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【My So-called Future Girlfriend】好きになってもらうまでを繰り返す斬新なループもの


作品紹介

 韓国の『Talesshop』開発。
 2016年(Steamでは2018年)配信。
 ループを題材とした全年齢ノベルゲーム
 対応機種はsteamのみ。
 日本語字幕対応、音声は韓国語のみ
 プレイ時間は5時間程度。ヒロイン1人で、GoodとTrueのマルチエンディング方式。

 第1回ビジュアルノベル公募入選作品にて選ばれたレヨン氏がシナリオを担当。翻訳家については製品ページに記載なしのため不明。
 イラストレーターは、同ブランドのマスコットキャラクターを手がけているpokan氏。
 感動パートやあまいセリフは勿論、パロディやギャグ会話もほどよく散りばめられていて、『Talesshop』の魅力がギュッと詰まったものだと感じた。
 
 あらすじは以下の通り。詳細はストアページにて。
 初対面から「こんにちは、未来でアナタの彼女になる者です」と声をかけるヒロイン、ユーリン。どうやら、未来の主人公から、過去に戻って話をしてほしいと言われたようだ。
 未来の彼女(仮)と同棲生活を始めて3日目。彼女の様子に変化が生じて、行方をくらましてしまう。
 そして、時が巻き戻り……物語の冒頭へ。再び彼女に声をかけられる。だが、主人公は何も覚えていなく、出会いの挨拶からやり直すことに。
 どうやら、主人公が好意を抱いてくれるまで3日間を繰り返さなければならないようで……恋は成就し、精神的な負担が大きいループから抜け出せるのか。
 
 これまで多くの『Talesshop』タイトルを遊んできて、その流れで購入した1本だ。
 韓国語音声なんて気にしない。日本語字幕があるだけで有り難い。そのように、パッと飛びついた記憶がある。

 以下に感想をまとめていく。構成内容、キャラクターやストーリーの魅力を語る上で微ネタバレもあるが、物語の核心には触れずに進めていく



オススメ箇所

ヒロインの可愛さ

 ユーリンは本作唯一のヒロインで、サブキャラも存在しないため、常に2人きりで物語は成り立っている。

 そんな彼女が、冒頭から好感度マックスで声をかけてくれる。主人公のように不審な言動から怪しさも覚える人もいるとはいえ、ついついデレてしまうだろう。 
 しかも、薄ピンクのニットセーターと。あと15歳。年齢を明らかにしている分、良さが生まれるというもの。 
 さらにさらに、一瞬とはいえバスタオルを巻いた姿や彼シャツ、デート中の試着姿……。勿論、シャワーシーンや着替えも。 
 イラストや服装だけで満足度が高い。

 甘々なセリフパロネタを混ぜたギャグ会話が多い中で、食事パートが1番記憶に残っているとにかく食べる、めちゃ食べる……。 
 いっぱい食べる君が好き、食事中の笑顔が大好きといった人にはたまらない。 
 さらに、「ホットクを食べるときはこうした方がいいって未来のアナタが教えてくれた」、「たい焼きをどこから食べるかで性格がわかるって未来のアナタが教えてくれた」等の会話も。未来の幸せな生活を思い描けると共に、些細なことでも覚えてくれているなんてとても健気な子だ……。
 食べるのが好きな一方、料理を作るのは苦手なようで、何度もモザイク料理を提供してくれる。そんな中でも成功する瞬間が訪れるが、彼女が置かれている状況から、非常に感動できるものとなっている。

 【Phase2】まではかわいさとギャグ多めの掛け合いを全力で味わえ、それ以降は違った観点から彼女を見ていける。
 好きになってもらうまでループを続けなければいけない。それによって生まれる負の感情は、物語を重くしてくれる。


周回毎に変化する彼女の印象

 ループものと記載した通り、ヒロインであるユーリンは3日間を10回近くも繰り返している。その過酷さから、性格が大きく変わってしまう箇所がある。
 【Phase4】まである中で、印象の変化が特に大きいのが【Phase3】だ。

 1周目は「未来の彼女です」と言われ、流れで家に泊めてしまうことに。その後、甘々な展開のまま進んでいき、運命の3日目。BADエンドのようなかたちで終わりを迎えたと思えば、タイトル画面に【Phase2】と表記される。
 この段階で「本作はこういうゲームなんだな」と理解できるだろう。
 2周目もそこまで大きな違いもなく、主人公宅を懐かしんだり馴染むのが早かったりする程度。また、ヒロインに好意を寄せていると感じられる対応で終わるため、次回が気になるかたちとなる。
 
 だが、問題の【Phase3】が待っている。
 【Phase3】のユーリンはこれまでの絶望が重なり、性格が大きく変わってしまっている。
 アナタが好き好きといったものから、傲慢さが強く見られる。幾度ものループで主人公のセリフや次の行動を理解しており、食い気味で話しかけたり目的地に先回りしていたり……。
 最終的には、主人公を激怒させてしまう。その怒りは彼女の行動によるものが強く、もっともなことで、理不尽さはまったくない。主人公に嫌悪感はまったく抱かなかった。
 『初対面から3日間で好きになってもらうこと』と『成功するまで、記憶を保持したまま何度も何度も繰り返すこと』、彼女に与えられた使命の過酷さを改めて思い知らされた。また、「こんなに傷ついてしまって、次周はどうなってしまうんだ」と不安も強くなり……。
 最悪な終わりになるかと思われた【Phase3】だが、主人公の怒号から1つのヒントを得ることとなる。それが最後のループである【Phase4】に繋がっていく。  

