「熱意」の重要性 そもそもやる気が無かった初めての相方

前述した「漫才の相方に求める7つの要素」にて1つ目に「熱意」という要素を入れたが、これについて詳細に。


初めて漫才コンビを組んだのはオレが18歳のとき。

当時入学した大学で4月、同じ学部で知り合った人にオレは話をしていた。

漫才をやってみたい、ゆくゆくはプロになりたいという気持ちがあるので、学生のうちにお笑いの舞台とか色々経験しておきたいという話をしてみたところ「じゃあオレと組まないか?」と言われて人生初めてコンビを結成。

8月に行われるM-1グランプリの1回戦への出場を約束した。

しかし彼のお笑いに対する熱意の無さとやる気の無さに呆れ果て最終的に苦しい解散となることは、このときは知る由も無かった。


最初のネタ合わせ、オレはネタを作って持っていくと、早速相方から怒られる。

「この台本の書き方はセンスが無い。まずどういう動きをすべきか、表情や声の大きさをどうするかが具体的に書いていない。こんな台本なら漫才などオレはやらない」と言われた。

さらに「お前は笑いのセンスがない」と批判される。

オレは頭に来て、じゃあお前がネタを書いてくれと言い返した。

すると相方はその場でネタを書き始めたかと思いきや、たったの4行のネタを書いてよこし、「まあこんな感じ」とつき出してきた。

これだけか、と突っ込むと「お前がネタ書くって最初言ったんだからここから展開させるのはお前だ」と言われた。

結局ネタを書いてる最中、相方はサークルがあるからと去ってしまった。


次のネタ合わせ、台本に相方の提案したベースに展開を加え更に動きや表情等を詳細に記した台本を持参し読み合わせをしようとするが、相方は絵を描くのが好きだと急に言い出しながら道具を机上に置き、絵を描き始めた。

絵についてコンテストがどうのこうの等と熱く語り始めるが、今はネタ合わせの時間だからネタ合わせをしてほしいと伝えるとしぶしぶ道具をしまう。

しかし2、3回読み合わせをして、用事があるから、と終了。


次のネタ合わせ時、相方は寝坊する。

公園で待ち合わせしていたが、約4時間遅刻してきて謝罪も無かった。

1回だけネタを読み合わせした後、サークルがあるからとサークルに行ってしまう。


そして迎えた初舞台のM-1グランプリの1回戦。

場数ゼロにも関わらず練習不足、完成度の低い、しかも相方の笑いの価値観を9割型取り入れたネタを約2分披露してドンズベリで結果は勿論敗退。


その後、反省会を2人で行った。

今度はオレのベースのネタを試したいこと、仙台のお笑いライブにも出て漫才を磨きたいことを伝えると相方はM-1で死ぬほど滑ったことがショックだったのか、とんでもないことを言い出した。

「いいか、オレらは学生なんだぞ。学生の本業は腐っても勉学だからな」

いやいや、今それを言うか?とオレは返す。

勉強は勉強でやっている、それと両立して漫才を磨きたい、最初にそう話をしなかったか、とオレは続ける。

「あのな、オレも最初にお前に色々話した通り、通学が片道電車で1時間かかるんだ。それにサークルもやってるし趣味の絵のコンテストにも応募してるから絵を常に極めなければならないしバイトもしてるし忙しいんだよ」と怒り始める。

そんなこと言ったらオレもサークル2つ入ってるしボランティア活動もやってるし1人暮らしだから自分のこと全部自分でやらなきゃならないから忙しいのはお互い様だ、とオレは言い返す。

「いやお前が漫才やりたいって言い出したんだからお前が愚痴るのは違うだろ」と相方は怒り心頭。

オレも頭に来て、お前が忙しいって言い出したんだからこっちも忙しいって話をしたって良いじゃないかと返す。

「じゃあ漫才やるなんて最初から言うなよ。この間も言ったけどもう一度お前の為を思って言う。お前に笑いのセンスは無い。向いてない」と再度批判される。

もうお前なんかとはやってられない、やる気が無いなら解散しようとオレは切り出す。

「はい、了承」と彼はあっさり即答し、人生初のコンビ解散は後味の悪いものとなった。


オレはその日から学んだ。

相方探しは、誰でも良いから誰かと組みたいって考えではこういうことになるんだと。

お笑いに対する熱意がある人を探さなきゃ絶対にダメだと。

まずコンビを組む前に、互いにどのぐらいお笑いが好きで、どのぐらいの情熱を持っているかをちゃんと確認しないと同じことを繰り返すとオレは思った。

よって次から相方探しをする際には、絶対に熱意がある人と組むことを決めた。


笑いのセンスを批判されたことに関しては、初めて漫才、お笑いと向き合ったのだから当たり前だと考えていたので受け流すことができたが、漫才というのは互いの息が合ってなければ絶対に成立しない。

片方がセンスがある無いとかの問題ではない。

だが彼があまりにもネタ合わせ中やる気の無さが滲み出ていた為、そこまでのことを言い返す必要が無い、そもそも言い返す価値が無いとオレは判断し、面倒になって解散を告げたのだった。


熱意の重要性、それを相手に求めるところから相方探しが始まるとオレは断言する。

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