夏場の仕入れオークションの現場から ー大島紬は重いのよー
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本日のお題:夏場の仕入れオークションの現場から ー大島紬は重いのよー
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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いつもメルマガのご購読、ありがとうございます。最近通い始めた整骨院の治療法がどうも私の腰痛によく合っているようで最近腰痛が少しマシになってような気がします。このまま痛みがなくなればいいんですけど30年来の腰痛ですのでどうなんですかね…。
当店は8月11日から15日まで夏期休暇を頂戴いたします。この間、注文はお受けいたしますがご入金の確認や発送、お問い合わせへの回答等は8月16日以降となりますことをご了承ください。
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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。
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■夏場の仕入れオークションの現場から ー大島紬は重いのよー
先週28日金曜日は恒例の仕入れの日でした。リサイクル着物というと一般消費者から買い取ってそれを販売すると思われるのですが、当店に限って言えばそれはごく一部なんです。一般消費者さんからの買取はずっとタンスの中に入れっぱなしで虫干しもしておらず、状態に難のあるものが多くあまりいいものが手に入らないため、主な仕入先はリサイクル品を扱っている卸業者になります。
このメルマガの読者さんでしたら「えー!私はタンスの中に入れっぱなしにしないでどんどん着るよ!」という方がほとんどだと思うのですが、私の経験上リサイクル店に持ち込まれる着物のほとんどがお母さん(またはおばあちゃん)が昔から持っていた着物が大部分を占めておりまして、50年前程度のものは当たり前、下手したら100年ぐらい前のウールの着物などがゴミ袋にぐしゃぐしゃに詰められて持ち込まれて「うーん、ごめんなさい、これは買い取れません」ということの方が多いのです。
もちろんリサイクル品なので、全ての商品は一旦消費者さんに渡ってから、何らかの事情で手放され、そして当店の元にやってきます。私もあまりちゃんと聞いたことはありませんが、買取業者さんのところに持ち込まれた着物は一旦大手の買取業者に流れ、そこで大部分の着物は商品にならないとして廃棄され、まだ着用できるわずかな着物が再び当店の参加している仕入れ会場に持ち込まれる、といった感じでしょうか。
ちなみに某大手リサイクル業者さんは1日に廃棄する量は4トントラック何台分にもなるとかいう話を聞いたことがありますが、本当だとしたら今当店にやってきた着物はそれら多くの着物のなかのわずかな上澄み部分で、その下の方にはものすごい量の着物が廃棄されているんだなぁ、と着物好きとしては少し感慨深い&複雑な気分になります。
まあそんなわけで先週金曜日も行ってきました。
7月、8月というと私たちリサイクル着物店にとっては非常に厳しい季節です。夏物は流通している量はかなり少ないのは想像がつくと思います。新品着物の業界でも夏物を求める方はかなりのマニアで購入すれば当然着用するため(注)、袷に比べて状態の良いものは少なめです。当然汗もかきますし傷みやすい条件が揃ってますしね。
注:何度かこのメルマガでも書いておりますように、リサイクル着物の中でも状態の良いもの、特にしつけ糸がついているようなものは、こういう言い方をすると失礼かもしれませんが「それほど着物が好きじゃない方が展示会の雰囲気に乗せられて購入してしまった」というものが多く、そういう着物は仕立てられた後もタンスの中に入れっぱなしになってほぼ未着用品の状態の良いものが多いのです。リサイクル屋さんとしてありがたくもあり、せっかく購入されたのにと少々残念でもあり…。
毎月の仕入れ会はオークション形式でして全国からリサイクル店が集まり、1枚1枚着物を広げて値段をつけて競り落としていきますが、やはり7月8月は暑くて売り上げも落ち込む季節で参加者が少なくなります。先月(6月)はまだ多かったのですが7月になりますとクッソ暑くて仕入れもいまいち盛り上がりません笑。売り手側も需要がないと値段が上がらないのを知っているためいつもよりかなり少ない量の出品です。
