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オススメ映画を語ろう:オジ&デス対談第4弾 Vol.1

主にヒーロー映画について語ってもらおうと始めたマガジンなのだが、ヒーロー映画に限らず世の中には色んな面白い映画があるし、オススメ映画の話をすることになりました。が、ふたを開けてみれば、結局、デス・バレリーナのホラー映画オススメ大特集みたいなことに…。というわけで、今回も数回に分けて投稿します。

推したい映画を挙げてみる

オジサン 今回は、ボクとデスのひとが、それぞれまだ相手が見たことがない映画を3本ずつオススメし合うということにしました。

デス 相手が見たことがなくて、かつ、まぁオレらと似たような趣味の他のひとにもオススメできるような映画をね、1本だと迷うから、3本ずつ挙げていくことにしたんだよね。

オジサン まずはタイトルを言っちゃいますかね。

デス うん、じゃあ、オジサンから。

オジサン ボクはですね、色々考えたんですけど、割と古い映画枠として『大脱走』、それからデスのひとにはオススメしたい珍妙映画枠でイタリア映画『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』…

デス イタリア映画なのか、王さん(笑)

オジサン そうなんですよ。で、あともうひとつは、前から薦めてるのになかなか観てくれないディズニー・ピクサー映画の『ウォーリー』、この3つでいきたいと思います。
で、デスのひとはボクになにを勧めてくる気なんですか?(微妙に泣き声で)

デス まぁ、オレは基本的に、割と色んなジャンルの映画が好きだから、黒沢明とかタルコフスキーとかフェリーニとかデヴィット・リンチとか塚本晋也とか…好きな監督がたくさんいるし、オジサンたちは「ドイツ好きクラスタ」だから、ナチスものとか、あとはヨーロッパ繋がりでルキノ・ヴィスコンティとかルイ・マルとか色々オススメしたいものがあるんだけど(※本人追記「すいません、ちょっと偉そうに言ってます」)、そこらへんは最近見直してないのもあるから、割と最近観たホラー映画の中から、去年日本でも公開された『ヘレディタリー/継承』!

オジサン うわぁ〜、出たぁ…

デス もうひとつがこの4月に日本でも公開された『ハロウィン』の新作。

オジサン あー…

デス で、もうひとつが『ゲット・アウト』、この3つですね。

オジサン 前々から観ろと言われているやつですね。わかりました。じゃあ、順番に一本ずつ推す理由を話していきましょうかね。

デス じゃあ、まずオジサンから…。
 あ、そうだ。最初に言っておこうと思うけど、オレたちは割とネタバレを気にしない方だけれど、基本的には色んなひとにオススメしたい映画だから、できる限りネタバレにならないように話すけれど、「前情報ゼロで観たいというひとには多少ノイズになる程度には内容に触れることにはなるかもしれない」くらいのかんじで。

オジサン そうですね、わかりました。

デス じゃあ、『大脱走』から。

オジサンのオススメ①:『大脱走』

オジサン 『大脱走』は、まぁ、ボクが言うまでもない名作だと思いますけど…、世の中には「脱走もの」ってジャンルがあるじゃないですか。

デス 『ショーシャンクの空に』とか。

オジサン そうそう。『アルカトラズからの脱出』とか『パピヨン』とか…その他、アクション映画でも「どこかに潜入して誰かを助けて脱出する」みたいな任務の話だったりとか。やっぱ脱出ものって独特の面白さがあるじゃないですか。
 で、ざっくりあらすじを言うと、「ナチス時代のドイツの捕虜収容所で捕虜になっている兵士たちが壮大な脱出計画を立てて実行していく」っていう話なんですよ。

デス ああ、ナチス時代なんだ。

オジサン そうなんですよ。で、ナチス時代でも捕虜収容所って園芸やったりスポーツやったり割とのんびりしてたりするんですけど、まぁ、脱走するわけですよ。で、映画の舞台になっている捕虜収容所は脱走常習犯を集めてあって、脱走しにくい立地で監視も厳しいんですけど、それでもひとりで脱走を試みて独房に放り込まれるヤツもいて、それがスティーブ・マックィーンなんですけどね、まぁとにかくそれぞれが得意分野を活かして、トンネルを掘ってそこから脱走するという計画を立てるわけです。色んな分野の名人がいるんで、トンネル堀りが得意なひとがいるし、掘ったときに出る土をどう処理するのかを考えるひともいるし、他にも身分証の偽造とか脱出後の想定問答の練習とかも看守の目を盗んでやるんですよ。
 そういう「どうなるの??」っていうドキドキわくわくもあるし、個性豊かなキャラクターがたくさん出てきて、それがまたうまく物語にフィットしていて、そういう「映画を観る楽しさ」が詰まっている映画だと思いますね。割と長い映画ですけど、登場人物も多いし、テンポもいいので観やすいと思います。
 最近の映画みたいにフェミニズム的にどうとかそういうのは、まぁ当然ないんですけど、捕虜収容所で男しか出てこないので、そういうことが気になってしまうひとが見ても、まぁ、大丈夫かな、と。

