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【狐が僕を待っている】ハイテンションコメディと衝撃のサスペンスの波状攻撃


作品紹介

 韓国のTalesshop開発。
 和風ファンタジー要素強めな、コメディサスペンスものの全年齢ノベルゲーム。
 Live 2D実装
 Switch版は2021年配信。
 SwitchPS4にて配信。ここ最近は、セール価格でワンコインになることも頻繁。私はPS4版プレイ。もしかすると機種別で主題歌が違うのかも。
 日本語と韓国語ボイス、テキストは日中韓英。
 プレイ時間は本編10時間。ヒロインは1人でNormalとTrue、いくつかのBadエンドがある。
 エクストラシナリオが1時間未満。こちらはネタ要素強めな短編集だ。
 無料アプリComipoにてウェブトゥーン版が連載されている。

 シナリオライターや翻訳家、イラストレーターたちは、『僕の彼女は人魚姫』と同様
 BGM和風テイストが強く、ずっと聴いていたいと思うものだった。担当者はミツキヨ氏。『ブルアカ』の「Unwelcome school」や『VOEZ』の「Hitori Paradox」を手がけている。ブルアカ未プレイでも曲は知っているほどで、作曲者を知った時は驚いたものだ。

 メインヒロインのシュアを演じるのは宮崎珠子氏。『人魚姫』の主題歌を担当した経験もある。
 ミミルは中村カンナ氏が。『歴史に残る悪女になるぞ』『それでも歩は寄せてくる』『白聖女と黒牧師』等のアニメにも多く出演している。
 カリンは景山梨彩氏が演じている。『人魚姫』の記事でも書いたように、景山梨彩氏は声優と翻訳の兼任をしていて、多芸さに驚くばかりである。

 あらすじは以下の通り。詳細はストアページにて。
 気がついたら、竹藪の中にいた主人公。自分は誰なのか? なぜここにいるのか? 手元にある鈴は何なのか? 何も思い出せず……。
 竹藪を抜けると、狐娘のシュアが旦那様と迎えてくれた。彼女は一体? なぜ待ってくれていたのか? 自分との関係性は?
 言われるがまま彼女の狐屋敷で過ごすことに。
 そして、記憶をたどる旅をしようと言われ、狐門から繁華街や病院を訪れてみたり、山神のミミルや死神のカリンとも出会ったり……。
 数々の謎を回収しながら、自分の正体とシュアの目的を理解し、彼女のためにある行動を起こすのであった。

 『僕の彼女は人魚姫』を遊び、そのままの勢いで本作をプレイした。
 シナリオライターさん(翻訳家さん含めて)が同じため、物語が始まってすぐに馴染めた。
 また、自分に合うギャグであることはわかっているし、伏線も多く散りばめられていることだって……と読み進めていく手が止まらなかった。

 以下に、プレイしての感想をまとめていく。構成内容、キャラクターやストーリーの魅力を語る上で微ネタバレもあるが、物語の核心には触れずに進めていく。 



オススメ箇所

増えていく謎、解けていくシナリオ

 あらすじに書いてあるが、物語が始まってすぐにいくつもの謎が生まれている
 主人公と竹藪の関係性は? 自分は誰なのか? なぜここにいるのか? 手元にある鈴は何なのか? どうしたら記憶が戻るのか?
 狐娘のシュアは一体? なぜ待ってくれていたのか? 自分との関係性は?
 
 山神であるミミルは、主人公を以前から知っているように接してくる。ミミルとシュアは旧友のようなやり取りをしていて、一人だけ取り残されたような気分になり、なぜ自分だけ何も覚えていないのかという疑問がより一層強くなる。
 死神カリンとの出会いで、主人公は普通の人間ではないと明かされ、どういう面で普通ではないのかと疑問に思うことに。
 狐屋敷から少し外に、森に入ってしまえば、主人公の監視をしているらしい分身シュアたちがとのやり取りが。それぞれ別々の性格を持っているようだが、孤立している子が目に入る。彼女だけ話しかけてこないのはなぜか。
 新キャラが登場する度に、新たな疑問が生まれてくる。

 睡眠時にも疑問は尽きることがない。目が覚めると、口の中に飴のようなものが入っていて……。
 物語が進む内に、誰の仕業か飴の効果までもが判明するが、その目的までは後半まで明かされることはない。
 
 くぐると記憶に残っている場所に行けるらしい狐門。
 その性質上、行き先はすべて主人公に関わってくるのだ。それだけでなく、使うときの注意点としても伏線が仕込まれている。
 着いた先の繁華街でデートをすることになるが、そこでも主人公の不思議な体質が明らかになり、プレイヤーに疑問を投げかけてくる。

 シュアの目的とは?
 死神の役割とは?
 法器とは一体?
 
