UK vs US: Fancy an English Battle?でのノンバイナリーの説明が微妙すぎた件について【追記あり】
久しぶりに頭にきたので!っつっても、それを解消できるかなーと思ってふわっといろいろ言ってみたりはしていたんですが、それだけでは解消できなかったために、noteで気が済むまで(まじで気が済むまで)文章にすることにします。あと誤解してほしくないんですが、ミッキーさんのことはちゃんと推してます。推してますが、頭にくるもんは頭にくるって話です笑。故に、普段のようなマジョリティ様接待用の文章にはなってませんが悪しからず。
#spinukus
これは、UK vs US: Fancy an English Battle?のLesson49での話です。宇多田ヒカルさんがカミングアウトをしたというニュースを紹介した回。
ノンバイナリーの定義として「自分の性自認と性表現が、典型的な男性と女性といわれるジェンダーに当てはまらないことをいう」と紹介し、「なんか男性でもないし、女性でもないし、まあどちらでもないかな?みたいな感じなんですかね」という受け答えがありまして。
たしかに定義だけを見ればあってはいるんですが、しかしこれをそのまま紹介することが適切なのかというとそうではない、というのが個人的な見解。なぜなら、定義をそのまま紹介しても、それがなにを意味しているかは伝わらないからです。なんなら一般に誤解を招く可能性すらあると思ったのでなんだかなぁと思っておりました。
それにしても、英語ネイティブで(おそらくZ世代くらいの方で)Pride Month知らないってどういうことよと思ったし、英語でLesbianよりも(広く同性愛者を指す意味での)Gayのほうが使われやすい、みたいなのもその言い方は余計にstigmatizeしている感じがするというかちょっとなぁと思ったポイントだった。
Lesbian
A woman whose enduring physical, romantic, and/or emotional attraction is to other women. Some lesbians may prefer to identify as gay (adj.) or as gay women. Avoid identifying lesbians as "homosexuals," a derogatory term (see Offensive Terms to Avoid).
というのも、実際に「Some lesbians may prefer to identify as gay (adj.) or as gay women. 」なのって、Lesbianにネガティブなイメージがあったり(特にネット上だと性的な消費の対象になってしまうこともある)、LGBTQ+のなかでもっとも特権的な立場がシス男性Gayとか、そういうこととまったく無関係とは思えないし、日本語圏だとレズビアンと名乗ることに躊躇いがあったけどあえて名乗るようにした、みたいな人もいたりで、単純にGayのほうがよく聞く的な解説だと不適切と思うんですよね。あんまLesbianって言わないほうがいいのかな?と視聴者に思わせることが当事者の方々にとって良いこととは思えないというか。(レズビアン界隈には疎すぎるので大雑把すぎる理解だし、問題があれば関係各位よりご指摘いただきたいです🙇♂️)
それから、3人称単数のtheyについて扱うなら(2019年のword of the yearの話もいいけどさ:あのニュースはリアルタイムでテンションあがったよね🥳笑)、使い方についても紹介しないと不親切すぎるし、なにより謎に混乱を生むことを言い出したとか思われかねないじゃないですか......。
当人が男性/女性としてのアイデンティティを持たない、あるいはhe/sheを使わないことを希望する記事では、
・代名詞の代わりに名前を使用したり、可能な限り言い換えること
例:a person(ある人)、the victim(被害者)、the winner(勝者)
・三人称単数の代名詞として theyを使う場合は本人の希望によりと説明すること
・その際、 2人以上を意味しないように表現に注意すること
と、いくつか条件があります。
さらに、使用はあくまで限定的、代替表現があまりにも違和感がありぎこちない場合のみ。その理由として、多くの読者にとって、単数形のTheyは馴染みがないため、とあります。
そもそもハリーさんが、ミッキーさんに教えてもらってtheyのこと知ったとか言ってたのがもうまじか〜(まあ日本のメディアで仕事する分には知らなくて困らないのもわかるけどさ)って感じだし、そこを知ってたミッキーさんはやはり信頼に値すると捉えるべきなのか、人前に立つ仕事してて会話がまさかのその次元ですかと捉えるべきなのか、ちょっともうよくわからんね。
