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総絞り着物の裄直しはできません

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本日のお題:総絞り着物の裄直しはできません

呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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いよいよ年末ですね。当店は12月30日までは通常営業、31日は朝8時まででクレジットカード、代金引換決済でリサイクル品に限り年内発送が可能です。ただしお正月に帰省するなどの場合はお正月に運送会社さんに無駄に動いてもらうことがないように日時指定をお願いいたします。

新年は1月6日より営業いたしております…って本当は1月5日より営業しているのですが発送が大量にあった場合に遅れる可能性があるので1日余裕を持ってアナウンスしております。もしどうしても1月5日発送希望の場合はご連絡いただければ対応できます。

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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。

https://www.kikuya.shop/view/category/ct47

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■総絞り着物の裄直しはできません

本日のお題は「総絞り着物の裄直しはできません」です。リサイクル着物を扱っていると、ご自身の寸法には合わないけど、色や柄がとても気に入ったからと寸法直しを依頼されることが多々ございます。しかしながら総絞りの着物だけは様々な理由でお直しがしにくいので今週はそのことについて書きたいと思います。

リサイクル着物って総じて裄(ゆき・背中心から袖口までの長さ・簡単にいうと腕の長さの部分)が短いと思いませんか?これには様々な理由がございます。

・現代人の体格が良くなって手足が長くなっている

・衿の打ち合わせを深く、きっちりと着るようになった

・手首が隠れる洋服に慣れているためか、長めの裄が好まれるようになった

このあたりでしょうか。昔は腕のぐりぐりの手前あたりの長さが良しとされておりましたが、現代は手首が隠れるぐらいの長さが好まれるようになっています。日常着として着物を着用する方が少なくなったため、着物で炊事等をすることがなくなったというのも影響しているでしょう。

そんなわけで、20年、30年前に仕立てられたものが主流のリサイクル着物は全体的に裄が短めです。実際に統計を取ったわけではありませんが、肌感覚として一番多いのが64-65cm前後、短いものですと62cm程度も多く見られます。62cmというと現代では身長150cmちょっとの方が仕立てられる場合の裄ですね。

そして本日の本題です。

先日お問合せいただいたのは、当店の在庫にある総絞りの着物は裄をどのくらい出せるか、という内容でした。どうやら総絞りの着物が欲しいようで2枚ある総絞り着物の裄についてお問合せいただいたのですが、内容を見た瞬間に「あ、これは出ないだろうな」と思いました。その後現物を見て確認しましたがやっぱり縫込みが入っておらず、残念ながら裄直しができませんでした。

その問い合わせを見た瞬間に出ないだろうと思った理由は、総絞りの着物独特の加工にあります。。

総絞りの着物は「鹿の子絞り(かのこしぼり)と呼ばれる加工が着物全体に施されています。子鹿の背にある斑点に似ているためそう呼ばれるのですが、絹の生地に木綿糸や絹糸を巻きつけて布を染める技法であり大変手間がかかります。絹糸を巻きつけた高級品になると「総疋田(そうびった)」と呼ばれ200万円オーバーの超レア品となります。当店にも何度か入荷してまいりましたが、お目の高い方がおられるようで登録すると数日で売れてしまいます。

ところでみなさんは仕立前の総絞りの反物をご覧になったことはありますでしょうか?

一般的に着物の反物は1尺幅(約38cm)で作られておりますが、総絞りの反物に限っては専用の若干幅広の生地を使用してそこに鹿の子絞りの加工を施します。絞りの凹凸があるため、完成した時には幅は30cm程度まで縮んでおります。

当然30cmの幅では狭すぎて仕立てることができませんので、仕立てる前には「裏打ち」という総絞りならではの作業が必要です。総絞りの着物は絞りによってシワができて全体的に縮んでいる状態ですので、そのシワを適度に伸ばして裏から生地を貼り付け、通常の反物の幅に固定させるのです。

この時に伸ばしすぎてしまうとせっかく作った絞りがぺったんこになり、つぶつぶ柄模様に染まっただけの着物になってしまいますので、絞りの凹凸をなくさないように必要最小限の幅に伸ばして固定させるのです。一般的に反物の幅を一番広く使う部分は裄ですから、お客様の裄の長さに合わせて裏打ちをします。例えば袖幅34cm、肩幅33cmで裄67cmの方ですと広い方の幅の34cm+縫い代2cm、合計36cm程度の幅になるように裏打ちを依頼することになります。

ここまで書くともうお分かりと思いますが、総絞りは必要以上に幅を広げるということがなく、最初にお仕立てする方の寸法に合わせて生地の幅も決められるので縫い代にもほとんど生地が入っていないため裄を広げることが難しいのです。もちろん短くする分には問題なく対応することが可能です。

とは言いながらも100%縫い代がないかと言われるとそうでもなく、将来的に誰かに譲ることを想定して広めに裏打ちをして縫い代が入っていることもなくはないのでもし気になる商品がございましたらお気軽にお問い合わせしてくださいませ。

現代ではどちらかというと総絞りは敬遠される傾向にあると聞きます。総絞り特有の凹凸が太ったように見えるのではと気にする方がいらっしゃるようですが、女性らしいふっくらとした雰囲気、関西風の表現でいうと「おぼこく(関西地方の方言で初々しくて青っぽいさま。世慣れしていないさま)」見えるのが絞りの良さです。もし気になっている方がおられましたら是非一度挑戦してみてくださいね。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや

住所:大阪市大正区泉尾3-15-4

電話:06-6551-8022

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