 さすがに長くなってしまうため、これ以上書くのはやめておく。
 読み進めていくと謎は増えていく一方だが、Trueエンド時にはすべて解けている。あのときの疑問がここで晴れるのかと驚くことばかりだった。

 

キャラクターのかわいさ

 当たり前の話であるが、とにかくかわいい。
 ハイテンションな掛け合いに何度も笑い、えちえちなセリフにエッッッ……となる


 メインヒロインである狐娘シュアは、冒頭から「旦那様〜」と駆け寄ってくれる。ひたすら甘々に「旦那様」と繰り返したり、恐ろしさをはらんだヤンデレ声色で「旦那様」。バリエーション多い旦那様を堪能できる。
 シュアの1番の特徴と言えば、感情の変化にあわせて様々な「シュアァァ」を聴けるところだと考える。「はい、シュアです」と自己紹介かのように言うときもあれば、恥ずかしさで気絶しそうに、喜びや驚きをあらわしている「シュアァァァ」、ボイス保存機能があれば「シュア」リストを使っていたほどだ。
 分身シュアは1体ごとに持っている感情が違うため、性格が違う子がまとめて相手になってくれる。個人的には、メガネをかけた分身が1番好きだ。
 当たり前のように隣で寝ようと提案して、実際にそういったシーンやCGイラストも存在している。
 えちえちセリフで誘惑まで……それでいて、主人公がその気になるとめちゃ照れるらしく。
 狐娘らしく発情をテーマにしたエクストラシナリオがあるようだが……。

 主人公を昔から知っているらしいミミルは、「旦那」と呼んでくれる。
 強気な金髪長耳ロリはいつも水着。水のあるところならどこでも行けるため、主人公の入浴中に忍び込んでからかってくることも。頻繁にからかってくれるので、強い女の子に言い負かされて「うぅ……」となるのが好きな私としては有り難かった。
 頑張ったご褒美として、長耳を触らせてあげるという場面があるのだが、そのときなんてもうほんと……良きじゃろ。

 死神の仕事をするため、主人公の元に訪れたカリン。彼女の二人称は「戒斗(主人公名)」であり、出会った期間から考慮しても他2人と異なっている。
 初めは敵対関係で、正体不明な主人公を不審に思っていたりと、微妙な距離感であった。2人でじっくり話をする機会から、友達関係を築いていく。クワガタチップスって何なんだろう。
 オドオドしている場面も多くても、秘めたる力は立派なもの。主人公の記憶をたどる旅に大きく貢献してくれる。
 シュアやミミルに振り回されることが多く、それで狼狽えているのが彼女らしいというか何というか……。

 『僕の彼女は人魚姫』よりもキャラクターの癖が控えめ(突拍子もない発言や言動、暴力やBLネタ等の削除)のため、かわいさを受け入れやすくなっているはずだ。
 みんなかわいく、面白い話も提供してくれるため、この世界でもっと過ごしていたい、彼女たちの話をずっと聴いていたいとなり……そう思えたということは、すっごくハマっているというわけだ。


サスペンスの緩急

 かわいさだけでも十分満たされるが、刺激が欲しいと感じることもあるはず。
 そんなときにはサスペンス要素……恐怖心を煽ってくれると物語に緊張感が生まれる

 本作のサジェストにホラーとでてくることから、そういった場面がいくつかある。とはいえ、対象年齢もC区分のため、残虐なテキストやCGイラストは存在しない。画面が少し赤くなったり、選択肢次第であっさりBadエンド、狐一族の習性から人間の肝臓に執着がある程度だ。スプラッター描写もなく、それらが苦手な私でも安心して読むことができた。

 キャラクターのかわいさや面白い掛け合いで終わらず、一歩間違えたらBadエンド(やり直しは容易)、生死をかけた戦いもある。
 ミミルの長耳を触ってみるえちえちイベントの直後にも、ヒヤリとすることが起こる。ドキドキの緩急が強くなり、一層記憶に残る
 緊張感のおかげで、物語にメリハリが生まれていく。


メディア展開 ウェブトゥーン版

 これまでの『Talesshop』タイトルは、ラノベやドラマCDを日本で楽しめないものばかりだった。ゲーム単体でしか楽しめないのか……と寂しく思うことばかり。
 そんな中で、ウェブトゥーン版が連載開始された。原作とほとんど同じ内容で目新しさはないが、「こういう場面もあったなぁ」「あのシーンをウェブトゥーン版で見られるなんて貴重」「脳内でキャラクターが喋っている」と別媒体で作品を楽しめるのは有り難い
 