 ひたすら甘い掛け合いが楽しめる【Phase1】。
 甘々要素はそのまま、細かな違いを探していける【Phase2】。
 彼女の変化から不穏な空気を感じ取り、主人公の言葉で物語が大きく動き出す【Phase3】。
 出会いから強い変化が見られ、今度こそ上手くいくはずと信じられる【Phase4】。
 最後を除き、1回のループが30分~45分程度で読み終わる。
 
また、初回と2回目、ターニングポイントとなる3回目、結末の4回目と中弛みしない最小限のループ回数だ。


短いながらも満たされるおまけ要素

 TIPSからユーリンの日記を読むことが出来る。 
 彼女がループをする度に付けていた日記で、これを読むことで彼女の気持ちを少しでも理解できる。そりゃもう【Phase3】ではそうなるよなぁ……と思っても仕方がないもので、必死さに胸を打たれる。
 
 TrueEND後には、Exシナリオが2本用意されている。
 『僕の彼女は人魚姫』や『狐が僕を待っている』をプレイしたことがあるプレイヤーは、ギャグ要素強めなシナリオかと勘ぐってしまうことだろう。私自身がそうで、「食べること大好きなユーリンのグルメ道中記」とかが見られるのかなと期待してしまった。
 だが、2本ともネタ要素ゼロでメインストーリーと地続きの感動ものであった。短いながらも、これらのExシナリオを読んでこそ本作は終わりを迎えられる。



購入前の注意点 

日本語音声未実装

 先述した通り、本作は韓国語のみ対応で、日本語音声が存在しない
 もしかしたら、ボイス音量をゼロにして楽しむのも良いのかも。

 私は韓国語に馴染みがなく、最後まで何を言っているのかわからなかった。音としてしか認識出来ず、単語や文の繋ぎすら理解できず……。時折、聞き覚えのある言葉(和製英語だったりそういうもの?)が聞こえてきて、驚いたり関心したりした程度だ。
 そんな私でも、いつの間にか「ユーリンかわいい、ユーリンほんと良き……」となっていた。何言っているのかはわからなくても、喜びや怒り、絶望等の感情変化は理解でき、感じ取れるからこそより好きになれた。


『Talesshop』らしいクセも強い

 人によっては、効果音のクセが強く、その回数も多いと感じてしまうかもしれない。代表的なものとして、主人公の震えを表現する「ガクガクガク……」といった効果音がある。
 『Miracle Snack Shop』や『Adolescent Santa Claus』でも同じ効果音が使われているため、私は「いつものだなぁ……」と感じて無問題だった。とはいえ、特徴的ともいえるため、こちらに記載しておく。
 
 悩んでしまう選択肢が多く、Trueエンドまでは難易度が少し高く感じた。【Phase4】以降の選択肢が対象だとはわかっていても、私は数回やり直しすることになった。自力でやりたいのなら、少しだけ注意が必要だ。
 『僕の彼女は人魚姫』よりは易しいが(こちらでは最終的に攻略を参考にした)、選択肢の複雑さも『Talesshop』らしいだろう。


タイムトラベルの詳細が乏しい

 期間が3日であること、公園のベンチがタイムトラベルに繋がると説明されているが、どうやって開発したのかが描かれていない。引っかかる内容かもしれないが、本作においてタイムトラベル開発の経緯は重要ではないと気にしないのが1番だ。
 正直な話、クリア後のエクストラシナリオの1つとして、タイムトラベル開発を取り扱っても良いかもと感じてしまった。
 SFものとして扱わず、『好きになってもらうまで3日間を繰り返す恋愛もの』としてが良いだろう。 



要望 

日本では購入不可なメディア展開

 本作はドラマCDやラノベ展開もされているが、日本では購入不可となっている。日本語ボイス自体未実装のため、ドラマCDを理解できるわけなく、ラノベもまずは日本語翻訳が必要だ。
 情報だけを見るに、ラノベは本編の後日談的扱いであり、新キャラも登場しているらしい。そんなの読みたいに決まっているでしょ。
 ドラマCDも本編で見られなかった日常パートやパロネタマシマシのやり取りがあるようで……聴いてみたい。
 
 この問題は本作だけにとどまらず、『Talesshop』全般に当てはまる。めちゃ好きなタイトルで、おまけ話や後日談も楽しみたいとなっても……。



まとめ

 プレイ時間は5時間程度
 3日間の出来事やループ回数が最小限だからこそ中弛みせず、非常に満足行く時間を過ごせる。『短い時間で充実した内容』といった私好みなタイトルだと感じた。
 
 序盤の掛け合いではかわいいを強く感じるだけだったが、【Phase3】でのヒロインの様子と結末から物語に引き込まれ、一気にラストまで読んでしまったほどだ。
 Goodエンドは感動もの。Trueはその上を行く。最後に、Exシナリオで完結する……と感動の三段構えが待っている。
 
 欲を言えば、日本語ボイスを実装してほしかった。とはいえ、韓国語にまったく馴染みがなくても、ユーリンの可愛さや感情の振れ幅を理解できたため、このままでもいいのかなぁと……。
 というか、日本語テキスト未実装の『Talesshop』タイトルをローカライズしてほしい。あと、本作のラノベやドラマCD付きCS版がほしい、めちゃほしい。



点数評価 90点

シナリオ  ★★★★★
 短くまとまっている。中弛みせず最小限のループ回数で、描きたいものも伝わっている。

キャラクター★★★★★
 あまあまなやり取りに幸せになれる。また、中盤の傲慢さは、彼女の精神的負担を感じられる。

コメディ要素★★★☆☆
 控えめでもパロネタ多め。
 ネタ性強めだった料理シーンが感動もの変化したことに驚いた。

演出    ★★★★☆
 クリア後にみられるメモが、彼女のつらさを演出してくれる。

遊びやすさ ★★★☆☆
 いたって普通のUI。定価が安くて助かる。
 

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