東近江の石段で死にかける
滋賀を素通りする生涯を送ってきました。
駅メモというゲームで、近江鉄道沿いのスポットにアクセスするとアイテムがもらえるイベントを開催していたので、それをきっかけに先日滋賀に行きました。ミルクボーイのネタによると、滋賀は「行く前の気持ちのまま帰ってこれる」ということでしたが、わたしなりに得るものがありましたのでこの記事を書くことにしました。
太郎坊宮
太郎坊宮は、勝負の神様の祀られている歴史の古い神社です。聖徳太子などにもゆかりがあるということで、非常に名高い神社であります。そして、高いのは名ばかりではありません……
近江鉄道八日市線の太郎坊宮前駅で降りると巨大な鳥居が迎えてくれます。一本道で参道が続いています。特にこの時期はちょうど桜が咲いていて、極めて美しい参道です。
参道の奥の方に山が見えます。上の写真からはちょっとわかりにくいですが、見ると山の中腹に一際目立つ建物があります。「まさかあれじゃないよな…」「あれだったらたどり着く前に力尽きるのではないか…」と、見る者を不安にさせます。しかしその心配は外れているのでご安心ください。なぜなら、太郎坊宮のメインの本殿は、その目立つ建物よりずっと高い位置にあるのですから……
石段vsわたし
山の麓からは壮絶な石段が始まります。ところで、今までわたしは何度も寺社の石段を登ってきました。たとえば大雄山最乗寺の350段あまりの石段や、金刀比羅宮の785段の石段(※+700段で行ける奥宮は諦めました)を経験してきています。ここの石段は740段ありますが、これまでの経験もあるので、まあきっと何とかなるだろう!と意気揚々と登りはじめました。
……しかし、結果は散々なもので、5分の1地点、3分の1地点、中間地点、3分の2地点と5分の4地点と、計5回ほど死にかけることになりました。何故こんなことになってしまったのか、いくつか要因を考えてみました。
①荷物が重かった
訳あってカバンの中にノートパソコンや巨大モバイルバッテリーが入っており、それが肩にかける負担が絶大だった、ということが考えられます。コインロッカーなどがあればよかったのかもしれませんが、東近江にはコインロッカーという文化がなさそうでした。(※多分そんなことはありません)
②マスクをつけていた
個人的にはこれが最大の要因ではないかと思っています。足がしんどかったというよりは、呼吸がしんどかったのが実態でした。マスクによって呼吸が制限され、なおかつ汗で濡れたマスクがより呼吸を阻害したのではないかと考えています。濡れマスクといえば古の拷問です。自らに拷問を課しながらの参拝は今までに経験がなく、それゆえに過去最大級のしんどさを感じたものと思われます。
③発狂系の高密度階段だった
石段の配置の特性も大きく影響していると思いました。完全に音ゲーマーの語彙になって良くないのですが、この石段はかなり急な勾配のものでした。たとえば、金刀比羅宮の石段は前半にゆるーいものが数百段と、後半にそれなりのものが数百段、という構成になっています。ゆるい部分には商店が立ち並んでいて、n段目というのが待ち合わせスポットになっています。あくまで生活の中の数百段、その後ちょっとしっかりした石段が数百段、というのが金刀比羅宮の石段です。それに対し、太郎坊宮の石段は業務用の本気の石段が760段あまりある、という構成でした。そのため、階段の密度が極めて高く、段数以上の厳しさを感じることになりました。インターネットなどで、石段の段数は簡単に調べることができますが、このあたりの厳しさは、実際に行って登ってみない限り体験できないものになります。こうした純粋な「一次情報」が得られる、ということが、ある種旅行の醍醐味のように思います。
④運動不足・加齢
考えうる可能性として挙げましたがこれは断じて違います。
本当に自分でも信じがたいほど死にかけてしまったのですが、これだけの理由があれば仕方のないこと、ですね。
夫婦岩
途中、自動販売機の釣銭が10円玉切れで飲み物が買えないなどの苦境に立たされながらも、何とか上までたどり着きました。上からの風景はなかなか素晴らしく、八日市の田畑が一望できました。
何より素晴らしいのが、本殿の近くにある夫婦岩というスポットです。あまりにも荘厳すぎて写真を撮り忘れるほどでした。ただ、おそらくどう写真を撮っても実物よりしょぼく見えてしまうので、撮り忘れたのはかえって正解だったように思います。
夫婦岩とは、巨大な二つの岩のことです。巨大な二つの岩の間にわずかな隙間があり、その隙間を通って本殿に行くことになります。この夫婦岩は、悪心のあるものが通ると岩に挟まれるという伝説があります。真実の口の全身バージョンですね。(歴史を考えると、真実の口こそが夫婦岩の手バージョンなのかもですが)願い事を念じながら間を通ることで願いが叶うという伝説があるので、叶えたい強い願いがある人にはオススメです。叶う気がします。
八日市とのゆかり
いいロケーションだったと言うことと、神道系の御朱印帳を持っていなかった、という二つの理由で、わたしはこの地で御朱印帳を購入することにしました。
御朱印帳は、葬儀の際に副葬品とすることで、死後の世界でのパスポートの代わりになる、と言われています。八日市で手に入れたものをパスポートとすることで、わたしは、死後の世界においても消えることのない八日市との縁(ゆかり)を手に入れることになるのです。このアイテムを手に入れたことが、今回の旅行において最大の収穫であったように思います。
以上、長々と書いてしまいましたが、本稿において一番言いたいことは、「太郎坊宮の石段はすさまじい、しかし上る価値はある」ということです。上述の駅メモスタンプラリーでは、石段の下の時点でスポット判定があるので、上らなくても達成できます。また、車で行くことによって、石段の60%程度をスキップすることができます。(駐車場が若干山の上にあるため)しかし、それでもなお、この石段を上ることには意味があると思います。ぜひ、「基本日帰りで行くところ」である滋賀にゆっくり滞在して、こちらの石段にも挑戦していただければと思います。