日々のなかでも、知らなくてもしょうがないとか当たり前とか、あるいは当事者が矢面に立っていちいち説明すべきとかそういう圧力めちゃくちゃ強いんですけど(それでいて理解者ヅラする奴が多いから笑えるんですけど)、無責任にふわっとしたこと言ってinclusiveっぽいスタンスとったつもりになるのは楽でいいですよね〜〜〜〜〜☺️と思ってる。それで賃金発生するんだから有難いね。最高な国だね、ジャパン。
そんなこんなでもう全体的にひどかったというか、へんなところで肯定的に大ごとにしつつ問題含みなところは小ごとにされてるなーという印象を受けました。
この記事を書くために仕方なしに3回目を聞いたけど(批判するためには聞くしかないので)、どれくらい無理だったかというと、1回目聞き終わって即刻Spotifyでのフォローをやめたくらい笑。今はTwitterの番組アカウントもミュートしてます。RTとかでTLに現れるのが嫌なので。いわゆる、顔も見たくないレベル。
それもこれも俺がZ世代的な文化の影響を受けすぎているからかもしれないですが、ナイーブすぎてゴメンナサイでした。最初に聞いたときは、当事者なんて所詮非当事者のエンタメの「ネタ」でしかないんだろうなぁとか思ってしまって、ものすごく落ち込んだ。
なお、日本のバラエティかなにかで(わんちゃん報道番組でも)こういう扱い方になってもこんな風に怒ったりはしません。まったく期待していないので、まーたやってるのか、と思うだけ。リサーチできる人がやるのはさすがに勘弁してほしいから頭にきただけ。
・ノンバイナリーの話をする前にシスとトランスの話をするね
そんで、じゃあどう説明すればよかったの?という話になると思うので、それをつらつら書いていきたいと思います。
まず見ていただきたいのが以下の画像。ここでは、シスジェンダーとトランスジェンダーの定義を確認します。すなわち、①出生時に割り当てられた性と②性自認/性同一性が一致するのがシスジェンダーで、一致しないのがトランスジェンダーだということ。そんなの当たり前じゃん、知ってるよと思う方が大半かもしれませんが、とても重要な点なのであえてここから説明します。
ちなみに、これがわかっていると、異性装とトランスがごっちゃにならないかなぁと思います。たとえば、マツコ・デラックスさんはゲイの女装家(昔はドラァグクィーンをやっていたとかいろいろあるけど、そこは割愛するとして)であって、トランス女性ではないし、はるな愛さんはトランス女性なわけです。
そういや先日、アメリカ人の方から最初に日本に来たときテレビに当事者タレントが出演していたのを見てアメリカよりも進んでいるのかも!と思ったら違った、なんで?みたいなことを聞かれたんですけど、日本では当事者であることを「ネタ」にすることが求められるというか、属性のひとつとしてふつーに持っておくというのがとても難しい(もちろん比較的若い世代ではそういうあり方をしようとされている方々がいるのも存じ上げておりますが)っていうのはここでも申し添えておきたいですね。テレビに「LGBT」が出てるから日本は寛容、などという誤った認識はわりと一般的な気がするので。あと、レズビアンやトランス男性で著名なタレントがいないというのも非対称性だなぁと思っています。
・広義のトランスと狭義のトランス
で、この①と②が一致していないトランスジェンダーというと一般的には、トランス男性/トランス女性が連想されると思うんですが、こうしたバイナリーのトランスだけがトランスジェンダーなわけではない、というのが今回したかった話。
以下の画像の通りで、バイナリーのトランスと区別をするためにノンバイナリー(「自分の性自認と性表現が、典型的な男性と女性といわれるジェンダーに当てはまらないこと」)があって、さらにそのノンバイナリーのなかに無数のアイデンティティがあるわけです。※謎にお手製の😂画像では、無数のアイデンティティから一部のみ紹介しています。
スピナーの放送では「自分の性自認と性表現が、典型的な男性と女性といわれるジェンダーに当てはまらないことをいう」とだけノンバイナリーを紹介しており、その紹介のし方ではこの構造が適切に理解できるとは思えなかったし(まあマジョリティ向けのエンタメにおいて適切なマイノリティ理解など求められていないのかもしれんが)、下記でも紹介する通り、「ノンバイナリー」という言葉だけではその人のジェンダーは判断できない、という事実が見過ごされてしまうなぁと。そこが頭にきたポイントでした。男性でも女性でもないとかいうふわっとした言い方で説明した気にならないでほしいし、次に述べるように医療の対象にもなっているのでその人がそう「感じている」だけの話と解釈する余地を残しておくのはしないでほしかった。
・当事者向け(?)プチ情報とか
ここは主に関係各位向けになってしまうかもしれないけど、いちおう。日本では「性同一性障害」という枠組みのなかで(これもそろそろ変わるらしいけど。Thanks to DSM)バイナリー、ノンバイナリーともに医療の対象となっており(ホルモン治療は保険適用外)、診断書を取得すれば改名もできます。というか、改名にしろホルモン治療にしろ各種オペにしろ、基本的には診断書ありきな状況なので、それらが必要な人はまず診断書を取得するのがいいのかなと思います。
