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【狐が僕を待っている 花】祝続編、魅力はそのままにキャラを大きな掘り下げ



作品紹介

 前作を知っていないとまったく理解できない。
 遊ぶ前は必ず前作をプレイ、もしくは前作のウェブトゥーン版を読んでおくこと
 前作の感想及び紹介ページはこちら。

 韓国のTalesshop開発。
 和風ファンタジー要素強めな、コメディサスペンスものの全年齢ノベルゲームの続編。今回はタイムリープも添えて。
 Live 2D実装
 2023年にSwitch版が配信。
 日本語と韓国語ボイス、テキストは日中韓英。
 プレイ時間は本編7時間。ヒロインは1人でエンディングも1つ。
 エクストラシナリオが1時間。こちらは本編後日談とネタ要素強めな短編集だ。

 シナリオライター(翻訳含め)やイラストレーター、作曲者たちは、前作の『狐が僕を待っている』と同様。
 既存キャラクターに加えて、追加ヒロインが3人登場している。
 製作スタッフや既存キャラクターについては、前作紹介ページで確認を。

 あらすじは以下の通り。詳細はストアページにて。
 『狐が僕を待っている』が終わり、主人公たち4人で仲良く過ごしていたところ、メインヒロインであるシュアと同じ狐耳を生やしたリュファとレンファがやってくる。
 狐一族としての軽い妖術力試しを済ました後、シュアに手紙を渡す。それを読み終えると、事情を話さずにつらい表情をして……。
 その夜、シュアがレンファを手にかける瞬間を目撃してしまう。主人公が呆気に取られていたところ、リュファもその場に。
 彼女の力なのか、あたりが白く包まれ……なんと、2人がやって来る直前にタイムリープしていたのだ。
 彼女たち狐一族の目的とは? あの手紙には何が書かれていたのか? タイムリープも法器の影響なのか? どうすれば抜け出すことができる? カリンの先輩の目論見とは? と次々に謎が浮かんでくる中で、主人公が起こした行動とは……。
 物語の結末では、姉妹愛や家族愛も強く表現されている。

 以下に、プレイしての感想をまとめていく。構成内容、キャラクターやストーリーの魅力を語る上で微ネタバレもあるが、物語の核心には触れずに進めていく



オススメ箇所

前作が好きなら間違いなく購入推奨

 言葉通りの意味である。
 前作の魅力がそのまま継承されているため、あのキャラクターたちが大好き、物語の舞台やBGMが忘れられないという人ならば、必ず楽しめるであろう。
 伏線が回収される楽しさや後半の盛り上がり、命をかけた主人公の活躍等、変わらず熱中できるストーリーであった。また、リュファの叫びはつらさが伝わる必聴もので、苦しさを感じるとともに物語に惹き込まれることとなった。
 長い言葉はいらない。前作が好きならば遊んで欲しい
 
 キャラクターのかわいさは、前作以上に描かれている。
 シュアの「旦那様〜」や「はい、シュアです」等のシュア言葉、ミミルとのやり取りをもう1度楽しむことができて嬉しさしかなかった。
 また、本作では新たなかわいさも得られる。これまではシュアだけが「シュアアアァァ……」と演じていたが、本作ではミミルたちみんなが「シュアアアァァ……」と1度はマネている。そこがもうほんとかわいい。ボイス保存機能があれば、確実にみんなの「シュアアアァァ……」を登録して、何度も再生していたに違いない。

 他にも、新たなかわいさを感じられる場面が多い。
 旦那様ラブを控えたクールなシュア、普段の強気はどこに……自分の服装にすら恥ずかしさを覚えているミミル、オドオドした調子は微塵も感じられないカッコいいカリン。ある事情から正反対とも言える性格を楽しめるだ。
 すぐに終わってしまう場面だが、いつもと違う様子だからこそより鮮明に記憶に残る。
 
 ライターさんの癖であろうが、えちえちな言い回しが多いのもポイント高い
 エロ同人でよく目にする言葉、蛇は6時間もの間どうこうというセリフを言うとは……と驚いたものだ。カリンは蛇の霊物だし、確かに説得力あるがいやまぁすごい。
 ミミルも「姉妹ど……」って何だよと。前作でも「何って……セ……」や「エッ……」があり。
 他にも、狙ったセリフが非常に多く、後述のおまけボイスにも収録されていて……と意味深なえちえちセリフ好きとして非常に有難かった。


エクストラシナリオの充実

 パロディ満載、お構い無しのメタ発言で溢れかえっているエクストラシナリオは、本作でも読むことができる。
 「そうそう、こういうパロディを求めていたのよ」「本編とは一切関係ありません発言、爆発オチをお願いするなんてほんとに自由なんだから」「これ過去作のネタじゃんか」と夢中になってしまう内容だった。
 また、パロディやメタ発言にとどまらず、後日談的シナリオや本編中で明かされなかった軽い疑問も解決されている

 本編後に良好な関係を築いているシュアとリュファ、そんな2人の本編では見られなかった微笑ましいやり取り。ときには、旦那様への愛により、リュファに恐ろしい発言をしたり……。ヤンデレモードのシュアとリュファの絡みが見られるのは、エクストラシナリオだけ。
 リュファとあの子のやり取りが見られるのも、後日談として描かれているエクストラシナリオだからこそ。この話はかわいさ大爆発でオススメだぞ。
 「カリンにお酒を飲ませないで」といったミミルの発言から、お酒にまつわる苦い思い出があったんだろうなぁと。それを解決してくれるエクストラシナリオ、カリンが酔ったらどうなるのか。
 先輩の名前とは一体。過去にミミルと何があったのか、2人の関係とは。それらがわかるものも。
 ネタを交えつつ、キャラクターの新たな面を掘り起こしてくれるため、みんなへの理解度がドンドン上がっていく