新品の呉服店でしたら夏場は浴衣の掻き入れどきなんですけどね。楽天市場の出店者は自分の所属するジャンルの上位10店舗の売上(店舗名は匿名)を見ることができまして「よそはこんなに売ってるよ?」的なプレッシャーをかけられるのですが(汗)、それを見ると通常の月の2倍、3倍の売り上げを取っている店も多いです。おそらくこれらの店は浴衣を頑張ってる店なんでしょう。だったらあんたも浴衣扱ったら良いやん、と言われそうですが、何度かこのメルマガでも書いておりますようにリサイクル業界で浴衣を扱ってる店って少ないんですよ。
今回のお題とは外れますので詳しくは割愛いたしますが、浴衣は色々と資金力が必要でして、ただでさえ市場の小さな呉服業界の中のさらに小さなリサイクル着物店が扱おうとすると意外とハードル高いのです。先週のオークションでも少し浴衣が出品されましたがほとんど落札されず「あんた浴衣触っとんのかいな、怪我せんうちにやめときや!(注)」なんて言われてました。
注:翻訳すると「あんた浴衣扱ってるんかいな、売れ残ったり痛い目遭わないうちにやめときや」という意味。
前置きが長くなりました。そういうわけで7月8月はどちらかというと低調気味の仕入れの現場ではありますが、逆に言えばオークション形式ですのでライバル(というか商売仲間なんですが)が一歩引いているときこそ安く落札できるチャンスです。今仕入れても売れる時期でも無いしなぁ、と一瞬躊躇してる間に声を上げて安く落札することができます。オークション形式なのでその上に乗っかればいいんですけど、みんな仲のいい同業者なので一人が「買う!」というと周りは「あいつが買うんなら別に価格上乗せして買うこともないわな」という感じでオークション形式とは言え価格がどんどん競り上がるということは意外と少ないです。
これは売り手側の方もよくわかっていて、通常は会場の中に所狭しと置かれているダンボールが昨日はいつもの半分ぐらい。価格が競り上がらない時に出品しても損するだけなのでかなり出品を抑えているのでしょう。
そんなわけで先日の仕入れ会は例年の夏と同じく低調気味でしたが、ダンボールいっぱいの大島紬が放出されたんですよ。大島紬は昭和の時代に卸問屋や販売業者と一体でセール企画を組んで集中してかなりの売り上げをとりました。「セール企画を組む」というと現代ではあまり良いイメージがないかもしれませんが、昭和の時代ですごい勢いで着物需要がなくなってきた時代です。特に大島紬のようなカジュアル用の着物は急速に市場が縮小していたのでしょう。そこに「こうすれば売れるよ、私たちがこうやって売るよ」という企画提案があれば当然それに乗るでしょう。
かくして大島紬はおそらく紬の着物の中で一番の売り上げとなりました。それはそれでおそらくは喜ばしいことだったのですが、残念ながらその後企画商品として狙い撃ちされ、値崩れを起こし、現在でも価格は上がっていないどころかむしろ下がっているような状態です。それから何十年も経ち、当時の大島紬がリサイクル市場に放出され、現在はダブつき気味になっています。まあ、リサイクル市場でダブつき気味であったとしても新品市場とはまた違うため、産地側としてはそれほど気にも留めないのかもしれませんが。
で、その大島紬なんですが、先日のオークションで大量に出たんですよ。いくら値崩れしていると言っても新品はやはりある程度の価格はしますし、紬の着物の中でも名前の通った「着物ファンならいつかは欲しい」という憧れの品には間違いありません。というわけで出品された瞬間に「全部買う!」と買い占めました。
面白い柄のものも普通の柄のものも色々、サイズも色々(いちいち測らせてもらえない)なのですが「まあ多分大丈夫やろ、いや、大丈夫かな、知らんけど」的なノリです。中身も見ずにサイズもわからず買うから手間がかからないため安いのであっていちいち寸法を測ってもらったり「この柄は欲しい、この柄はいらない」なんて選り好みしたら価格が跳ね上がっちゃうんですよ。変な柄のものも、ちんちくりんのサイズのものも全部買って売り切る自信のある人だけが安く買える…というとカッコいいですね、わはは。でもこういうときに実店舗での販売じゃなくて見る人が多いネットショップは比較的有利なんですよね。最終的にはとにかく安くすればなんとか売り切ることができるので。
競り落とした山盛りの大島紬を運んで自分の箱の中に入れると…重い。とにかく重い。忘れてた。大島紬は重いんです。昔から腰が弱くて腰痛に悩んでいる私にはちょっときつい重さでした。ああ、そういやこんなこと昔よくやったよなぁ、昔よく展示会をやっていた時に大島紬の入っている反物は重くて運ぶの嫌だったなぁ、と思い出しました。
長くなりましたので来週に続きます。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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