【Miracle Snack Shop】本日のメニューはかき氷のこだわりと衝撃のストーリー、過去キャラを添えて。
内容紹介
韓国の『Talesshop』開発。
お店経営シミュレーション要素のある全年齢ノベルゲーム。
韓国のウェブ小説を原作としているらしいが、未読のためゲーム単体での感想となる。
Switch版は2021年配信(Steamでは2018年)。
対応機種はSwitch及びPS4。Steamでも配信しているが、販売元の違いからCS版とPC版で違いが見受けられるかも。そもそもとして、「Snack」と「Sweets」でタイトルが異なっている。私はCS版で遊んだため、そちらでの紹介とする。
音声言語は日本語及び韓国語。字幕は日本語含めて多言語対応。
プレイ時間は10時間未満。ヒロイン2人のNormalとTrue、追加シナリオ他いくつかのエンディングがある。
シナリオライターはZad氏。
イラストレーターはkero氏。
2024年にCS機にて配信された『SOME SOME コンビニエンスストア』と同じコンビのため、そちらにも注目してみるのも良いだろう。
CS機にて『僕の彼女は人魚姫』『狐が僕を待っている』と『Talesshop』タイトルを遊んでいて、CS機でも遊べる本作も……が購入動機だ。
シナリオライターやイラストレーターの違いから、上記2作とは雰囲気や作風が異なっていて驚いたものだ。
あらすじは以下の通り。詳細はストアページにて。
友人のせいで多くの借金を抱えてしまい、その返済に向けてかき氷店『喫茶ミラクル』を経営することになった主人公。
そのお店は事故物件で、屋根裏部屋にはポータルが!? 「入るのは怖いが、どこに繋がっているんだろう」そう考えながら眺めていると、中から女性が出てきて……。
彼女はソルト王国の女王であり、自室のクローゼットと屋根裏部屋が繋がっていたそうだ。1週間に1度、彼女にかき氷を振る舞う約束をする。
繁盛のために動画配信者の力を借りながら彼女の悩みに寄り添ったり、ソルト王国に招待してもらったり、どうしてポータルで繋がっていたのかという謎を突き止めたり、お店を経営するだけにとどまらないシミュレーションゲーム。
以下に感想をまとめていく。構成内容、キャラクターやストーリーの魅力を語る上で微ネタバレもあるが、物語の核心には触れずに進めていく。
キャラクターの魅力
ソルト王国の女王 フィリア
彼女の魅力は3つある。国の違いによる異文化コミュニケーションと言語レベル上昇による言葉の変化、女王としての悩みだ。
言語レベル上昇とは何だと話になるが、こちらの世界に来たときに「ウィンドウが見える」と語ってくれ、物の名前や翻訳機能やら何やらをサポートしてくれているとのことで……。そのおかけで、日に日に言葉が上達していく。そのシステムも後から重要となるため、覚えておいて損はない。
まずは、異文化コミュニケーションのかわいさと物語の発展性を語りたい。
車のクラクションに困惑したり、映画を幻影魔法と驚いたり、遊園地を拷問場と例えたり……そもそも、氷は食べるものでなかったり。
一般常識の違いでからかわれたり動揺したり、異文化コミュニケーションの姿が大変かわいらしい。ぜひ、その姿をボイス付で楽しんでほしい。
また、女王が出演する映画を観たあとに、彼女の一面を理解できる場面がある。どうして女王にならないといけなかったのか、今の立場に嫌気が差していることまで語ってくれる。
キャラクターを深く知れることは、より好きになることに繋がっていく。
次に、言葉の変化と共に、しっかり変わっていく関係性に注目していく。
初対面のときはそれはもうほんとに……戸惑いが強かった。言ってしまうと、とんでもなさに呆気にとられて、好きになれるのかと疑問に感じたほどだ。
その後、言語レベル上昇により、まともに会話が出来るように。
一人称が「女王」の二人称が「氷雪工」といかにもなキャラとなる。
その時期は、前述の異文化コミュニケーションの掛け合いも多く、気がついたら好きになっていた。
最終的に「私」や「ユキト(主人公名)」と、言葉遣いも現代風になっていき、1キャラで様々な一面が見られる。
前の喋り方が良かったと思うプレイヤーも一定数いるはずだろう。現に、私も強気な女王口調がドストライクだった。