デス なるほど。じゃあ、次はオレかな。まずは『ハロウィン』からいこうと思います。(スマホを手に取る)

オジサン なんか長くなりそうな予感ですね。

デスのオススメ①:『ハロウィン』

デス 今回の『ハロウィン』はまだ公開中だけど(2019年5月20日現在)、1作目は1978年に公開されてて、実はその後続編もたくさん作られてるんだよね。最初の作品の監督はジョン・カーペンターっていうホラー映画の巨匠で、『遊星からの物体X』とかが有名だよね。他にも『ニューヨーク1997』とか…

オジサン それは観てます。

デス 『エスケープ・フロム・L.A.』とか…

オジサン ああ、あれ面白いですよね。

デス まぁ、色々あるけどさ、『光る眼』とか…

オジサン あ、それもボク観てると思います。あの子供のやつですよね?

デス そうそう。で、そんなジョン・カーペンターの『ハロウィン』は、当然ホラー映画界を代表する作品だし、1974年の『悪魔のいけにえ』と双璧をなす殺人鬼スプラッターものの先駆的作品のひとつとされてる。例えばかの有名な『13日の金曜日』なんかは明らかに影響を受けてるしね。続編は全部で8作くらい作られてて…

オジサン そんなにですか?!

デス うん、さすがにオレも全部は観てない(笑) さらにロブ・ゾンビ監督によるリメイク版もあって、そっちはスプラッター描写がより過激になってるらしいね。
 で、今回の新しい『ハロウィン』は一旦今までの続編を無かったことにして、78年の1作目の直接の続編という形になっていて、監督はデビット・ゴードン・グリーンだけど、制作総指揮と音楽にジョン・カーペンターもしっかり関わっているし、一作目で主役を演じたジェイミー・リー・カーティスも脚本を読んで「これなら是非出たい」と役を引き受けてて、批評家やファンからの評判もいい。
 一応、最初の作品について触れておくと、これはさっきも言ったように後々のホラー映画作品にすごい影響を与えているけど、実はそんなにスプラッター描写はないんだよ。何を考えているのかわからない殺人鬼(通称ブギーマン)がハロウィンの夜にある町にやってきて次々と民家を襲って無差別殺人を繰り返すっていう話なんだけど、ヒロインのローリーはまぁなんとかブギーマンを退けて終わる。
 で、今回の『ハロウィン』ですよ! 前作で描かれた出来事から、40年後、ブギーマンが護送中に脱走!

オジサン 脱走なのか!

デス そう!で、前作でも主人公だったローリーが、娘のカレンと孫娘のアリソンを守るために闘う、という話。これが、ホラー映画なのに、続編が第一作を超えかねない素晴らしい内容っていうね…。最初から三部作構成で作っているとかならともかく、ヒットしたから2作目も作ろうみたいなものはだいたいクオリティが落ちていく傾向があるじゃん?ホラー映画は特にそれが顕著で、惰性で作っているような作品も多いんだよね。そういうルーティンワークから、ホラー映画界自体が脱却しつつあるんだけど、そういうことを考慮に入れても特に出来が良くて、かつ今日的なテーマを含んでいる。
 これまでのホラー映画でも、女性が主人公で殺人鬼や怪奇現象に見舞われて逃げ惑うっていうのはよくあるパターンだったんだけど、そのヒロインはひたすら泣き叫んだり怯えたりとかして、観客の代わりに恐怖体験をする役割をさせられる、ある種記号的な存在だから、人間性とかそういうものについては深く描かれないということが多かったと思う。『ハロウィン』第1作目だけでなく、かつての『サスペリア』『悪魔のいけにえ』、著名なゾンビものなんかもみんなそうだけど……
 長ぇーんだよ、とか思ってる?

オジサン ちょっと…(笑)

デス 喋りたいことがいっぱいあるんだよ!!!!

