訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシかその2
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本日のお題:訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシかその2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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■訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシかその2
今週は先週に引き続き「訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシか」のお話です。本来はタブーとされていた訪問着に羽織を合わせることについて、最近SNS等で散見されるようになってきまして、時代は変わってきたなぁ、と思い今回のシリーズを書かせていただいております。先週分をまだ読んでおられない方は「note 呉服のきくやてんちょ」で検索していただければ1番はじめにヒットしますのでそちらを先にご覧ください(ショッピングモールの規約上URLは掲載できないのでお手数お掛け致します)。
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先週予告致しておりましたように、ツイッターでアンケートをとりましたその結果を発表いたします。総投票数651票ですのでそこそこ正確な数字が出ていると思います。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございます。
アンケートでは以下の4つの設問を設定致しました。当初は訪問着に羽織を合わせるのがOKかNGかだけを投票していただこうと思ったのですが、訪問着に羽織はおそらくもう許容されていることが予想できたのでそれだけでは面白くないと思って留袖+羽織も設問に加えました。
1・訪問着+羽織はナシで留袖+羽織もナシ
2・訪問着+羽織はアリだけど留袖+羽織はナシ
3・訪問着+羽織はナシだけど留袖+羽織もアリ
4・訪問着+羽織はアリで留袖+羽織もアリ
(ツイッターの1アカウントに対し1回投票可能)
結果から先に発表いたしますと、なんと4番目の「訪問着+羽織はアリで留袖+羽織もアリ」が49.9%も得票してぶっちぎりの1位になってしまいました。詳しい内訳は下記の通りです。
訪問着+羽織はナシで留袖+羽織もナシ 26%
訪問着+羽織はアリだけど留袖+羽織はナシ 20.9%
訪問着+羽織はナシだけど留袖+羽織もアリ 3.2%
訪問着+羽織はアリで留袖+羽織もアリ 49.9%
これはほんと驚きました。先週にも書いたように羽織はもともと男性のもので、女性は芸者さんが着始めたのが次第に全国に広まっていったものですから本来女性が着るものではなく、フォーマルにも使えないというのが今までの認識でしたがこれはもう認識を改めなければならない時期に突入してますね。
なによりも留袖に羽織もアリと考える方がほぼ半数というのが衝撃的な数字でした。留袖は五つ紋付きの最高の礼装であり、羽織は家紋がついていたとしても一つ紋ですので五つ紋から一つ紋にカジュアルダウンすることになり、今までの感覚ではあり得ない合わせ方だったのですが、これも許容されるようになってきたようです。
このアンケートにいただいた意見をまとめてみると、訪問着をカジュアルに着るという方が目につきました。昔と違ってカジュアルとフォーマルの境目が曖昧になってきて本来フォーマルである訪問着の守備範囲(?)が広くなった結果、羽織を合わせることができるようになったのかもしれません。
もう一つ目立った意見は会場内では訪問着に羽織、留袖に羽織どちらも着ないけれど、道中ではちりよけや防寒の役割として羽織を着るという方。今まではそれらの役割として着るのは道行コートや道中着だったのですが、羽織の役割も今までと少し違ってきたようですね。この設問ではちょっとわかりませんが、訪問着+羽織はアリで留袖+羽織もアリに投票していただいた方の多くは「会場内では着ないけれど道中では羽織を着るのはアリ、という意見でしたが、これから先10年、20年と経っていくとおそらく会場内でも羽織を着る方が多くなってくるのでは、と予想しています。
以前から何度かこのメルマガで書いておりますように、着物の一番の全盛期は昭和40年代であり、そこから生活様式の変化によって急速に右肩下がりとなりました。私の感覚では昭和から平成に移り変わる時はまだバブルの残り香があったため展示会等は盛況でしたが、生活に密着した必需品としてお召しいただいていたかと言われると全くそうではなく、昭和の時代で「日常生活としての着物」は終わってしまったと考えております。
お嫁入り時に着物一式を持たせるとか結婚や引越しの挨拶は訪問着を着て、と言ったような風習が姿を消しました。昭和の時代は何かイベントごとがあると着物を着て礼を尽くす、といった認識でしたが平成になりあらゆることが簡略化されるようになりました。日常どころか、非日常の人生の節目のイベントでも着物を着ることが少なくなったのが平成です。
かたやインターネット。まだ平成初期はインターネットは一般的ではなく、私は平成の初めごろに大学を卒業し、当時持っていたワープロ「ミニ書院」に2400bpsのモデムをつないでパソコン通信を始めたころです。何言ってるかわからない方も多いと思いますが(笑)、当時は今のような画像や動画がバンバン流れるインターネットではなく文字だけのコミュニケーションである「パソコン通信」というのがありました。
速度も先ほど書いたように2400bps…といってもどんな速度かわからない方も多いと思いますがスマホのギガが無くなって低速になると大体どこの携帯電話も200kbpsになりますよね。200kbps=200000bpsなので低速時通信の約80分の1の速さです笑。画像や動画がない文字だけのコミュニケーションだったし、他に速いのも知らなかったのでここまで超絶遅くてもそれほどストレスじゃなかったんですけどね。
パソコン通信の中でも着物の掲示板ってのがありましてですね、富士通系のNIfty-serveに「着物フォーラム」という着物の掲示板がありました(もう一つ大手パソコン通信にNEC系のPC-VANというのがあったんですがこちらには着物掲示板はありませんでした)。現在ツイッターなどでやり取りさせていただいている方はここで知り合った方も多いです。
一応通信の世界で着物の話題は細々とあったものの完全にマニアの世界で、今までのように挨拶回りで着物を着るといったこともなくなり、親から子へ、子から孫へと受け継がれてきた着物の様々な風習はこの平成初期で一旦途切れたのではないでしょうか。
そして今、インターネットが盛んになり、なんとなくインターネットをしていたら着物ファンのサイトや素敵な着姿を見つけて「私も着てみたい」と興味を持ちリサイクル店などに足を運びます。特に親から着物の着方等を教えてもらうこともなく(すでに親も着物の着方なんてわからない時代に突入している)もちろん訪問着や留袖に羽織を合わせないなどといったルールが受け継がれることなくどんどん変化していきます。昭和から平成にかけて、今まで受け継がれてきた着物の風習が途切れてしまったと言えるかもしれません。
かくして令和に入った現代ですが、様々な着物の風習が驚くべき速度で変化しているのを感じます。先々週の白の長襦袢もそうですし、今回の羽織と訪問着の関係もそうです。個を大切にするという時代背景も相まって、今までタブーとされていたことが許容されるようになり、自由度がどんどん増えていっているように思います。
これが悪いなんてことは一切申しません。いつもいうように服飾文化は自然に変化するものであり、呉服業界が「それは違うよ」と言ったところでその流れは変えられません。服飾文化は社会様式の変化とともに変わっていくものであり、むしろ変化するのが当たり前の流れと言えるでしょう。有史以来、グラデーションのように少しずつ変化してきたので「勝手に変えるな」といわれても「じゃあどこまで遡るんだよ」という話になってしまいますしね。
これからもどんどん変化して30年、40年と経つと今のルールとは全く違っていても不思議ではありません。多分私は呉服業界で働くのはせいぜいあと20年ぐらいかな、なんて思ってますが、業界から足を洗って新しい情報を取り入れていないのに「そんな着方は間違ってる!」なんてぷんすか怒ってるクソジジイにはならないように気をつけたいと思っております笑。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
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