんだよ。

オジサン:Bon Joviにしても…。

デス:ビートルズもそうだよね。

オジサン:もともとは女性ファンによって見出されたようなものの方が息が長い傾向はありますよね。

デス:男性ファンだけでなく、女性ファンも沢山いる方がファン層が厚くなるからね。

オジサン:ちょっと、脱線した気がするので、話をジョイント・ライブに戻すと、モトリー・クルーとデフ・レパードの人気の差は、差と呼ぶほどの差でもないかもしれませんね。

デス:まあ、そうだね。ビートルズとThe Who(ザ・フー)とかほど日本での人気に差があるわけじゃないからね。

デフ・レパードの登場を待っているところ

デフ・レパードの独自性は「音響」にある

デス:ところで、ライブ前後に改めて色々聞き直してみても思ったけど、デフ・レパードのサウンドっていうのは…、すごく音響的に凝ったアルバムが多い。ソングライティングや演奏だけでなく、それ以外のスタジオ作業にも全体的に凝ってる印象が非常に強い。

オジサン:そういうこと言ってましたよね。

デス:つまり、ライブ演奏になった場合に、会場の音質が悪かったりとか音のセッティングとかが崩れたりすると楽曲の魅力が伝わりづらくなるところがあるし、そもそもライブであのメンバーの人数で楽曲を再現するのが難しいところもある。そういう音響的に凝ったものが多いってことに気付いて、それがまず単純に音楽作品としてすごいと思ったんだよね。

オジサン:さすが音楽マニア!って感じの感想ですね。ボクはそういうことはあんまり考えてなかったです。

デス:たとえば、ガレージロック系みたいなバンドはさ、別にライブハウスで演ろうがホールで演ろうが、あんまり変わらないし、なんなら、ライブハウスで安いPAでちょっと音が悪かったりした方が魅力的になったりもする。どこ行っても演れるし、音質の善し悪しとかをあんまり問われないし、むしろ音質良過ぎるとズッコケる、みたいなね。

オジサン:(笑)。

デス:モトリー・クルーやBon Joviもロック全体で見れば音質とかしっかりしている方ではあるんだけど、デフ・レパードの凝り方はちょっとずば抜けてるんだよね。
でも、デフ・レパードくらいのバンドになると音質だけでライブ会場を選ぶわけにはいかない。っていうのも、ファンの数が多いから、収容人数も考慮しないといけない。

オジサン:音質にこだわってばかりいられない、と。

デス:そう。特に今回はモトリー・クルーとのダブルヘッドライナーだから、モトリー・クルー側の事情も考えないといけないわけだよね。あ、だからこそ、今回は会場も良かったってのはあるかもしれなよね。

オジサン:そうですね。あの会場(Kアリーナ横浜)はすごく良かったですね。音楽ライブのために作った会場ってだけあって、音がすごく良かったですね。過去にれっどさんがデフ・レパードを観た場所って、体育館だったりとか演劇や講演会もやるようなホールだったりとかで音楽コンサート用のところじゃなかったはずなんで、それもあって「今回改めてスゴいって思わされた」って言ってるのかもしれないです。

デス:それはあるかもしれないね。

オジサン:で、ボクたちが行った日は、後半がデフ・レパードだったわけですけど、セットチェンジ中、デフ・レパードの登場15分前からスクリーンでカウントダウンが始まるんですよ。カウントが0になった瞬間に演奏が始まるっていう演出になっていて、背水の陣だな、とか思ったんですけど。あれ、カウントダウン始めちゃってから、「あ、やべぇ」とかなって、出損ねたりできないわけじゃないですか。

デス:トイレ行きたくなったりね(笑)

オジサン:だから、あの15分前からカウントダウンしたら、もうそれに合わせて完璧にできますよ、って状態に仕上がってるわけですよね。そこもすごいプロフェッショナルだなぁって思いました。

デフ・レパード登場30秒前

デス:で、さっきの音響の話に戻るんだけど、そういうデフ・レパードを特徴づける音響的な奥行きがライブでもちゃんと再現されていたんだよね。「この曲は、もうちょっとバスドラムの音がこんなトーンじゃないといけないのに…でもライブだとイマイチそれが再現できてないな」みたいな、そういう不十分な点があんまり無かった、全部生演奏なのに。楽曲の持ち味を引き立てる音響の良さとかバランスとかってのがちゃんと再現されていたっていうのと、あと、あれだよね、あの年齢になってもみんなちゃんと歌えるから、ハーモニーの再現度も高かったし、演奏やライブ用のアレンジが良かったのは言うに及ばずって感じで、ついでに言うとライティングとか視覚効果も良かったしね。もちろん選曲も良かった。

