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展示会の功罪と希少織物

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本日のお題:展示会の功罪と希少織物
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■展示会の功罪と希少織物


今週のお題は「展示会の功罪と希少織物」です。ゴールデンウイーク中も相変わらずツイッターをぽちぽち触って遊んでいたんですが、そんな中ちょっとした質問をいただきました。要約いたしますと着物が欲しくて大手チェーンになんとなく見に行ったら強く強くお薦めされて数十万のローンを組んでしまい、そんな高いものを買ってしまった罪悪感やら無理やり買わされたという嫌な思いから、せっかくの着物に袖を通すことができず、どうしましょうというご相談でした。

大手チェーン店の販売員の方々も着物が好きでプロ意識を持って働いている方は大勢いらっしゃいますが、一方でチェーン店は店ごとのノルマ、販売員ごとのノルマがあることがほとんどですので、ノルマ達成のために強引な販売になることはありうるかもしれません。

このご連絡は常設の店舗でのお買い物だったようですが、展示会も少し気をつけなければなりません。展示会というと着物を飾ってお客様に見ていただくだけのように聞こえますが、実際は「展示販売会」であって主催者側は販売するのがいちばんの目的ですのでどうしても販売に力が入ってしまう面があるのは否めません

なぜ展示販売会をするかといいますと、イベント感をだして盛り上げて購入してもらいやすいようにするというのはもちろんなんですが、日程を区切ると商品を集めやすく、お客様にも多くの商品を見てもらえるという側面もあります。

私は呉服業界しか見たことがありませんので他の業界のことはわかりませんが、呉服業界は他の業界よりも商品の貸し借りが頻繁に行われているような気がします。着物は比較的単価が高い割に呉服店は小資本の店が多いので留袖や色留袖、訪問着から紬、小紋、長襦袢やコート類、それぞれお客様が満足できるほどの色柄を多く取り揃えるというのは難しいです。市場としても小さく在庫の回転も遅いため、あまり多くの商品を持っているとすぐに長期在庫品となってしまいます。

振袖専門店を除く呉服店は固定客がほとんどなので、お得意さんが着物が必要な時には前もって「こんな着物欲しいから用意しといて」と連絡をいただくことが多く、呉服店側は在庫として常に商品を持っていなくても仕入れ先から借りて販売することが可能なので多くの在庫を持つ必要性を感じない、という店も多いかもしれません。

まあそんな感じで小資本の店であまり在庫を持っていない呉服店でも商売を続けることができるのです。

先ほどの話に戻りますが、ある方から「展示会やイベントなどがあるからその時に販売を頑張ろうとして強引な販売になるんだ」という意見をいただきました。この方、なかなか鋭いところを突いているのでもしかすると少し業界におられた方かもしれませんが確かにそういった面はあるとは思います。

先ほど書いたように、小資本の小さな店ではなかなか多くの商品の在庫を持っておくことは難しいです。お客様がよりどりみどりで満足できるように様々な種類、色、柄の着物を集めて持って在庫にしようとすると億単位のお金が必要になってくるでしょうし、それを保管する場所も必要で非常にハードルが高いです。しかし展示会ですと取引先から商品を借りて販売することができるのでとてもありがたいのです。

これは3日間から1週間程度の展示会期間を決めて集中的に販売し、ある程度の売り上げが見込めるからこそ多くの商品を借りることができるのであって、「いつお客さんが来られるかわからないけれど店頭の在庫にしておきたいから留袖、訪問着、紬、小紋30枚ずつ貸してよ」といっても「うちもその商品売っていかなあかんのにアホなこといいなさんな。金払って仕入れなはれ」と言われるでしょう。

とはいえ、展示会というとどうしても店側は集中して売りたいので、消費者側としてはつい二の足を踏んでしまいますよね。会場に入った瞬間、販売員がさささっと寄ってきて横にピッタリついて離れず、あの着物はいかが?この着物はどう?と聞かれるとゆっくり見られない、と敬遠されているという話もよく聞きますし、実際この10年ほどで会場を借りての大きな展示会は採算が取れず激減しているようです。

この展示会ができなくなっているという状況に私はちょっと危機感を感じています。もし展示会がなくなったらどうなるでしょうか。いや、展示会がなくなったら、というよりも商品を借りられなくなったらどうなるか、といったほうがいいかもしれませんね。

先ほどから何度か書いているように展示会は資本力のない小さな店がさまざまな商品を販売することが可能になる重要な手段の一つなんです。もちろん呉服屋という商売は店主の目利きで仕入れてお客様に販売していくのが基本ではありますが、先ほどから書いているように小資本の店にはそれは難しいため、期間を決めて集中して販売できる展示会は非常にありがたい販売方法なのです。

しかし、それが出来なくなると、冒険したような柄は敬遠されて無難な色柄の商品しか仕入れられなくなってしまいます。そして一番の懸念が希少織物が売れなくなるのではないか、ということです。

日本には様々な希少織物があります。沖縄の宮古上布、芭蕉布などはその最たるもので1反300万円や400万円は当たり前の世界です。お客様に見てもらおうと思ったら1反だけというわけにはいきませんので少なくとも数反持っておかなくてはならず、本気で在庫として揃えると1000万円ほどのお金をずっと店のタンスの中に寝かしているのと同義になります。

こんな価格のものを数反在庫に持っている店はかなり珍しく、おそらく京都の大きめの呉服問屋でも持っておらず、注文があった時に織元に連絡して送ってもらうという方法での販売がほとんどではないでしょうか。というわけで在庫として小売店に買ってもらうことが難しい希少織物にとっては、展示会は大きな販売の機会であり、なくてはならないものなのです。沖縄展とか希少織物展とか、ご覧になったことがある方も多いと思います。

お客様を無視した強引な販売については一切擁護いたしませんが、展示会という販売方法がなくなってしまうと希少織物やちょっと冒険した珍しい柄の着物は作りにくくなってしまいます。珍しい柄のものもハマるお客様にはハマって売れるんですけど99%のお客様には合わないことが多いですからずっとタンスの奥で残り1%のマニアが来店してくださるのを何年も待つのも資金力に乏しい小さな店では大変ですから、仕入れるとなると二の足を踏んでしまうんですよね…。

なかなか採算が取れなくなってきていると言われる展示会ですが、一方で着物サローネなどのイベントは大盛況らしいですし、結局は開催方法によると思うので「この展示会で売り上げ○千万売りたい!(鼻息)」なんて売り上げが先に立っているような展示会ではなく(注)、もう少し工夫すればメーカーも問屋も小売店も、そして一番はお客様が大満足する展示会もできそうなんですけどいかがでしょう。

え?うちの店ですか?いやいや、もうそんな体力ないですよ笑。

(注)展示会という場で販売するためにメーカーに無理を言って商品を集めて「100枚貸すから10枚は売ってや!(100枚貸したら、展示会で10枚は売って欲しい。もし売れなかったらあんたが仕入れて在庫に持っててくれ、という意味)」なんて言われることも多く、呉服問屋や小売店も1枚でも多く売りたいのとお客様に満足していただきたい思いが交錯してなかなか大変なのです。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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