かわいい支配者
娘の桃の節句に向けて、妻と一緒にちらし寿司を作った。
檜の桶を新調し、鮮魚店で刺身の切り落としを買ってきた。
桶に酢飯を盛りつけ、刺身を丁寧に並べていく。
出来上がったちらし寿司は、彩りもきれいで、しっかり食卓を飾る一品になった。
昼食には、ちらし寿司だけでなく、妻が「トンカツも食べたい」と言うので、お惣菜屋で一枚買ってきた。
トンカツを半分に切って、二人で分け合いながら食事を始める。
食べている途中、娘が急にグズり出した。
妻と二人で仲良く食べている姿を見て、何かを感じ取ったのかもしれない。
妻は娘を抱っこしながら、片手でちらし寿司を食べ続けた。
娘が満足したのか、妻の肩の上でぐっすり眠ってしまった。
食事の後、最近進めている勉強のことを妻に話した。
大学入学に向けて、今は中1の数学と英語をやり直している。
学研から出ている「中1数学をひとつひとつわかりやすく」と「中1英語をひとつひとつわかりやすく」のテキストを使っているが、これが本当に文字通りわかりやすい。
「学生時代にこれがあったら、もっと理解できたのにな」と思わず笑ってしまった。
来月いっぱいくらいで、中学レベルの数学と英語は一通り終わらせたいと思っている。
ふと、先日定期入れを拾ったことを思い出した。
お惣菜屋の前で見つけた革の定期入れには、クレジットカードや免許証が入っていた。
交番に届けた後、無事に持ち主の元へ戻ったのだろうか、と気になった。
食卓を片付け、お茶を淹れて一息ついた。
娘はその間も、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。
ちらし寿司もトンカツも美味しかったけれど、テキストの使い心地が何よりの収穫。
「学生時代の俺にこのテキストを渡せたら、偏差値も人生も変わってたんじゃないか?」と思ったけど、今さら過去に何を言っても聞く耳は持たない(笑)
結局、我が家の一番の天才は娘で、すべてを支配している。
ちらし寿司だろうが、トンカツだろうが、彼女の一声で中断――これがうちのルールらしい。