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2024年 漫画 ベストバイ

㋱㌍㍆㍉㌤㌏㌤…

2024年に買って読んだ中で、「コレは読んで良かったな~」と思った漫画を「いやー良かったよね~」と言いながらふわふわ振り返る記事です。


①『鉄鍋のジャン』(電子版)

おまえの料理なんかだ~れも食っちゃくれねぇよ!ザマーミロ!」と主人公らしきキャラを追い詰めている(ようにしか見えない)シーンのスクショで、本当はその悪人ヅラしている方こそ漫画の主人公だった……というネタで定期的にバズっているイメージがある漫画だと思ってました。
正月休みに全巻購入して一気読みしたら、ネット上で長くずっと話題になるだけあって……面白い!

巻末にレシピが載っているタイプの漫画なのもあって、本編は再現性がある料理だらけなのも読んでて楽しい。
巻末ではレシピ以外にも料理監修の先生のあとがきが載っているのですが、基本は原作と料理監修がバチバチ喧嘩をやり合っているしまあまあライン越えの迫力ある悪口の応酬にまで発展しているので毎巻笑ってしまう。いいんだ、漫画制作の裏側をこんな風に暴露して。

ジャンの言動や顔面が悪人過ぎるという先入観から読み始めたら、鉄鍋のジャン世界はジャン以外の人物も倫理観や治安が終わっているため、主人公だけにヘイトは向かないようになっている作劇です。すごい。
あと、突然登場してきたジャンと小此木くんの女装が洒落にならないくらい可愛く描かれていて迫力があります。すごい。


②『ハイパーインフレーション』(紙版)

旧Twitter(現X)に常駐しているタイプのオタク、み~んな『ハイパーインフレーション』のことが好き!

連載開始から大分経ってこの作品を遅れて知った為ジャンプ+で連載を途中から追い始め、完結まで見届けた後、これは…紙で手元に残そう!と決意を固めました。
全6巻で綺麗に纏まって完結している作品は手元に残しやすいしすぐ揃えられるな~と思っていたのですが、近所の本屋には全然無く、買い揃えるまでに結構時間が掛かった。通販を使うべきだったね。

『馬鹿でもわかる!贋札の仕組み』『なぜ贋札作りは大罪なのか、世界経済はどうやって壊れるのか』の理論を細かく突き詰めてくれる中、「通し番号が同じ"完璧"な贋札を使って帝国を出し抜けるのか」「離れ離れになった姉とガヴ―ル人奴隷は解放できるのか」という骨太の本筋を最後までブレずに描く高IQ作劇を展開してくるカッコイイ漫画。

でも時々絵面を最低IQの馬鹿にすることでメリハリは付けるし、「経済に詳しくないから」という理由だけでは読者を置いていくことも無く寄り添ってくれる。他人に教えることが上手な、頭の良い馬鹿を地でやっている。
こんな変な漫画は他に見たことがない。

『ハイパーインフレーション』が好きな人は、同じ作者・住吉九先生の次回作『サンキューピッチ』も読みましょう。サンキューピッチ第一巻は1月4日発売なのですぐ追いつけます。
『ハイパーインフレーション』で誰も見たことのない贋札バトルをやり切った次は、誰も見たことのない野球譚を見せてくれるらしい。

SNSで大人気の恵体巨女赤ら顔三白眼教師・阿川先生ばかりが話題になっていそうなイメージですが、エースピッチャーのはずなのに何故か味方チームメイトからストレス耐久実験に晒されて追い詰められている三馬くんという展開が凄いことになっているので今が一番面白い漫画ですよ。


③『君と宇宙を歩くために』(紙版)

いつの間にか凄い話題になっていてビックリした。
この漫画は本当に良いですね……。

バイトが長続きしないヤンキー・小林くんと周囲から浮いている転校生・宇野くんの二人が友情を築く、それだけを丁寧に描いていくお話なんですけど、読んでいるだけで「ずっと友達でいてくれ……」と二人の友情を心から願ってしまう"祈り"のような漫画。
登場人物全員にそれぞれ「生きづらさ」があり、その「生きづらさ」全てに大なり小なり共感ポイントがあるのが怖いところで、つまり個々人の描写が凄いリアルなんですよね。
1人の人間に感じる「そういうとこやっぱ尊敬できるなー」な部分も、「コイツ悪い奴じゃないんだけど、そういうとこだけホント無理」な部分も、可愛い絵柄で嫌味なくサラッと描く作風がとても好みです。


④『光が死んだ夏』(紙版)

『君と宇宙を歩くために』の対義語か?