オジサン 合いの手入れる隙もなく喋ってるから…

デス ほら!今回オレがオススメするのはホラー映画ばっかりだから、ホラー映画全般に関することは最初にまとめて話しちゃった方がいいでしょ?

オジサン まぁ、それならわかりました(笑)

「要するに」地獄の捕囚

デス で、まぁ、つまりヒロインは記号的な客体化された存在でしかなくて、どちらかと言えば怪物とか殺人鬼の方がメインだったわけだよ。

オジサン まぁそうなんでしょうね。

デス それが、今回の『ハロウィン』では、ヒロインが記号的な存在じゃなくなってる。前作で、わけのわからない殺人鬼につけ狙われて、同じ町の知り合いとか友達とかも襲われて惨殺されるっていう経験をしているわけだから、当然、ものすごいトラウマになるわけだよね。そこから40年経っているわけだけど、それでも、その経験がどのくらい人生を狂わせてしまっているのか、ってことがね、丁寧に描かれてる。
 最初の作品では高校生だったローリーは、今作では所謂「おばあさん」になる年齢なんだけど、やっぱブギーマンによって受けた心の傷が大きすぎてちょっと世捨て人っぽく偏屈になってて、娘にはうんざりされてる。っていうのも、ローリーは自宅を要塞みたいにしちゃってるんだよね。ブギーマンは絶対に自分を殺しに戻ってくると信じて備えてるわけだよ。そういうのを見て、娘は「トラウマとはいえ、さすがに誇大妄想なんじゃないか」って思ってて、あんまり折り合いが良くない。ただ、孫娘の方はそれなりにローリーに共感もあって、彼女がふたりの橋渡し役的な存在にもなってる。
 ローリーに娘がいるってことは、結婚はともかく、パートナーの男性がいて一度は「普通」に生活しようとしていたわけだけど、殺人鬼による被害が結局は娘や孫娘にも暗い影を落としちゃってる。そういうことをきちんと描いてる。要するに、かつてのホラー映画にあった、ただ逃げ惑うだけのヒロインじゃない。なんせ40年間、再対決に備えてきたわけだから、もう『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感があるわけですよ。
 要するに、すごくざっくり言うと、お祖母ちゃん、娘、孫娘の3人でブギーマンとガッツリ対峙することになって、最終的にはこの母娘3代の絆が修復されていく過程も描いている。そういう意味では、『マッドマックス』だけじゃなくて『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とかにも通じるところがあって…

オジサン デスのひと、さっきから「要するに」って言ってる割にはその後が長いです…。全然、要してないですよ。

デス それはね!簡単に言いたい、要約したいという気持ちの表れです!ただ、それが失敗に終わってるってだけです。

オジサン うふふふ、失敗野郎ですね(笑)

デス オジサンは、オレがいつも失敗に終わってるって知ってるんだからそんなこといちいち突っ込まなくていいじゃん!

オジサン 変なキレ方されました(笑)

デス で!で!最近のホラー映画って、すごくポリコレ的なものにも配慮して、人間をちゃんと丁寧に描いてて…、要するに昔みたいにただ怖がらせればいいんだ、露悪的なことしてしまえ、若い女性が泣き叫んで苦しんでいる様子をみて楽しもう!みたいなそういうクソオス的な露悪趣味への反省もあって、ジェームズ・ワンの死霊館シリーズなんかが良い例だけど、ポリティカルコレクトでヒューマニズムを描く作品が全体的に増えているんだけど、ここまで被害者心理にフォーカスしてかつフェミニズム的観点からもアプローチしているホラー映画っていうのは、オレが知る限りでは初めてだと思う。で、それがすごく成功している。単純に話としても面白くなっている、そこだよね。

オジサン 40年ぶりっていうのがかえって良かったのかもしれませんね。そういう最近のホラー映画界の傾向もですけど、娘と孫娘と3人で一緒に対決するっていうのもいいですね。

『ハロウィン』はホラー映画が苦手なひとにも推せる

デス で、オジサンにこれを推しやすい理由なんだけど、スプラッター描写がそこまで酷くないし、オジサンが苦手な怨霊系の話じゃない。

オジサン ボク、やっぱり怨念系が一番苦手なんですよね。痛そうなヤツはいざとなったらそこだけ目を瞑って見ないでおくとかできますからね。

デス あとは『ハロウィン』で描かれるフェミニズムとか家族の再生とか犯罪被害者の心理とか、そういうテーマ的にも関心が持てるんじゃないかなって思って、総合的にオススメしやすい。で、これは、他のホラー映画の苦手なひとにも見てほしいんだよね。第一作目については、さっきも言ったように割と古典的な内容だから…