 また、布教目的からも、充実しているメディア展開は大変助かる。「ゲームを起動しないといけない手間がかかる……」「CS機を持っていない」と乗り気ではない人たちに、スマホで楽に読めるからぜひぜひと勧められるのだ。間口が広くなれば人が増えるのは当然のこと。
 メディア展開を経て、少しずつファンが増えていく。その結果、日本未上陸のタイトルがCS移植、他タイトルのメディア展開もされたり……みたいなこともあるかもしれない。そうなると私が喜ぶ。もう歓喜ものだ。
 本作のメディア展開が嬉しいのは勿論、この出来事から他タイトルも注目されるかもと考えるとより嬉しくなる



気になる点

エクストラの物足りなさ

 この物足りなさは、絶対に『僕の彼女は人魚姫』のせい。パロディやメタ発言つよつよなシナリオをあんなに見せつけられたら、こんなんじゃ満足できないって。
 エクストラシナリオでは、ネタの減少だけでなく、短編集も半分以上に減っていた。ほとんどのゲームと比べると、ネタは多めであるに違いないが、やはりアレと比べると……。
 続編の『花』ではあのときのハチャメチャさを思い出させてくれたが、やはりあのときのバカ騒ぎよりは控えめだった。
 とはいえ、過度なパロディやメタ発言を苦手とする人も多く、本編の感動を奪われてしまう可能性もあるため、ネタが抑えられているのも十分納得できる

 メタ発言を踏まえたお約束の展開はあるが、何度も言う通り『人魚姫』より全体的に控えめとなっている。

前作から改善されていない問題

 『人魚姫』からもったいないと感じたシステム周りは、ほとんど変わっていない
 ページ送り毎の効果音が大きめで、設定で効果音音量を下げて遊んでいた。
 バックログジャンプやセリフ保存がないのも相変わらず。
 他にも、スキップを使用しても、キャラクター演出(炎が燃え上がっている演出等)が長い。
 また、スキップ時に動作がカクついたりセリフ再生が遅れたり、1度だけ強制終了にも遭遇した。

 前作の特徴としてあげた、実写を取り入れた背景ついては変更されている。
 スクショを見ればわかるように、アニメ調の背景に変更されている。
 繁華街やその中のカフェ等では実写も取り入れているが、狐屋敷側と町で背景表現を変わっていて、良いアクセントだと感じられる。

 物語の素晴らしさは勿論、キャラクターもかわいく非常に満足したため、多少のことなら私は気にしない。
 ただ、スキップ後のカクつきや強制終了が頻繁に起きていたら考えものだった。



まとめ

 プレイ時間は10時間程度

 まず、作品舞台がとても気に入っている。主人公たちが過ごしている狐屋敷が理想的で。
 シュアちゃんに起こされたい。朝の日差しを浴びながら、分身シュアたちと戯れながら森を歩き、ミミルとカリンが過ごしている家に赴き雑談を……そういった日々を送りたいと思った。
 作品舞台で長く過ごしたい、かわいいキャラクターと一緒に過ごしたいという気持ちになれたら勝ちに決まっている

 高いコメディ要素や自分にぴったりのギャグは変わっていなく、何度も笑ってしまったし、このセリフ好きかわいい……と繰り返したり。

 本作と和風BGMがぴったりと噛み合っている。シュアのテーマと言えるであろうBGMが最も好きだ。
 『人魚姫』のときもサウンドテストがなかったため仕方ないとはいえ、今回も未実装で残念に思う。
 単体で聴いていても、シュアの「旦那様〜」やミミルの「旦那〜」の幻聴が聴こえるときすらあって……。

 『人魚姫』を遊んだ後だったこともあり、パロディやメタ発言に物足りなさを感じた。それがもったいないかと言われるとそうでもない。あの控えめさは、本編の感動をぶち壊さない適切さだった。
 エクストラシナリオでふざけすぎると、クリア後の余韻が吹き飛ぶからね、仕方ないね。
 
 ワンコインセールのときに手に取ってみる、ウェブトゥーン版を読むこともできるため、現在のところ『Talesshop』タイトルで1番遊びやすい環境にあるだろう。
 そして、ブランド初である続編タイトル『狐が僕を待っている 花』がSwitchで配信されているため、本作を遊んだ流れでそのまま遊ぶことだってできる。
 魅力的な内容だけでなく、プレイ環境周りの充実さからもオススメしやすいタイトルである。



点数評価 100点

シナリオ  ★★★★★
 伏線が回収されていく楽しさ。かわいさや多めのギャグの中に、サスペンスの緊張感も生まれている。

キャラクター★★★★★
 とにかくかわいいキャラクター満載。みんな大好きになった。

コメディ要素★★★★★
 『人魚姫』よりネタは控えめ。だからこそ本編の魅力が維持されている。

演出    ★★★★★
 Live 2D実装。
 和風調のBGMと作品舞台がマッチしている。
 狐屋敷の外観が大好きになり、住みたいと思う家。

遊びやすさ ★★★☆☆
 『人魚姫』同様、いたって普通のUI。キャラ魅力が強すぎるため、ボイス保存機能があればなぁという要望もある。

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