(連載11)さしあたって国際結婚してみた:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:1988年
(前回からの続きです。まだ、お読みになってなければ、是非!)
では、まいりましょう。
とりあえず、結婚してみて、ダメだったら離婚すればいいや。。。と思って、ロサンゼルスに参りました。そして、わずか一ヶ月で、いろいろな事を体験して、、、、あ、言い忘れてましたが、私は20代前半に少しだけですがニューヨークに住んでいた事もあり、多少はアメリカ生活の経験があったのです。しかし、このロザンゼルスの一ヶ月間の濃い体験、、、これはまったく未曽有のものでした。
それはなぜ?だったのか?
ただの旅行じゃなかったから? そこがニューヨークじゃなくて、ロサンゼルスだから?? その時が20代だったから? 今は結婚という目的があったから?
もし、こんな 人生の測定メーターがあって、右が喜劇、左が悲劇だとしたら。。。
ニューヨークに住んでる時は、真ん中あたりを毎日チョロチョロ。。。と、行ったり来たり。
しかし、この時のロザンゼルスの一ヶ月は、
どうも、アンバランスに、喜劇の方にかなり針が触れてるような気がする。。。かなり前回も申しましたが、その原因のひとつは、トッシュのユーモアのレベルかもしれません。
。。。。。それは日本人離れしていました。
(って、アメリカ人だから、当たり前か。。。。)
たとえば、私が、「アメリカ人って、なんか間違いが多いよね? 物を買ったりしても、数量を間違ったり、お釣りを間違ったりとか、しょっちゅうだし。」と言うと、
「この国は、コロンブスがインドだと「間違って発見した国」だからね。そんなヒストリーだから、仕方がないんだよ。」と、真顏で言う。
こういう、洗練されたジョークが次から次に飛び出す。アメリカ人独特の楽観的な資質も手伝って、ともかくなんか、可笑しい。。。
天然??いえ、100%天然でもなく、だからといって、狙ってるわけでもない、独特なバイブレイションとグルーブ感。。。。
なんだか、この人といると、楽しい事にたくさん出会えそう。。。。
このまま、突進しちゃっていいのか?
はい、天才の息子を持つパパもそう言ってるし。。。
かくして。。。。、トッシュが「式の日程はクリスマス・イブにしよう」と簡単に決定!
で、さっそく私は日本の家族に「アタシ、結婚するわ、式は4ヶ月後!」って電話で報告。そしたら、
みんな、無責任に、大歓迎!!!
こうして、日本から私の家族全員が、クリスマス・イブに、ロサンゼルスにやってくることになった。
つまり、私の家族がトッシュに会うのは、その時が初めてになるのですが、
みんな、私の結婚なんか「他人事」。それより思いっきり、ロサンゼルスに行くのが楽しみで、
アメリカに親戚ができて、よかったわ、くらいのノリ。。。
そして、その後、私とトッシュがとりかかったのが、引っ越しです。
冷蔵庫もなかったトッシュのハリウッドのアパートから、冷蔵庫のついてるアパートに、です。まあ多少、貧乏でもいいけど、いくらなんでも、冷蔵庫は、ほしいと思いましたので。汗
それで、新居は現在のサンセット・ブルバードのギター・センターのすぐ裏の5階建くらいのアパートです。私は、例のひったくりの件があったので、セキュリティーはしっかりしている、こういうアパートの方が安心な気がしました。
食事する椅子とテーブルはフリマで買いました。リビングの低いテーブルは、トッシュが例の番組でつかっていたセットです。
これでなんとか、家族が来ても、心配はしないだろうと、体裁は整えました。
そして、私は、彼らに、はじめてのロザンゼルス旅行を楽しんでもらおうと、事前に、ミニバンの観光ツアーを、ガイド付きで予約しました。
久しぶりに家族全員が集まるので、こういう機会に、みんなでワイワイとおしゃべりしながら、ああでもない、こうでもないと、車で観光したら、さぞかし、いい思い出ができるだろう〜。と思ったんですよ。
そして、四ヶ月後。
私のこの予測は、あっという間に雲の向こうに飛んでゆきました。
空港に彼らを迎えにいって、「おっつかれ〜〜!!」
ウェルカム〜〜〜!!
よく来たね〜〜!!いえい〜〜!!
わいわい。。。とみんなで、その、ミニバンに乗り込んだ。
ここまでは、予想通りに運びました。
車に乗り込んで。。。ガイドさん(日本人)が、喋りはじめたとたん。。。。
シ〜〜〜〜〜〜ン。
静か。。。
京都のお寺みたいに。。。みんな瞑想?
いえ、せっかくガイドさんがいろいろと説明してくれてるのに、
グースカと、寝てるんですよ!
しかも全員が!!
とくに妹の夫は、そのガイドさんの真ん前で、大きないびきをかいて。。。
今となれば、わかります。当たり前でした!かなりの長時間、10時間も飛行機の中ですから、かなりお疲れ。。。。全員が、疲労と時差ぼけであります。
結局、そのミニ・ツアーバスの中で起きてるのは、私と日本語の全くわからないトッシュだけでした。。。。。
しかし、ガイドさんは、顔色ひとつ変えませんで、(さすがプロ!)