 『僕の彼女は人魚姫』のエクストラシナリオでは、バカ騒ぎが過ぎて本編の感動が薄れてしまう問題を感じた。Badエンドに対するメタ発言ツッコミや唐突に始まる学園パート、パロネタをするためだけに書いたようなシナリオ等、どこか公式二次創作感が強く……。本編との乖離がすさまじく、「(エクストラシナリオはめちゃ面白くて満足したけれども)あのときの感動を返してくれ」という気持ちになってしまったほどで。
 本作はというと、本編の感動を忘れることなく読み終えることができた。
 その理由としては、後日談とわかる時系列、キャラクターを掘り下げる目的でシナリオを書き、その途中にパロ及びメタ発言を取り入れているからだと思っている。


おまけボイスの多さ

 『人魚姫』と前作にも、実装されているおまけボイス。本作では、これまでと比べて2倍以上のボリュームがある。
 「衣音・ぺた子・凛さん」や「シュア・ミミル・カリン」と3キャラ分のおまけボイスだったのが、「シュア・ミミル・カリン・リュファ・レンファ・先輩」と6キャラに増えているため、その多さは一目瞭然だ。
 ボイスの内容はこれまでと変わりなく、タイトルコール、おはようやお休みの挨拶、充電がもうすぐ切れそうといったシステムボイス、パロディセリフ、どことなく意味深なえちえちボイスと多種多様である。  



購入前の注意点

必ず前作の知識が必要

 前作のあらすじは勿論、キャラクター関係がわかる会話や地の文すら存在しない
 また、主人公の体質や前回はどのようにして事件を解決していったのかということも覚えておく必要がある。
 それらが抜けていると、置いてけぼりを食らうかもしれない。
 
 前作から続けて読んでいくのがベスト。続編というより、第2部と考えるのも良いかもしれない。


エンディングが1つ

 『人魚姫』や前作では、NormalやTrue、複数Badエンドであった。だが、本作ではTrue同等のエンディング1本となっている。
 Normalが終わっても消化不良、Normalで満足していてもTrueがあるんだよなぁとモヤモヤ。そういったこともなく、1つのエンディングで綺麗にまとまっている。締めの言葉がアレっていうのは、シュアらしいというかなんというか……。
 また、多くの『Talesshop』タイトルを遊んできたが、エンディング1本で終わるものは初めてであった。意外性や新しさを感じ取れた。

 そのおかげもあり、攻略難易度も随分緩和されている。
 前作まではTrueエンドへの難易度を注意点としてあげていたため、遊びやすさはグンと上がっているはずだ


ボリュームが控えめ

 前作から見ると、ボリュームが控えめかもしれない。
 その理由として、既存キャラの説明が省かれていることをあげる。知っていること前提で進んでいるため、物語全体が短くなるのも当然だ。
 また、エンディングが1つであることも、ボリュームの控えめさに関わっている。

 そうだとしても、おそらく『人魚姫』の本編程度(あのタイトルはエクストラシナリオがめちゃ多くて)だろうし……人より読むのが少し早い私が8時間なら、十分なボリュームだと思う。

 開発当時はDLCシナリオとして執筆していたが、物語が長くなるに伴って続編にシフトチェンジしたらしい裏話があるらしく、その影響が強いのかしれない。 


変わらないUI周りの不便さ

 相変わらずの変わらなさ。もっと洗練されていれば、より遊びやすくなっていただろうに……という勿体なさがある。
 詳しくは、前作の同一項目を読んで欲しい。
 ページ送り時の効果音音量も下げたし、スキップ時にはカクつきやセリフ再生までのラグがあり、1度だけ強制終了に遭遇した。



まとめ

 プレイ時間は8時間程度。その内、1時間程度がネタ強めなエクストラシナリオだ。
 前作の魅力そのままで楽しめるため、前作が好きならマストバイとも言えるだろう。
 人によってはボリュームが控えめと思うかもしれないが、エンディングが1本だからこその美しい締めがある。

 狐一族について、新たな法器についても描かれていて、物語に深みが出ている。
 また、パロやメタネタを交えて、キャラクターの新たな一面も見られるエクストラシナリオも書かれている。その中には後日談も多く、バカ騒ぎ過ぎるシナリオとはまったく感じない。
 このまま3作目も発表されるのではないかという調子で、キャラクターの掘り下げがされている。


点数評価 100点

シナリオ  ★★★★★
 前回の雰囲気そのまま。狐一族や法器も掘り下げてくれて深みが増した。

キャラクター★★★★★
 新キャラの追加。既存キャラとのあまいひとときもあり、人数増えてより賑やかなに。

コメディ要素★★★★★
 本ライターのコメディパートやギャグは相変わらず面白い。
 エクストラシナリオも充実。
 おまけボイスのボリュームが前作倍以上。

演出    ★★★★☆
 Live 2D実装。
 前作と同じBGMが多く、なんだか新鮮味薄い。とはいえ、ミツキヨ氏の素敵な和風調は魅力的。物語後半にはボーカル曲も。

遊びやすさ ★★★☆☆
 ボイス保存やジャンプ機能なし、いたって平凡。少しカクついたりもするが許容範囲。


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