デフ・レパードはすごい!〜英国が生んだダイアモンド・ヒーローズ〜:オジ&デス対談 第9弾 Vol.5
Def Leppardの魅力について、言語化に苦戦しつつもあれこれ語る対談は今回が最終回です。まだまだ語り足りていないことが多く、また、今回の対談は音楽を聴きながら収録したこともあり、書き起こした内容を割とそのままでお届けする形になりました。そのため、ちょっと話が行ったり来たりしてしまっていますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ベテランでありながら、最新アルバム『Diamond Star Halos(ダイアモンド・スター・ヘイローズ)』も素晴らしい、まさに「英国が生んだダイアモンドのような英雄バンド」であるデフ・レパードのスゴさがもっと多くの人に知られることを願って…
『ダイアモンド・スター・ヘイローズ』は傑作である
デス:なんて曲だっけ?
デス:ああ、そうだったね。あれもガツーンって感じの曲じゃないよね。
デス:そうだったよね。
デス:うん。
デス:あとデフ・レパードの曲はキャッチーだから、その場で聴いてすぐに「いい曲だな」ってなんとなくノれるってのもあるよね。
デス:『ダイアモンド・スター・ヘイローズ』はいいよね。
デス:あの曲は曲調にT.REXっぽさがあるんだよね。
デス:そうそう。彼女は、ロバート・プラント(レッド・ツェッペリンのヴォーカル)とも一緒にアルバム作ったりもしてて、しかも、それでグラミー賞も受賞してるんだよね。
デス:片方の〈ディス・ギター〉に関しては、割とフォークロックッぽい感じだよね。でも、そういうことやっても、あざとい感じがしないよね。ちゃんとデフ・レパードらしさを損なわないでやってるからね。
デス:ああ、そうだった。そう言ってたよね。
空間系の曲を聴いてみよう
デス:ところで、ちょっと試しにオレが「空間的」って言ってるような曲をここでかけてみたいと思うんだけど…。たとえばU2とか。
デス:いや、あの、逆にさ、聴いてもらうと、どう文字起こしすればいいかってことが、オレの説明では言葉足らずだったのが、「あ、なるほどこういう感じですね、じゃあ、こういう風に言語化すればいいですね」ってオジサンも思いつくかもしれないよね。
デス:まぁ、オレも、後で思いつくだろうけど。っていうか、これ、録音されてる?
U2の〈Pride (In The Name of Love)(プライド)〉
デス:これ、U2の曲だけど、デフ・レパードにもこんなかんじのパートがあるの、わからない?音のバランスとかさ。
デス:U2のこれ、当然ながら丸っきりHRぽさないじゃん?で、例えばモトリー・クルーには基本的にこういう要素はないわけだよね。
デス:Aerosmith(エアロスミス)にも基本ないじゃん。でも、デフ・レパードは大体いつもさりげなくこういう要素も取り入れてるわけ。それをどう言葉で表現したらいいのかってのがさ…。U2っぽいって言っちゃうのもそれはそれで安直な感じがするじゃん。
デス: 別にU2だけの特徴でもないし。
ただね、この時期のU2はブライアン・イーノってひとがプロデュースしてるのね。この人はグラムロック系のRoxy Music(ロキシー・ミュージック)のメンバーだったことでも有名なんだけど、それ以上にDavid Bowie(デヴィット・ボウイ)のいわゆるベルリン3部作『Low(ロウ)』『Heroes(ヒーローズ)』『Lodger(ロジャー)』のプロデュースなどで有名なんだよ。ベルリン3部作では、プロデュースだけじゃなくて演奏もしてて、事実上、ボウイとイーノの共作って言われているのね。で、こういうU2っぽい音作りっていうのは、遡るとその『ロウ』や『ヒーローズ』なんだよ。
デス:で、ほら、デフ・レパードはデヴィット・ボウイが大好きじゃん?ライブ開演前のSEでは、デフ・レパードの演奏する〈Heroes(ヒーローズ)〉が流れたりもしてたじゃん?
デス:だから、もちろん、同時代のU2みたいなバンドからの影響ってのもあるけど、それ以上にデヴィット・ボウイを意識した結果として、U2と共通するような浮遊感のあるサウンドになった可能性はある。あとフィル・コリンが「自分たちはIron Maiden(アイアン・メイデン)よりDuran Duran(デュラン・デュラン)に近いと昔から言ってた」と証言してたけど、デュラン・デュランもデヴィッド・ボウイがルーツだし納得だよね。
U2の〈With or Without You(ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー)〉
デス:ほら、この曲なんかは、ギターは微かに鳴ってるだけで、ベースとかドラムの方が目立ってるじゃん?もちろん、デフ・レパードは、これよりはもうちょっとHR寄りの作りになってるけど。HRバンドにしてはわりと踏み込んでベルリン時代のデヴィット・ボウイ的というかU2的な音作りをしているように聴こえる。そこのバランスがまた絶妙で、「どっちつかず」になってないところがスゴイんだけどね。
デス:あの時期のハードロック/ヘヴィーメタル(HR/HM)バンドでベルリン時代のボウイっぽいことやってる人たちとか、他に思いつかないし。
あと、あれは?デフ・レパードがT.REXっぽいってのはピンとくる?
デス:特定の曲がってわけじゃなくて、T.REXというバンド自体がデフ・レパードのある部分に影響を与えてるんだけど。
T.REXの〈Get it on(ゲット・イット・オン)〉
デス:こんな感じの曲ってデフ・レパードにもあるじゃん?