オジサン:あ、歌声の話で思い出しましたけど、れっどさんが「ジョー・エリオットはライブになるとすぐに喉やられて声が枯れて歌えなくなる」ってよく言ってたじゃないですか。でも、今回、ジョー・エリオットもめちゃくちゃ声出てましたよね。

デス:そう、そのことなんだけど、デフ・レパードの昔のライブ盤とか昔のアルバムのデラックス・エディションについてる古いライブ音源とか聴いても、昔は昔で声出てるよ。れっどさんが何公演も行ったのは『Slang(スラング)』のツアーのときだと思うけど、最近はファルセット使ってるところでも、昔は地声で出てたりするから、れっどさんがライブ通いしてた頃はよほど調子悪かったんじゃないの?

オジサン:『スラング』と『Euphoria(ユーフォリア)』のツアーですね。ただ、本人も「ライブになると声が枯れたりもするけど、それもまた生演奏の魅力だ」ってなんかの映像で自分で言ってましたよ。だから、本人的にも自覚している程度には、ライブになると声が枯れるってのが普通だったんだと思うんですよね。たぶん、最近のツアーは日程をぎゅうぎゅうに詰めてないから、それも良かったんじゃないですか。

デス:その日程についての話、なんかのインタビューでモトリー・クルーだったかデフ・レパードだったか、どっちか忘れたけど、メンバーが言ってたよね。昔は毎日のようにライブをするのが当たり前だったって話。要するに音楽産業も働き方がブラックだったわけだよね。最近は労働問題に対する業界全体の意識の変化もあるだろうし、モトリー・クルーやデフ・レパードくらいのバンドになれば、ある程度は本人達の好きにできるってのもあるんだろうね。

オジサン:そうですね。だから、ジョー・エリオットの声の調子がすごく良かったって、れっどさんは言ってます。

デス:あとね、ジョーの声に関して言うと、あんまり年を感じさせないというか、声がキレイなんだよね。声が若いというか。あの年齢になると、人によっては、声がおじいちゃんっぽい枯れた声になったりもするじゃん。もちろん、それが悪いわけじゃなくてむしろ新たな魅力になることもあるわけだけど。ジョー・エリオットの場合は、そういう感じがなくて、割と瑞々しさを保っている感じがした。それはバックコーラスをやってる他のメンバーもそうだよね。

オジサン:そうですね。

デス:あとは、立ち居振る舞いとかシャキっとしてて、みんな見た目も若々しかったよね。ジョーの衣装については最初に触れたけど、フィル・コリンなんかはムキムキだし。ああやってステージに出て華やかなロックを演奏するからには、ある程度はビジュアル的な要素も大事だよね。
 他のジャンルとかバンドだと、昔は相応に衣装らしいものを着ていたのにそういうのを着なくなっていたり、慢心から段々と立ち居振る舞いがだらしなくなっていったり…。もちろん見た目が変わってもシャキっとしてる人たちもいるけど、なんかちょっとパフォーマーとして残念な人たちも結構いるわけですよ。

オジサン:(笑)。突然の短髪とか衣装がジャージとか…90年代頃は色々あったらしいですしね。

デス:それを考えるとデフ・レパードはすごく現役感がある。モトリー・クルーも現役感はあるけど、どうしても昔のヒット曲中心だから、ちょっと同窓会っぽい雰囲気もしなくはない。

オジサン:そうですねぇ。

デス:なにせ、一度は、もうツアーやめる!って言ってたのを撤回して再度始めているからさ。そのわりにはちゃんと現役感もあったと思うけど、デフ・レパードはそれ以上に「あ、現役のバンドだな」って感じがした。ベテランバンドが集金目的でやってる感じとか懐メロ同窓会気分でやっている感じがなくて。パフォーマスもそうだし、選曲も比較的新しい曲や最新のアルバムからも何曲かやって。最盛期の80年代のヒット曲ばかりじゃなかったし。

オジサン:ダブルヘッドライナーで、それぞれのバンドの持ち時間が90分だから、どうしてもヒット曲の割合が多くなるってことはメンバーたちも言ってましたよね。自分がファンだったとしても、絶対に聴きたいと思っているヒット曲をライブで聴けなかったらガッカリするから、って。

デス:そうそう。

オジサン:それでも今回のツアーは最新アルバム『Diamond Star Halos(ダイアモンド・スター・ヘイローズ)』ツアーも兼ねているということで、そこからの曲も3曲やってましたよね。だから、単独ツアーだったとしたら、もうちょっとその間の比較的新しめのアルバムの曲なんかも入れたセットリストになるんだろうな、って感じですよね。

=Vol.3に続く=

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珈音(怒りのケロル・ダンヴァース)
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