スペラティヴ・リバー・ディセント
船に乗せられたV8エンジンの唸りが幾重にも聞こえる。
5番船の船頭、三代目奥羽助六は法被に褌姿で仁王立ち。
ヨーエ サノ マッガショ エンヤ コラマーガセ
憤怒の形相をした船頭が一斉に舟唄を歌う。
晴れていたはずの峡谷に暗雲が立ち込める。
ヨイトコラサノセー
V8エンジンの叫びは最高潮。
船に乗る客のボルテージは限界。
川下りの時間は3分。
最後まで船に残っていられるのは、1艘50人中2人と言われる
危険な川下り。
しかし、これぞ最高の娯楽と狂信する者は後を絶たない。
急降下、落雷、熊、刈払機、様々な困難の先、得られるのは生の実感のみ。
助六は2番船船頭、八代目月山熊八を睨みつける。
今日こそは、今日こそはお前の先を行くと、
射殺すような視線で睨みつける。
エンヤコラマーガセー
瞬間、雷光と同時に、2番船が爆発炎上した。
【続く】
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