ニコニコしながら、ロサンゼルスの青い空をバックに、次々に移り変わる窓の外の景色の説明を、続けていました。
おそらく頭の中では、
「おメェらよー、ちゃんと人の話をききやがれ〜!!」と、
ハラワタが煮えくりかえってたと思いますが。。。。
そういうのに慣れてらっしゃったのか、プロのプライドで、この仕事を全うしているように見えました。
私は、なんか申し訳なくなってきたので、私自身も旅行者のふりをして、ロサンゼルスが、まるで、初めてのように装い、ガイドさんの方を真剣に見つめて、うなずいたり、驚いたり、時々、質問さえもしました。
「ここがビバリーヒルズ? すごいですね〜!!!セレブの家がみえるかな〜?」とか、
「さすが、サンタモニカの海は大きいな〜、青い色が日本の海と違いますねー? 日本はどちらの方向ですか?」など。
ところどころ、あまりに感激して、
「わお!!」とか、「すっごい〜」とか、
わざと友達同士にようなカジュアルな口調で、思わず口にでちゃった、みたいに振る舞い、
もう何十回も見た事ある、どうでもいいような景色を前にして、
歯が浮くような演技をしました。
そんなに気を使った揚げ句、、、、
このミニ観光ツアーのお金は全部、私が払いました。。。。。。
さて。
いよいよ、ウェッティングの日がやってきました。
セレモニーとパーティーはトッシュの母、シャーリー・バーマンの家でやる事になりました。
トパンガというところにある、小さいけど、チャーミングなコッテージみたいな家。庭が広かったので、ガーデン・パーティーで、当日の食事や、バイオリンの室内楽を庭で演奏する準備などなど、すべては、シャーリーが手配してくれました。
しかし。。。。。当日、ロザンゼルスには珍しく雨!!!
っていうか、
風+雨=つまり嵐。。。。。となった!
基本的にロザンゼルスは雨はほとんど降らない気候なので、これは、ほんとに珍しい。。。。。
その朝、シャーリーは、パニクっていました。庭でやる予定のパーティー、食事はどこで?とか、室内楽隊をどう仕切るのか。。。「ああ、もう最悪、最悪。。。。」と、ため息を、つきまくってた。
私は、自分の作ったウェディング・ドレスを、一時は「紙で作ったら、おもしろいかな?」などと、思ってたので、嵐だと聞いて、「そうしなくてよかった〜」と、ほっと胸を撫で下ろしていました。
一方、トッシュはシャワーで、ミュージカルの「雨に歌えば」を大声で熱唱!!それは、むちゃくちゃ音程が外れてたのですが、一生懸命に、そして心から嬉しそうに。。。。。
ウッディングに招待されたゲストは、50〜60人くらいの、身内だけのハンドメイドな集まりで、この嵐に、みんなから口グチに、「雨が少ないカリフォルニアで、こんなに雨が降るというのは、幸運な事。忘れられない結婚式になる」と、言われました。
日本でも必ず、「雨ふって、地固まると申しまして。。。。。」って、これはインターナショナルな言い訳だったんだと、学びました。
これが、セレモニー中の庭。上から見たところ。
アーティストでバーマン家の長年の友人のジョージ・ハームスさんが、が、牧師の免許を持っているとかで、二人の間にはいって、なんとかかんとか。そして、私とトッシュが「アイ・ドゥー」って、お互いに言い、
プププーとラッパのようなものを吹いて、儀式らしきものは、すぐ終わりました。
そして、例の室内楽のミュージシャンたちは、急遽、家の中で演奏をする事になり、ゲスト達も家の中にはいって、室内はものすごいラッシュアワーの満員電車のようになりました。
こんなかんじで、ぎっしりです。
しかし、ウチの家族は、その暖かいおもてなしに、私のファミリーは、とても感動しておりました。
そして、無事結婚式も終わり、滞在中はクリスマスのホリデーだったので、ファミリーで集まりディナーをやったり、バレエの「くるみ割り人形」を、みんなで見に行ったりして、本当に楽しい時間を過ごし、日本にもどってゆきました。
。。。こうして、我々の新婚生活がはじまりました。
。。。。。。。。そしてわずか、数ヶ月後。。。
またしても!ここで、また予期しない事が。
(こればっかりですけども、実話です)
私は、奈落の底へ。。。。
ある日、父からの電話がありました。
母が「ガンになっていて、もう助からない。」。。と。
私は血の気が引きました。。。。。ずっと、ずっと、ずーっと。ず〜〜〜〜〜と、涙が止まりませんでした。
前からちょっと体調がすぐれないというのは、聞いていたのですが、ガンになっていたとは。。。。
私は、その時、滞在の許可を申請中でしたが、もうそんな事は御構い無しで、すぐ、九州の実家へ戻ったんです。
。。。。次回に続く。。。。。
L*
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