あとバイナリーでもそうなんだけど、社会におけるジェンダー観と一致しないことをトランスなのかも?と考えて急にオペしちゃう人が稀にいるようなんですが、急にオペするっていうのはまじでおすすめしません。これはほんとReal-life experience(RLE)基準で考えたほうがいいと思う。まずは服装や髪型を変えてみるとか、そういう小さいことから始めて、周囲に自分の性自認と同じ性別として扱われて、それで違和感がないかはきちんと確かめたほうがいいです。
そして話を診断書に戻すと、自分のジェンダーの感じ方は気のせいなんじゃないかとか、自分は頭がおかしいんじゃないかとかいう悩みがある人もいると思うんですが、診断書を取得できるとなんとなく楽になったりするかも?と思います。少なくとも、他人からアレコレ言われることにかんしては相手が間違っていると思えるようになるのでね。利用できるものはどんどん利用していくのがいいと思うよ、本当に。
診断書を取得するだけでも専門のクリニック(ジェンダークリニックと呼ばれるところ)で数ヶ月以上の通院が必要なので、例えば就活する前に改名しておきたいとかそういう場合は、時間的に余裕を持って改名することがおすすめかな。あと、急に改名して周囲に発表するんじゃなくて通名使用をしておくとスムーズかも?と思います。大学とかなら性自認に基づく通名使用が認められているところが多い(?)と思うので、事務に相談するのが🙆♂️
さらにこれは個人の見解だけど、学生さんとかは、アウティングしないでって言ったのにアウティングされたり、シスヘテロだったらしなくて済む経験をすることになったらどんどん大学にハラスメントで訴えちゃっていいと思うよ。まあ他のハラスメントもそうなんだけど。おかしいことにはおかしいと言っていいと思う。とか言いつつ、ハラスメントで訴えて結果を得るのにもコツがいるようなところはあったりするし、なによりクソほど疲れると痛感しているので、なんだかなーって感じではあるんですが。
・ノンバイナリーのマイクロラベルはこれを見てね
マイクロラベルをすべて覚える必要は一切ないと思うものの、ノンバイナリーという概念を捉えるのにマイクロラベルがあることを知っておくのは重要なのでご紹介しておきます。
「ノンバイナリー」という単語を聞いただけでその人のジェンダーを理解したり、推測したりするのは不可能です。問い詰めるのもダメです。自分で学びましょう。
ほんとこれ。シネマンドレイクさん👏
ちなみにですが、俺の独断と偏見で覚えるべき事柄を強いて挙げるとすれば、日本語特有の用法でノンバイナリーをXジェンダーと呼んだりすること、あとはマイクロアイデンティティのなかではGenderqueer, Agender, Bigender, Genderfluidあたりを知っていれば(それ以外は必要に応じて調べていけば)日常のなかで困ることはほぼないんじゃないかなぁと思います。
そんなわけで。そろそろ退散🥳こういう言い方をしても傷付かないでほしいんだけど、でも、本当に今は2021年ですか?ってくらいクソなことばっかな世界だなぁと思ってます。っていうか、良い具合に消費したいだけなら肯定的っぽい素振りとかすんなよ、というのが本音です。マジョリティ様にこういうことを言うとスネられちゃってマイノリティを「理解」して「もらえる」機会がなくなる(笑)ので実生活ではクソほど我慢してるんですが、メディアを通してこういうことをされるのを黙ってやり過ごして差し上げる義理も特にないので書きたいことを書きました。
とはいえ、世の中にあるLGBTQ+を理解しよう系のコンテンツはひどいものばかりというわけではなくて、きちんと良質なものはあります。SHELLYさんのYouTubeはめっちゃいいと思います(当事者YouTuberはセンセーショナルなサムネだったりマジョリティの興味を掻き立てるような内容なので基本見ない)。
まじでちょっとでもマシな世界にできるといいね、っていうかしていきたいね。怒るのもやりすごすのももう疲れた。世の中がクソすぎてっていうか、クソすぎるものが跋扈してても平気な世の中で、こんなところ生まれてこなきゃよかったと思うもんね。思うんだけど、かなしいかなすでに生まれてきてしまっているので、せめて他の誰かが同じような気持ちにならなくていいよう、飛んで火に入る夏の虫でいようと思っています。
【追記】
レズビアンという表現にかんしては、以下の例をご紹介しておきます(太字は筆者=俺による)。
「私が映画のプロモーションにおいて「レズビアン」と言っても、記事では言葉が変えられていることもありました。人々がその言葉を使わないことに気づき、そして分析しています。『燃ゆる女の肖像』は間違いなくレズビアンのイマジナリーであり、それは包括的なものなのです」
以下が元ツイート。