アニメ化も決定している、陰鬱ジャパニーズホラー漫画。
閉鎖的な田舎町の気持ち悪さ、やけに写実的なモブ、明朝体の書き文字、見開きで現れる異常現象など、どれもが「湿度」を持っている。
『君と宇宙を歩くために』にも田舎の良くないところが現れていましたが、『光が死んだ夏』のイヤさは本当の直視できない「嫌」です。

ジットリとイヤ~な夏の湿度を伴う耽美的な画風のホラーなんですが、最新刊からは主人公らが生まれ育った村のルーツと災厄に踏み込み、「なんとかしないと…ヤバイぞ!」と激動の展開を迎えているので面白い。

隣に立っている幼なじみの光は、いつのまにか光じゃない「何か」に成り代わっていた。幼なじみと同じ顔をしている「何か」は間違いなく人間じゃない──という出だしから始まる、主人公・よしきと「ヒカル」の奇妙な交流。
人間だった「光」が「ヒカル」になった事実を腹括って受け入れるよしきの肝の据わり方が巻を増すごとに凄まじいものへと進化している。

死んだ「光」に成り代わった「ヒカル」はまず前提として人間ではないので、ニンゲンってそういうことで泣くんやなーこれって"愛"なんかなー程度の認識で人間を観察している事が毎回描写されている。
拠ってよしきと読者は危ういヒカルを思わず警戒してしまうが、それはそれとしてよしきと一緒にいたいと願うヒカルの姿に情も湧いていく。怖い。

『光が死んだ夏』、人外と少年の危うい関係性以外にも只者ではない強キャラ中年女性、恐ろしい因習、発狂不審者、ハムスターを連れ歩いている霊能力者など…も見どころです。

コミックスでは豊富な描き下ろしページでキャラの掘り下げを見れるほか、「本編でよしきがこの行動を取らなかったら…」という最悪のifまでもが作者の手によって細かく明かされています。
そんな恐ろしい情報開示ある?


⑤『探偵学園Q』(電子版)

ガキ時代に途中まで読んでいたんだけど、続きがずっと気になっててセール中に買っちゃった!やった~

「途中までしか読んでいない漫画」ってたくさんあると思うんですが、海外在住だった子供時代にいろいろあって漫画は長く手元に置いておけなかったり、全巻は買って読めなかったりで悔いが残っている思い出も少なくないので、機会があればちょっとずつ小さい頃の自分を喜ばしてあげたい。

『鉄鍋のジャン』でも気になってたんですが、少し昔に連載していた少年漫画は何故突然クオリティーの高い女装シーンが挟まるのか。
女装少年ブームでもあったのかな……?


⑥『ジャンケットバンク』(電子版)

急にドハマりした!!!!!!おもしれ!!!!!!!!!

ハマり過ぎて、全巻読み終えた次の日に爆速でグッズ予約した。

この漫画、出てくる顔の良いキャラが軒並み頭おかしいんですけど凄い魅力的なんです。初登場時には「こんなヤツを好きになれるかよ」と思わせてくるようなヤバ言動男のことを、最終的には好きになってしまう。
癖の強い萌え萌え美形キャラ見本市。

舞台となるカラス銀行の地下は賭場になっており、そこに倫理観のない怖いギャンブラーが集まってくるのですが、そのギャンブラーを使って戦わせることで金を稼ぐ銀行がいる…という設定のせいで「実はギャンブラーよりも行員やカラス銀行そのものの方がヤバいし真っ黒じゃねーか」「ギャンブラーの命を何だと思ってるんだ」「暗黒金持ちのヤジ、ほぼインターネットと一緒」「クソゲーで命を賭けさせるのをやめろ」という感想が先に出てくる不思議な読み味。

耽美な風体でミステリアスキャラの主人公・真経津まふつくんが「フッ…僕と遊んでくれる玩具がまた壊れちゃったなァ…」とニヤニヤしながら強キャラムーブで無双していくギャンブルストーリーなのかと予想し読んでみたら、想像以上に流血上等の泥臭いフィジカル戦法&ルールの穴を突く大逆転戦法だった。
なので、毎バトル「うおおおおお真経津くん!また凄い逆転を見せてくれ!!!」と拳を突き上げながら叫ぶ暗黒金持ちの気分になれます。

そして『ジャンケットバンク』には真経津の他にもう一人の主人公・御手洗くんという行員がいるのですが、彼は初対面の瞬間から真経津くんという存在に魅せられ惚れ込み(そうとしか言いようがない)、ギャンブラー・真経津の担当銀行員として彼を全力でサポートすべく狂気的な奉仕精神を発揮していく姿が「真経津さん信仰」そのもので、徹頭徹尾とにかくキショく描かれている姿が主人公とは思えなくてビビる。
第一印象こそ最悪だったハズの激ヤバギャンブラー達ですら、彼らのほのぼの日常系描写を見せることで読者に愛着を湧かせてくる作品なのに、御手洗くんは未だに血の通った生活臭というか、人間味が全く見えない。もはやそういう生物として生態を描かれているのかもしれない。

最新17巻のオマケ漫画では、御手洗くんが「真経津さん信仰」に対するキショさをワンステージ上へ更新していて、読みながら悲鳴が出ました。

『ジャンケットバンク』が面白すぎて田中一行先生の作風のファンになってしまったので、評判の良い前作『エンバンメイズ』も読もうと思います。

以上、今年買って良かった漫画の話でした。
ハッピーメリークリスマス~~~🎄


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