今日歯医者に行った。それだけのはずなのに。

歯医者に行った話
正直、意味を見出せなかった。生きる意味を。
だから、歯医者に行く意味も見いだせなかった。 だけど、なんでだろう。 足は止まらず、気持ちは後ろを向いているのにそこに進むのを止めることができなかった。


そこは、こじんまりとしていながらそれを感じさせない病院だった。(1kの部屋を2つ斜めに繋げたような構造。)
診察書を渡された。 持って、控えにある椅子に座ろうとすると「ここでいいですよ」と初老の女医さんに勧められる。 それに従い女医さんの目の前に座り診察書に書き込みを行なった。
僕が文字を書く間彼女は僕の一挙手一挙種を見ていた。 不思議と嫌な気持ちにはならなかった。(女医は彼女1人だけ)


6時予約のカウンセリングから10分ほど遅れて先生はやってきた。 その間、女医さんは奥の治療室へと行ったり来たりを繰り返していた。 いつもこんな調子なのだろうか?


普通、カウンセリングといったらそれ専用の部屋みたいなものがあるものだと思っていたけど受付で実行。病院に入り目の前にある受付で、だ。
少し意外感を覚えながら先生と他愛もない話…

では済まなかった。 おかしい。 何かが、おかしい。 ここは歯科病院じゃなかったか? 何度も疑った。 

「気になることがあれば、なんでも言ってください」
これは、歯に関することなのだろう。 普通ならそう思う。 まさか、なんでも言ってくださいと言われたからと「実は、鬱病で悩まされていて…」なんて切り出すバカはいない。ここは歯科だ…歯科のはずなんだ。

僕は、直感的にその質問は本当に”なんでも”なのだと悟った。 だけど、だからと言って言い出せるものでもなかった。 今までにきた質問なんて精々「腰が痛い」「夜眠れない」「うつ病なんです」 程度のことなのだろう。 そう思った。 だから、今日僕は自殺を本気で考えていることについて、打ち明けることはなかった。
打ち明けなかったはずなのに,全てを見透かされている感覚がそこにあった。不思議と嫌じゃなかった。 同時に、また希望を抱いてしまった。 ダメなのに。 自殺者が一番持ってはいけないもの、それは希望なのに。

カウンセリングをして、少しはを見てもらってその日は終わった。

この日、僕の中で何かが変わった気がする。
でも、やっぱり死は未だに仁王立ちでそこに立っている。 僕は,強いぞ。歯医者さん…
負けない…

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