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バンコクの今

仕事に行かなくなって3日。タイ政府からの発表によると、今日から我々は緊急事態宣言の中にいるらしい。実際に生活している中では商業施設、レストラン、マッサージ店の閉鎖が一番痛い。商業施設の中にある飲食店の職場には行けず、外食もできず、肩が凝ってもマッサージにも行けない。スーパーマーケットや薬局はやっているし、外出には制限がないので普通の生活はできるが、街はなんだかしょんぼりしている。だって、ちょっとお茶を...飲めないのだ、どこでも。

観光都市なのに旅行者がいない。いくつかのホテルは休業を決めたようだ。
気になるのは、歩いているとタクシーやモーターサイ(バイクタクシー)、シーロー(軽トラに幌をかけたような在タイ日本人の奥様の足となっている乗り物)の運転手がやたら誘ってくること。乗りたいときは乗せてくれないのに...これはどういうことかといえば、それだけお客さんがいないということ。観光客がいなければタクシーにも乗らないし、人が出歩かなくなればモーターサイにもシーローにも用がない。仕事で疲れていればなんでも乗りたいくらいだが、もはや自宅警備が仕事となった今はどんなに暑くても歩かないと運動不足になってしまう。なので彼らと目が合わないように下を向いて歩いている。

現段階では商業施設やレストランは4/12まで閉鎖することが決まっているが、もちろんこれはこれからの感染者数によって変わってくるだろう。
元からタイではデリバリーサービスが充実していた。専用アプリを使えば登録してあるレストランからお店で食べるものと同じものが届けられる。家にキッチンがないほどの外食文化であるタイではみんなが当たり前のように使うサービスだ。
飲食店は店内での飲食ができなくなっただけでテイクアウトやデリバリーでの営業は許可されている。なので今までデリバリーをやっていなかった(やらなくても店ができていた)日系の飲食店も軒並みデリバリー&テイクアウトを始めている。明かりの消えた店の前にテーブルを置き、お弁当やお惣菜を並べて売っていたり、メニューが置いてあって注文すると中で作ってくれてテイクアウトできたりする。どこも必死だ。

それでも、この期間が終わるまでも家賃は発生するだろうしスタッフの給料も支払わなくてはならない。今までとんでもなく儲かっていて余剰金があるならまだしも、どこも厳しくなるだろう。再開した時にどれだけの店が残っていられるだろう。考えただけでも心が苦しい。もしも休業中のお給料が支払われなかった場合、かなりの人が路頭に迷うことが容易に想像できる。現地の人が貯金できているとはとても考えられない。

考えたくないけど、タクシーはきっと今までよりもっと悪質にぼったくるようになるだろうし、おそらくスリみたいな人も増えるだろう。いくら「微笑みの国」の「マイペンライ」精神があったとしても、ない袖は振れない。タイ政府は休職中の人への対策案をまだ示していない。医療が行き届いていないこの国において、都市部以外の人が感染したら大変なことになることは確かだ。実際にバンコクで仕事ができなくなった人たちが大勢地方の実家に帰省しているらしい。バンコクからウイルスを運んでいるようなものだ。医療が行き届いていないであろう地域に。おそらくそこでは大勢の家族が一緒に生活しているのであろう。そしてここで日本の住宅のようなものを想像してはいけない。

もし、私が日本でパートで働きながら一人暮らしをしていた時に今のような状態になったら、次の月の家賃すら払えたかどうかわからない。政治の人にはもっと知識と想像力が必要だ。それがあればきっと「お肉券」も「お魚券」も思いつきもしないだろう。国民をばかにしてはいけない。生活がかかっているのだ。国民に選ばれて政治をやる人になれたのだから、国民のために自分にできることを頭を使って考えて欲しい。それが仕事なのだから。私たちの声は小さすぎて彼らのところには届かない。
タイ政府が国民にどんな風に手を差し伸べるのか、私はここで静かに待っている。

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