留袖の裏地はポリエステル?正絹?
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本日のお題:留袖の裏地はポリエステル?正絹?
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当店が楽天に出店したのはもう15年以上前でして、その頃とはパソコン周りの環境もかなり変わってきました。昔はパソコンでサイトを見るのが一般的でしたが現在はスマホで見るのが一般的に変化しています。
パソコンの画面は横長で広いんですが、スマホの画面は少し小さく、検索でヒットした時のサムネイル画像の商品名は前の方しか表示されず、いまいち商品がわかりにくかったので現在商品名の変更を行っております。
着物もパソコン関係も時代によって少しずつ変化していきますなぁ。
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■留袖の裏地はポリエステル?正絹?
秋真っ盛りですね。朝晩は冷え込むようになってきましたが同時に着物シーズン本番となってまいりました。また、過ごしやすい季節で結婚式シーズンでもあります。人が集まる式などはコロナの影響で自粛ムードが漂っておりましたが、ようやくコロナ騒動から解放され、延期になっていた結婚式&披露宴を執り行うカップルも多いようです。
で、結婚式といえば留袖。現在はレンタルが発達しておりますし、自宅から留袖を着て結婚式場にいくのも億劫です。というわけで会場で貸してもらってその場で着付けもしてもらえるレンタルが重宝されるのも当たり前の話ですね。一般的には一生の間に何回も着るものではない着物ですし、レンタル一式で高く見積もって5万円、自分で購入すると一式30万円。レンタル6回以内でしたら借りた方がお得です。お手入れも面倒ですしね。
ところでリサイクル品の留袖も入荷してくることが多々あるのですが、小紋や紬、訪問着と比べて裏地がポリエステルの確率がちょっと高いのはご存知でしょうか。表地は正絹が圧倒的に多いのですが、裏についている胴裏や比翼地にポリエステルをつけることが多いのです。これはなぜでしょうか。留袖は小紋などに比べて高いから少しでもコストダウンするため…じゃないですよ。
私がこの業界に入った30年ほど前はお嫁入りの時に着物一式を持っていくのはごく当たり前に行われておりました。黒紋付(喪服)、訪問着、色無地は当たり前ですし、それに合う帯や長襦袢もセットで。そして相手方にきょうだいがいる場合は同じく年頃になっておりますので近々結婚がするであろうことが予想されますので留袖も一緒に持っていくのが一般的でした。
今でこそ結婚しないという選択も人生の選択肢の一つのようになっておりますが、当時は年頃になれば近々結婚するというのが暗黙の了解のようになっておりました。口の悪い人は結婚できないのは人間的に何か欠陥があるのではないか、というようなこともささやかれましたし、適齢期で結婚の話が全くなければ「フラフラしてないでいい加減身を固めてしっかりしなさい」なんて言われました。20代も半ばになって交際している相手がいなければお見合いの話がどこからともなく来た時代ですので「年頃のきょうだいがいる=近々結婚式がある」の図式が成立した時代です。
当時は一人っ子は珍しく、新郎新婦共年頃のきょうだいがいるのは当たり前でしたし、結婚すると数年以内にまた自分や相手のきょうだいの結婚式の用意はしておかなければならない時代でした。
また、現在ほどレンタルが一般的ではありませんでしたし、レンタルに対して偏見もありました。
「親族の集合写真で写る時に結婚式ごとに柄が違うのでレンタルということがバレてみっともない」
「家紋が違うからレンタルとわかってしまう」
などとレンタルの留袖を着ているのがみっともないとされる時代でした。それに留袖に合わせる帯や草履バッグは訪問着用のもので兼用できますし、フォーマル用の白の長襦袢は黒紋付(喪服)のもので兼用できますので、留袖だけを購入して仕立てるだけで他の付属品は兼用できるのです。
これらの理由で結婚衣装を揃えるのと同時に留袖を揃えることが非常に多かった時代でした。今では結婚で着物を揃えるなんてことも少なくなってしまったのでこの30年ほどで着物を取り巻く環境はガラッと変わってしまい、当時のことを思い出すとなんだか遠い目をしてしまいます笑。
とまあ、当時の状況を紹介いたしましたが、これが留袖の裏地の素材に少なからず関係があるのです。
小紋は着物ファンにとっては毎日でもお召しいただけますし、訪問着もフォーマルな場に出ることは1年や2年に1回程度はあるかもしれません。しかし女性の最高の礼装である黒留袖を着用するような場は結婚式しかなく(注)、普通の方にとって着る機会がかなり限定される着物です。結婚してすぐ、きょうだいの結婚式で使うことがあっても、それが終わったあとはあまり使われることがなく、タンスの奥でずっと保管されているような着物です。
注:三味線や踊りなどを習っておられる方ですと留袖を着用すべき時は多々あるようですが、私はその辺はあまり詳しくありません汗。
現在も胴裏は年数が経過するとやや黄ばんできますが、当時は胴裏の加工技術も高くなく、少し糊が残っていたり、質の悪いものですと増量剤(注)を混ぜたものがあり、かなり変色するものも多く見られました。仕立てて数年でお召しになったきょうだいの結婚式の時には真っ白だった胴裏が、10年、20年経つ間に完全に茶色く変色してしまうことも少なくなかったのです。20万、30万かけて仕立ててきょうだいのために2-3回しか着ていないのに10年後に見てみたら真っ白だった胴裏が茶色く変色していた、というのはよく聞く話でした。
注:昔は絹の質を重さで評価していたため、絹に増量剤を混ぜて重く見せかけた粗悪品も多く流通しておりましたが、この増量剤は酸化して変色しやすいと聞いております。
そういったことを防止するためにポリエステルを使う店が多かったのです。その頃には東レシルックはすでに作られており、当時でもすでに絹と変わらないくらいの風合いを実現しておりました。ポリエステルは非常に安定した物質なので酸化せず、30年でも40年でも真っ白な綺麗なままです。そこに東レのシルックという優れた素材ができましたので裏地だけポリエステルを使用する店が多かったのです。
ポリエステルは先ほど書いたように非常に安定しておりますため全く縮んだりといったことはなく、長年の間に表地が縮んでわずかに裏地がだぶつくということも無きにしも非ずです。また静電気の問題もありますが、見た目は何十年経っても綺麗なままなのでポリエステルが選ばれることが多かったようですね。
私は今はリサイクル品を取り扱っておりますので最近のお仕立て事情は疎いのですが、最近は絹の精錬技術が良くなり、いまどき増量剤を使っているような不届きな業者もいないと思うので(知らんけど)、絹を使ってもいいとは思うのですが、昔からの風習(?)で今でもポリエステルを使用して仕立てている店は多いかもしれませんね。
留袖を見に来られた方に裏地がポリエステルである説明をすると安物か、もしくは元の持ち主がケチったと思われる方がいらっしゃるのですが、そうではなく昔はそういう時代だったと思っていただければ幸いです。とはいうものの、表地だけで100万オーバーなどの超逸品ですとポリエステルではなく絹をつける方の方が多かったような気がしますが…。
最後になりますが、留袖と同じ理由で黒紋付(喪服)の裏にポリエステルを使用しているのも多いようです。これも滅多に着ることがない(というか、一般的には着なければならない状況になっちゃダメ)着物ですので、購入してから10年、20年後に初めて箱を開けたら胴裏がまっ茶色に変色していた、なんてことを避けるためなんです。
時代とともに着物を取り巻く環境は変わっており、着方はもちろん仕立て方や素材なども少しずつ変改しているのがとても興味深いですね。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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