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納得いかない衣替えルール

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本日のお題:納得いかない衣替えルール
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■納得いかない衣替えルール

今週のお題は「衣替えルールの謎」です。着物に興味を持ってまず一番初めに耳にするルールは「衣替え」だと思うんですよ。袷とはなんぞや、単衣、夏物とはなんぞや、何月から単衣を着て何月から夏物を着るのか…。この衣替えルールはおそらく日本全国同じだと思いますので比較的初心者の方にもとっつきやすいルールだと思います。まあでもそもそも常夏の沖縄から夏でも比較的涼しい北海道まで一律のルールということ自体少し無理があるんですけどね。

このメルマガを読んでいるようなマニアな方は衣替えのルールはご存知だと思いますが改めて紹介いたしますと

1月-5月 袷の着物
6月、9月 単衣の着物
7月-8月 夏物の着物(透けている着物)
10月-12月 袷の着物

とまあこんな感じです。一番着る時期が長いのは袷の着物で、また寒い季節は着物を着やすい時期ですので一般的な店ですと袷が一番よく売れると思いますし、店側も特に着る予定がないお客様に販売する場合は袷を勧めることが多いと思います。2週間程度の季節の先取りは粋とされていて5月の中旬を過ぎると単衣を着たり、6月の中旬を過ぎると夏物を着たり、ということはあります。逆(8月中旬過ぎに単衣を着る、9月中旬過ぎに袷を着る)はあまりないように思います。逆にすると暑いですよね笑

こんな風に紹介いたしましたけれどこの衣替えのルール、ほんといい加減だなぁ、と思うんですよ。まずこの衣替えルールが絹の着物、もしくは絹の着物を模して作られているポリエステルの着物に限定されることがおかしいと思いませんか?ウールや木綿だとこのルールから外れて…いや、ルールから外れるというよりも「眼中にない」というのが感覚的にあっているような気がします。

絹の着物だと1月に袷を着なければならないのにウールや木綿だと「そんなの関係ねぇ!」とばかりに単衣でもOKです。でもパッと見た感じ真綿の紬の生地とウールの生地、一般的なユーザーですと区別するのは少々難しいと思います。パッと見た感じわからないのにいちいちそんなの気にするのもねぇ…と思ってしまうのです。

聞くところによると絽や紗など夏物の透ける着物が出てきたのは明治になってからという話も聞きますのでこの衣替えのルール自体たかが100年程度のもので大昔から受け継がれてきたものではなさそうです。江戸時代には夏物はなく、単衣、袷、綿入れの3種類の着物を季節に合わせて衣替えをしていたようで四月一日と書いて「わたぬき」と読ませることから4月1日に着物の中から綿を抜いて袷の着物に仕立て直していたというのもよくわかります。まあ確かにあの緻密な組織の、薄くて繊細な夏物を水道や電気、ガスのない江戸時代など昔に外に水を汲みにいって薪でお風呂を沸かすなど、家事に手間のかかる時代の庶民が着ていたと考えるのは違和感がありすぎますね。

また、衣替えの時期も明治時代に太陰暦から太陽暦に変わっているらしいので、現在の気候とずいぶんズレがありますし、気候自体も温暖化が進んでおり、大昔に根付いた衣替えルールを現代に適用しようとするとかなり無理があるように思います。5月のGWあたりですと30度超えるような日もありますし、あまりルールを厳密に守ろうとして汗をたらたら流しながら我慢大会もなんだか変な感じですよね。先ほど書いたようにそもそも北海道から沖縄まで統一の衣替えルールということ自体不自然です。

先ほどの話に戻りますが、この衣替えのルールは絹物もしくは絹を真似て作られているポリエステル専用であり、ウールや木綿は元々単衣で着るものなのでこのルールから対象外となっていると考えたほうがよさそうです。でも私はこのあたりすごく違和感を感じるんですよ。

このメルマガを読んでくださっている方で絹紡糸と呼ばれる比較的安価な糸で作られた、硬い絹の生地とウールの区別がつかない方もおられるのではないでしょうか。慣れてくれば柄で何となくウールとの違いはわかるのですが、おそらく着物に興味のない人で区別のつく方はいないのではないでしょうか。

あくまでも私の考え方ですが、織り方や糸の組織で季節が変わるならまだわかるんですよ。ペラペラ(言い方w)の大島紬は6月と9月、ポワポワしてる結城紬など真綿紬やウールは1月から5月、7月8月は薄物というなら納得できるのですが、ほぼ同じ風合いであるにも関わらず素材によって違うというのは何となく違和感を感じます。

博多の献上帯は浴衣などにも使うことから年中通して使えたり、柄や素材によって「例外」が多々あり、そりゃ初心者の方は戸惑うよなぁ、というのが正直なところです。私の勝手な推測ではありますが、おそらく衣替えのルール自体、大昔の旧暦の時代に、しかも上流階級の絹しか着なかった方々が対象の習慣でしたので庶民が着るようなウールや木綿は眼中になかったのではないかと思っています。

次第に生活水準が上がり、豪華な絹の着物が庶民にも着られるようになったため、上流階級のルールがそのまま庶民に降りてきましたが、それまで好きに着ていたウールや木綿の習慣と整合性が取れなくなっているのではないでしょうか。うっかり全国の庶民がそのルールを取り入れてしまったから気候に合っていない衣替えルールが一人歩きしてしまったのではないでしょうか。

そう考えると衣替えのルールも別に厳密に守らなければならないという気になってきませんか?衣服なんて本来気温に合わせて快適なものを選べばいいのに、大昔に作られたカビの生えたような(ちょっと言い過ぎ?)ルールに縛られて汗をたらたら流しながら着物を着ても楽しめません。最近は単衣はもう5月から、いや、4月からでもいいやん、という意見も聞くようになっており、私もその意見に賛成です。いや、もっと言えば月にとらわれず気候に合わせて好きなように着なはれ、と思います。

最後にもう一つ。

何度もこのメルマガやXでもポストしておりますが、着物の花柄と季節の気にしなくていいですからね!あれは着物の花柄をその花の季節に合わせて着ると粋であり、そういう着物の楽しみ方もある、というだけの話で「着物に描いている花柄はその花の季節にしか着てはならない」というルールなんてありません。

人によっては「描かれている花柄と同じ季節に着るのは野暮」という方もいるし「本物と張り合っても絶対に本物には負けるからその花の季節には着ない」という方もおられます。これも一つのこだわりであり、楽しみ方の一つですよね。「こだわらないのがこだわりです(きりっ)」というのもアリだと思いますのであまり「ルール」にとらわれず、自由に着物を楽しんでいただきたいな、と思うのです。

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