そういう方に朗報が1つ。怒りをあらわに拗ねている状態だと以前同様の女王様に戻ってしまう。もうほんとかわいい。
特にオススメしたいのが、お酒を呑んで酔っ払う場面だ。酔っ払っている口調や演技、翌朝に何があったか尋ねるときの会話は、ぜひぜひ聴いてほしい。めちゃオススメ。
動画投稿者 ミラ
「喫茶ミラクル」を繁盛させるために手伝ってくれる動画投稿者。
共通だけだとほとんど出番がなく、正直言って良い印象はなかった。悪質な切り抜き言葉にて注目させる、かき氷を食べて大学合格といった捏造や過激なネタのせいで、軽率でいい加減だなぁと。
彼女の魅力は、ルートに入るまで実感出来なかった。どうして動画投稿者になったのか、その前は何をしていたのか、今の悩みを打ち明けてくれたり……。詳しく知れば知るほど、好きになっていった。
ルートのネタバレを軽く含めてしまうことは申し訳ないが、彼女の魅力は胸に秘めている悩みなしでは語れないと思っている。
動画投稿者になる前はテレビ局勤務であり、どうして辞めたのかを教えてくれる。
主人公(とプレイヤー)は彼女のことを詳しく知れても、家族には現状を伝えていないらしい。父親たちは今でもテレビ局で働いていると勘違いしているようで……。
娘の職業を自慢していた父親に、本当のことを伝えて良いのか、どう切り出すべきかと相談される。
とうとう話し合うことに。私自身こういった家族ものに弱いせいか、娘を自慢に思う父親の言葉には来るものがあった。
また、本心を見抜かれたら笑って誤魔化す、不自然過ぎるほどバレバレな震え声、どこか寂しさを感じる作り笑いと書き連ねるだけで心が痛くなる演技が、彼女の悩みを強く感じさせる。
等身大のヒロインで現実に起こり得る共感しやすい悩みを題材にしているため、ファンタジー要素の強いフィリアルートとは違った魅力を感じた。
DLCパート
物語の理解度とネタバレ回避から、本編の全エンド達成後に推奨。
ポータルが消滅し、結婚を目標に「喫茶ミラクル」で一緒に暮らすこととなった二人。
本モードでは「おさわりモード」が解禁される。『ネコぱら』にあったアレに近いものと思ってもらえれば。
女王服や私服、水着に喫茶の制服、ウェディングドレスで「おさわりモード」を楽しめる。服や部位によってセリフもしくは対応が異なり、全部聴いてみたいとなるはずだ。
フィリアとの幸せなひとときは勿論印象的として、インフルエンサーと自称するクレーマーにガツンと言う女王は必聴ものだった。
また、エンディングについての項目にて詳しく語るが、いくつかのエンディング後日談やソルト王国で疑問を抱いたこと等も判明し、ストーリー面でも気になるプレイヤーにオススメ出来る。
DLCトゥルーエンディングでは、待望の主題歌も。記憶の限り、本作のボーカル曲はこれ一曲だつたかと。
作中会話とエンディングへの入りが綺麗に重なるため、直前の会話から注目してほしい。
オススメ箇所
多数のエンディング
本作のエンディング数は非常に多い。借金返済エンドや各キャラのNormalとTrueだけでなく、思いもよらないエンディングも実装されている。
また、DLCパートには本編エンディング後日談があり、「喫茶ミラクル」とソルト王国を繋いでいる理由、ソルト王国を旅することで見つけた謎、なぜフィリアの前にシステムウインドウが現れたのか……他にも多くの伏線が回収される。
勿論、ミラさんの夢を二人で叶えるエンド、成年向けに近いセリフが描かれる異世界でのフィリアエンドと満足度が高いものが多かった。
ゲストキャラ登場のファンサービス
CGイラストのネタとして、経営パートでのVIPキャラとしても『Talesshop』のヒロインたちが登場する。
本編と関係ない部分でも楽しめるのは良いことで、私はこの手のファンサービスが大好きだ。
寂しいことに、日本語展開されていないものばかりで、理解できるキャラクターは少なかった。それでも、この子の見た目好き、この子はどういう悩みを抱えていてどんな魅力があるのか……と他タイトルへの興味もググっと上がった。
かき氷へのこだわり
喫茶の経営ということで、一つ一つのかき氷が丁寧なイラストで描かれている。
ブルーハワイやミルクかき氷等の王道は勿論、たいやきかき氷やチキンかき氷といった変わり種まで登場している。失敗かき氷シリーズもあり、そのときはモザイク描写になっていて、明らかにダメだろと笑いそうになったり……。