デス:特に00年代になってからのアルバムにはこういう感じの曲が1、2曲くらいはあるんだよね。
デス:わかるでしょ?でも、言われてみればそうだなって感じで、「まんま」みたいなのはないんだよね。だから、意外とデフ・レパードの引出しの多さみたいなものは、やっぱりファン以外にはあまり知られてないのかなって。
バカにしてちゃんと聴いてない人たちってのは、「デフ・レパードって昔MTV受けして流行っただけの懐かしのHRバンドでしょ」みたいな扱いをしちゃってるところがあると思う。一般リスナーならともかく、評論家とかがそんな感じなのは良くないよね。
デス:でも、それは、別にデフ・レパードを過小評価してたから聴いてなかったわけじゃなくて、いろいろ成り行きでたまたま聴いてなかっただけじゃん。
デス:それはもう、もちろんその通りだよ。
デス:まぁ、オレが言ってるのは、ロックは全体的にほどほど好きなくせにいつ何時もデフ・レパードやBon Joviとかは絶対にスルーしてやろう、みたいなタイプね。
デス:そうそう。現にその二組がなかなかロックの殿堂入りしなかったのも、そういう奴らが沢山いるからであって。そういう奴らはしょーもないって話だよ。
デス:そうそうそうそう。
結論:みんな、もっとデフ・レパードを聴こう!
デス:まぁ、因果関係ははっきりはわからないのだけど、少なくとも、その曲が入っているアルバム『Dr.Feelgood(ドクター・フィールグッド)』のリリースはモスクワ・フェスのちょっと後だからね。
たまたまちょっと歌詞を調べる機会があったんだけど、ざっくり言うと「変化の時だ、頭の固い大人たちは放っておいて若者たちが変革をしていこう」みたいな感じの歌詞で、もしかしたらモスクワ・フェスでの経験が歌詞に反映されているんじゃないかなって内容だったんだよね。モスクワ・フェスで、明らかに新しい時代の到来を感じさせるソ連の若者たちを見て、それに触発されたのかなって話をしてたんだよね。
デス:モトリー・クルーのメンバーたち自身も当時は若かったわけじゃん?彼らもアメリカからソ連に来た側の若者として何か感じることがあっただろうし、ソ連の若者たちもアメリカから来たロックミュージシャンたちから何か感じることがあったんだろうと想像できる。新しい何かを感じて、「変化を起こそう!上の世代がごちゃごちゃ水を差してくるかもしれないけど、もう変わる時なんだ!」みたいなね。そういうことを考えたのかな〜って歌詞なんだよね。
デス:まぁ、実際そういう側面があることも否めないから(笑)。
デス:あと、歌詞と言えばさ、デフ・レパードの『Hysteria(ヒステリア)』収録の〈Gods of War(ゴッズ・オブ・ウォー)〉って曲があるんだけど、オレは曲名を見て、これもどんだけ厳つい曲なんだろう?って思って聴いたんだけど…(笑)
デス:そうしたら、いつものデフ・レパードらしいメロディックな曲で、「こっちとらゴッズ・オブ・ウォーだぜ!邪魔する奴はなぎたおしてやる!」みたいなイキった曲では全然無くて、しかも割と社会派の、簡単に言うと戦争反対の曲だったんだよね。
デス:時期的にはまだ湾岸戦争は起きてないはずだから、意識したのはイラン・イラク戦争とかかもしれないし、ソ連のアフガン侵攻だったのかもしれないし、特定の戦争について歌っているわけじゃないかもしれない。あるいは冷戦そのものを意識してる可能性もあるよね。でも、ちゃんと、あの時代からみた戦争の悲劇ってものを誠実に歌にしたんだな〜って感じで、すごく良いんだよ。
デス:まぁ、そういう歌詞なんかをきっかけに、一般的に思われてるほど、HR/HMって馬鹿なパーティーロックじゃないのかもしれないってことにも、HR/HMに偏見を持っている人たちにも気付いてもらえるといいよね。気付いた方が、好きなもの・いいと思えるものの数が増えて幸せなわけだし…。オレもデフ・レパードについてはライブを機に改めて気づかされたことも多いけど、もっと早い時期から彼らの凄さを知ってファンとしてずっと支え続けてきた人たちがいたから、オレもこうやってライブを観ることもできたわけだし。
デス:まぁ、オレも入り口として勧めるんだったら、そうなるかなぁ。
デス:そうだよね。ベテランバンドになると、惰性でとりあえずアルバム作ってるけど、全盛期には及ばないってことがあっても驚かないからね。
デス:それに、デフ・レパードって駄作が一枚もないんだよね。色々賛否を巻き起こした『Slang(スラング)』も含めて、やっぱどのアルバムもちゃんと真面目に作ってるし、ただ真面目に作ってるだけじゃなくて、どのアルバムもいいんだよ。つまらない、完全な駄作ってのはない。
デス:そうね。デフ・レパードにしては、少しそっけない音っていうかね。
デス:いま、オジサンは『ヒステリア』路線って言ったけど、単に80年代の音作りに回帰したってわけじゃなくて、あの時代に自然とかつてのデフ・レパードらしさもあるアルバムを作った感じなんだよね。だから、わざとらしい80年代セルフパロディしてるわけじゃないし、そういう懐古趣味とは無縁の、無理のない自然な形でそうなってる。あと、元々『ヒステリア』でデジタルでメカニックな感触のサウンドを作ることに成功してるから、90年代後半以降にエレクトロニカっぽい打ち込みとかを導入しても、ごく自然に馴染むんだよね。
デス:そうだね。
デス:まぁ、オレは、『ダイアモンド〜』の一つ前の『Def Leppard(デフ・レパード)』ってアルバムもその2枚と同じくらい推せると思ってる。
デス:もうちょっとデフ・レパードのサウンド面でのスゴさを語る言葉があったはずなんだけどな…
デス:そのうちモトリー・クルーの凄さについてもちゃんと語ってみたいね。
=第9弾 完=
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