小説感想 小川国夫 「求道者」
小川国夫自選短篇集
あじさしの洲 骨王
短篇集に含まれる
「求道者」
作者の夢をみた体験から
書いたとあとがきにある。
文章や言葉つかいに、難しさはない。
が、たびたびその言葉と言葉の
間に立つ「言葉」に、はたと、読み進める
のをとめてしまう。
情景描写や心象描写は、写生的で
センテンスも短く、簡潔であり
難解な表現はないのだ。
にも関わらず、わからないではなく
読み手が、とどまってしまう。
すると、小説内の文字が
立体的に「立ってくる」
(あぁ…そうやったんか…)と。
読み飛ばそうと思えば
スラスラ読めると思う。
読書にやっつけ読書はないと思うが
読み飛ばすには、もったいないと思う。
故郷の静岡藤枝、大井川、安倍川河口
作者が、自分の経験したことを
自分の言葉として、右から左に流し
読者を立ち止まらせる
作品だと思う。
出だし、中盤、山場、オチ
或いは、起承転結
それらがなくとも
心にくっきりと輪郭が浮かびあがる
小説だ。
そして、何度読んでも
読み飽きることのない作品(集)
とも思う。