特定のかき氷だとCGイラストが表示される。失敗かき氷だと不満そうに、大成功かき氷は幸せな表情で食べてくれるのだ。
CGイラストの話になってしまうが、遊園地や海デートでの一幕、キスシーンやベッドに誘うものまで多くあり、非常に満足できる。
気になる箇所
ヒロイン同士の掛け合いが少ない
複数ヒロインでワイワイするものはまったくなく、他ヒロインへの言及すら滅多にない。常に1対1での会話と言ってもよいほどだ。
1週間に1度かき氷に食べに来ると冒頭に約束したフィリアだったが、ミラルートに入ると来店の気配を感じられなくなる。
ミラさんにかまっている自分のせいであり、プレイ中は彼女の悩みと向き合いそれどころではなかったとはいえ、初めからフィリアなんていなかったみたいな扱いになっている。
フィリアルートでは、「広告」というゲームシステムを使うときや新作かき氷開発の試食時ぐらいしかミラさんが登場しない。定型文的扱いで、生きている感がなくなってしまう。
強いて言えば、ミラさん初登場時にフィリアのことを尋ねるぐらいで、2人のやり取り……主人公含めて3人での掛け合いはまったくない。
DLCパートでは、一瞬だけ脳内にミラを思い浮かべる程度で、常にフィリアとの会話である。結婚を目標としたトゥルーの後日談であるため、それはそうではあるが……。
ハーレム状態を楽しむ、複数人でドタバタするものではないと理解してから遊ぶのが良いだろう。
経営パートはあくまでおまけ?
かき氷店を経営し、借金返済を目指すと語ってきたが、経営シミュレーションはおまけ要素と割り切るのが良いだろう。
彼女とのデート費用、新作かき氷の開発費用、広告費をキツキツにやり繰りしてといった必要もあまりなく、すんなりと全エンディングに到達出来る。
エンディング解放に応じて恩恵が得られ、お金稼ぎが非常に楽になるためだ。
初回プレイでは、各種フィリアエンディングと借金未返済エンディング(条件満たせば最終日に複数エンディング選択可能、セーブロードでやり直すだけ)でクリア。その後に他エンディングを目指していくだけで、経営面で困らずに完全攻略が可能だろう。そもそも、恩恵なしで全エンド達成は無理な気が……。
シーンスキップ搭載で1周にそこまで時間がかからないのも有り難い。
私のようなシミュレーション苦手なプレイヤーには有り難いが、「経営ものだと!? そういうのが好きなんだよ」とつられてしまうと拍子抜けかもしれない。
まとめ
プレイ時間は10時間ほど。2キャラルートとDLCパート他を考えれば、十分なボリュームだ。
異世界コミュニケーションと口調の変化を楽しめ、女王としての責務についても考えさせられるフィリアルート。さらに、後日談まで楽しめるDLCパート。
等身大のキャラクター設定で、現実でも考えられる問題を描いていてるミラルート。
彼女たちと過ごす幸せだけでなく、なぜ王国と喫茶店が繋がっていたのか。驚きのエンディングから始まる怒涛の展開も満足度が高かった。
複数人の会話が少ないことは、事前に知っていれば特に問題ない。
私のようにシミュレーションが苦手でも、簡単に遊べるゲーム性。好きな人には物足りないが、攻略で詰むことはないので安心だ。
どちらの気になる点も、遊ぶ前に「そういうものである」と理解しておけばそれで済むだろう。
本編とは直接関係ないが、旧作ネタが多いおかげで、過去タイトルに興味を持つことも出来る。
点数評価 85点
シナリオ ★★★★★
女王としての悩み、共感しやすいミラの問題、王国と主人公との関係性、どれも記憶に強く残った。
キャラクター★★★★★
フィリアの言語変化、主人公との関係性の変化を強く感じられる。
コメディ要素★★☆☆☆
ヒロインとのやり取りは満足できるが、どうしても1点気になる箇所がある。魅力的なキャラクターが2人もいるというのに、掛け合いがまったくない。ヒロイン同士の会話、3人でのやり取りがあればなぁと勿体なさを感じた。
演出 ★★★★★
過去作キャラクター小ネタあり。
かき氷のイラストすべてに違いあり。
数種類の服装にておさわりモードがある。全セリフを聴いてしまう魅力がある。
遊びやすさ★★★★☆
スキップがめちゃ早い。
周回プレイでエンディングも楽々回収。ただし、シミュレーション要素を求めている場合は肩透かしかも。