裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法その1
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本日のお題:裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法その1
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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毎年、お盆休みのときにはメルマガもお休みさせていただいているんですが、今年はメルマガ配信してすぐにお休み、そしてお休みが終わったらすぐに水曜日ということでメルマガを休む理由がなく、休み中に頑張って書いてますので、読む方も心して読んでください(なんだか偉そう)。
これを書いている15日は大阪では台風が上陸しましたが、被害は出ませんでしたでしょうか。私の家はベランダに紐で固定していた物置が風で動いて隣の部屋との仕切り板を破壊してしまいました。紐ではなく鎖か何かで固定しなくちゃダメですね…。
というわけで本日より通常営業いたしておりますが、こちら大阪では昨日は運送会社が完全に止まっておりましたため荷物がパンク状態でおそらく通常よりお届けに時間がかかると思われます。ご了承くださいませ。
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■裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法その1
今週のお題は「裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法」です。栄養が良くなっておりますため、現代の日本人は昔と比べてかなり体格が良くなっております。いま「日本人の平均身長の推移」で検索してみましたところ1950年の30代男性の平均身長は160.3cm、女性は148.9cm、一方2010年の30代男性の平均身長は171.5cm、女性は158.3cmです。わずか60年の間に男女共それぞれ10cmも大きくなっております。
私もこんな業界にいなければ「へえ、そうでっか」と軽く聞き流すような話なのですが、呉服業界の末席を汚しているような立場である以上、ただ単に聞き流すわけにも行きません。仕立て上がりの古い着物を扱っているリサイクル着物屋のおっちゃんとしてはいろいろ思うところがあるわけです。
ちょっと昔の着物は裄や身丈が短いものが多いのですが、このように統計で見せられますとなるほど昔の着物が小さいのはごく当然ですよね。それに加えて着物の着方も衿元をしっかりと合わせるようになったり、洋服の影響でくるぶしがしっかりと隠れるぐらいの裄が流行りになり、より大きな寸法を求められるようになりました。
というわけで本日は裄や身丈が短い着物(仕立て上がったリサイクル品)についてと、まだ仕立てていない反物が短い場合にはどのように使ったらいいかを解説いたします。
・裄が短い場合
まあこれは比較的簡単なのですが、当店も全ての商品ページにリンクを貼っておりますように裄直しをすることができます。比較的簡単なのですが、注意すべき点がいくつかあります。
1・筋消しが必要(かもしれない)
リサイクル着物は以前に仕立てられたままずっと保管されておりましたので、仕立て上がってからかなりの年月が経っていることが多いです。そのためその部分を解いてお直しをすると今まで縫っていた部分に跡(筋・スジ)が残っています。この筋を消すのは専門の悉皆屋さんに依頼すれば可能なのですが、当店の姿勢としてはせっかくリサイクル品を安く購入していただいているのだから、アイロンをかけて余計な費用がかからないようにしています。
今まで数え切れないくらい裄直しはしてきておりますが、悉皆屋さんで筋消しをしたのは数回です。当然うっすらと縫い跡が残っていることがほとんどなのですがよほど気にしない限りわからないと思います。当然のことながら、裄を短くする場合は縫い代の中に隠れてしまうので筋消しは必要ございません。
2・ヤケていないか
着物って洋服に比べると染めの堅牢度が低いと思います。よく着用されていたような着物ですと今まで縫い代に隠れていた部分が表に出てくると、今まで表に出て日光などに照らされて全体的に褪色した部分と色の差がはっきりと見える場合がございます。
これはなかなか厄介でして、気になる場合は悉皆屋さんに直してもらうしかありません。具体的には濃い部分を薄くすることはできないのでくっきりとした色の変化がわからないように少しずつぼかしながら色の薄い部分に少しずつ色を乗せていくという作業になります。まあでもそこまでヤケていることはほとんどありませんけどね。
3・たくさん裄出しをすると肩に角度がつきます
そもそも仕立て上がっている着物から裄を出すということはちょっとイレギュラーなことをしているわけでして、例えば細身で腕が長い方ですと身幅が狭いいので、裄を出すために肩幅を大きく出すためには逆三角形のようにカーブさせる必要があります。
反物の仕立ての時なら、仕立屋さん泣かせではありますがまあなんとか対応ができます。しかしすでに仕立て上がっているリサイクル着物の裄を大きく出すのは大変です。袖幅部分から出すことができればいいのですが、胴部分から大きく出しますと肩の部分にわずかに角度がついて肩山部分が一直線にならないことが多々ございます。
着用したらほぼわからない部分ではありますが、これはもう仕方ないことなので手の長い方には諦めてもらうしかございません。
4・いっそのこと別生地を継ぎます?
これはよほど着たい着物の裄がまったく自分に合わなかった場合に限るのですが、袖口に別生地を継ぐという方法もあります。ただ単に継ぐだけというのも面白くないので、左は肩口の方に、右は袖口の方に継ぐなどもアリですね。
・身丈が短い場合
何度もこのメルマガでは書いておりますが、身丈は二種類あるというのはもうお分かりですよね?肩からの身丈と背からの身丈です。肩からは肩山から裾までの長さ、背からは背縫いの長さで繰り越しの分だけ誤差が出てしまいます。
肩からの寸法ですと身丈に必要な長さは(身丈+縫い代分)×2ですが、背からの寸法ですと繰り越しの分まで計算が必要になってしまいます。そのため呉服業界では肩からの寸法を採用している店が多いと思われます。
で、当店にも「この着物は身丈をどこまで伸ばせますか?」という質問をいただくことが多々ございますが、リサイクル屋さんをやってきて1度も身丈直しをしたことがありません。なぜかと申しますとめちゃくちゃ高いから。これに尽きます。
先ほどの裄直しですと袖付けを外すだけでいいのですが、身丈を修正するとなりますと腰のあたりの内揚げ部分から出すことになりますので縦の縫い目は全て解く必要があります。衿も全て外し、裏地も外し…ってもうお分かりだと思いますがほぼ全てバラすような大手術が必要であり、当然費用もかかります。それでもまだ生地がちゃんと中に入っていればいいのですが、剣先部分になかったり裏地が足りなかったり、クリアしなければならない項目が多く、私の中では1万円程度で購入できるリサイクル品の身丈を出すのはあまりお勧めいたしません。
もし中に縫込みが入っていなくて身丈を出したいという方は、これもそこそこの費用がかかりますが、お端折りの中に別生地を入れるしかありません。ただ、お端折り部分に別生地を入れるというのが意外と難易度が高いのです。もちろんお客様から裾から◯cmの位置に◯cmの幅の生地を入れてほしいという依頼がありましたら余裕で対応できるのですが、お客様がどのくらいの位置にお端折りを取っているか、店側ではわからないので不用意に受けてしまうと「お端折りの下から生地が覗いてる!」とクレームを受ける確率が非常に高いです。
もし別生地を入れるのでしたら、わざと全く違う生地を裾の部分に入れるというのはどうでしょう。訪問着のように上前から下前に斜めに流れるように切り嵌めに。その場合、裾だけに別生地を入れると浮いたような感じになってしまうので、袖にも同じ生地を入れた方が一体感があっていいかもしれません。
今週は仕立て上がってるリサイクル品の寸法直しでしたが、来週はまだ仕立てていない短い反物はどのようにしたらいいかを解説いたします。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
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