オジサン 一作目を見てなくても大丈夫そうですね。

デス うん、見てなくてもだいたいこんな話なんだなって概要だけ知っておけば大丈夫。映画の中でも、過去にどんな出来事があったのかってことはそれなりに説明されるから、一見さんお断りの映画ではないって意味でもオススメです。

オジサン なるほどー。

デス まぁ、オレ、ホラー映画好きだけど、オレの生涯ホラー映画ベスト10には入るし、もっと言うとホラーに限らずオールジャンル映画ベスト 20には入る映画ですよ!

オジサン まぁ、『ハロウィン』は見てもいいかなぁーって気がします。

デス あとね、『ハロウィン』のオススメポイントがもう一つ、音楽が素晴らしい!音楽が素晴らしいホラー映画っていうと、『エクソシスト』のチューブラベルズとかさ。あとは、イタリアのゴブリンってプログレッシブ・バンドが手がけた古い方の『サスペリア』ね。新しい方の『サスペリア』はトム・ヨークで、こっちはこっちで趣があってよかったけど。
 まぁ、とにかく『ハロウィン』のテーマソングはホラー映画史上に残るといわれている素晴らしい曲なんだけど、現代音楽的なアプローチの音楽で、しかも作曲してるのがジョン・カーペンター本人っていうね(笑)どんだけ多才なんだよ!で、その第一作目の印象的なテーマソングを引用しつつ、同じような感じの劇伴をカーペンターとその息子で手がけてる。現代音楽的って言ってもわけのわかんないアヴァンギャルド気取りのじゃなくて…

オジサン 嫌がらせみたいな音楽ではないってことですね。

デス そう、ちゃんとした音楽的な音楽だから、安心して。

オジサン とにかく推しポイントが多いんですね。
 あの、ホラー映画は、ボクはそれほど得意じゃないですけど、ちょいちょいホラー映画っぽいのは見てるんで…。

デス まあね。苦手って割には見てるよね。

オジサン デスのひとに『ゾンビランド』とか『ロンドンゾンビ紀行』とか薦めたのはボクですし。

デス あのね、はっきり言って『ハロウィン』よりも『ロンドンゾンビ紀行』の方が全然スプラッター描写は多いよ。
 あ、あと、ジェイミー・リー・カーティスって女優さん、前に対談した『キャプテン・マーベル』の中でキャロルに吹っ飛ばされる『トゥルーライズ』のパネルでさ、シュワちゃんの隣にいる妻役のひとでもあるんだよね。で、『トゥルーライズ』では、シュワちゃんが実はサラリーマンじゃなくてエージェントだったって知った瞬間にブチキレてシュワちゃんをぶん殴ってノックアウトするっていうね。
 そういう役をやっていたひとが、パネルでとはいえ、『キャプテン・マーべル』にも“出て“いて、かつ、今度は40年ぶりの『ハロウィン』でもぶちかましてくれた!ってかんじで、単純に映画好きの観点から見ても痛快なわけだよ。

オジサン そういう観点からも推せる、と。

デス 今回の『ハロウィン』の主演をキッカケにジェイミー・リー・カーティスが海外の雑誌なんかにたくさん登場しているんだけど、そういうところに載ってる写真がまたどれも素晴らしいんだよ。カッコよくてファッショナブルでフェミニズム的で。映画を見たらそういうのも検索してみるといいと思うんだよね。

オジサン キモいですね。

デス なんでだよ!!!

オジサン ボクは、別にデスのひとがジェイミー・リー・カーティスを推してることをキモいって言ってるんじゃなくて、デスのひとが今しゃべりながらピコピコ動いてたのをキモいっていっただけなので大丈夫ですよ。

デス ピコピコ?動いてたっけ?ああ、あれじゃないの?ラップするときにこうさ…

オジサン YO!チェケラ!みたいなあれですか?

デス いや、知らないけど、無意識だからさ。まぁ、とにかく、そんな感じになっちゃうくらい『ハロウィン』が気に入ってるってことだよ。

オジサン ピコっちゃうくらいオススメってことですね、わかりました。

=Vol.2に続く=

映画情報リンク
『大脱走』

『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』
『ウォーリー』
『ヘレディタリー/継承』
『ハロウィン』
『ゲット・アウト』

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