振袖の袖を切って訪問着に…
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本日のお題:振袖の袖を切って訪問着に…
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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最近気づいてしまったんですよ…。私の家、マンションのそこそこ高層階なんですが、地震が起こる前と後に結構揺れるんです。先日の宮崎の地震も当日の朝に天井から吊っている照明器具が微妙に揺れてましたし、昨日も福島の震度2程度の地震でも揺れてました。
そんなアホな、と思うかもしれませんが、多分地震計では感じない程度の小さな揺れがあるんだと思っています。天災は忘れた頃にやって来る、なんて言いますが最近は忘れる暇もなくあちこちで地震が起こっているので日頃から常に心構えはしておきたいですね。
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■振袖の袖を切って訪問着に…
今週のお題は「振袖の袖を切って訪問着に」です。1年間で振袖が一番売れる季節はいつかご存知でしょうか。X(旧ツイッター)でも書きましたが今この時期、1月なんですよ。1月の成人式で1年上の方々が成人式を迎え、テレビのニュースなどでも振袖姿のお嬢様を目にすると「私も来年だ!」と思うんでしょうね。
特に成人式が終わった翌週の土日なんて振袖商戦スタートの時期といっても過言ではありません。私の新品着物屋時代、1月のこの時期は毎週のようにチラシを撒いて、来年に成人式を迎えるお嬢様にDMのはがきを送り、展示会もやっておりました。そして1月の振袖商戦スタートに合わせるように注文していた新作振袖が12月の末あたりに入荷してくるのでその新作振袖を売り場に並べるのは華やかで楽しい作業でした。
染め上がってくる振袖は基本的に同じものは2点とないので(注)パンフレットに載っているものをご覧になりたいのであればできるだけ早く店に行くことをお勧めいたします。「これだ!」と思うのがあっても他の方に先を越されてしまうとどうにもなりませんからね。
注:私が昔勤務していた新品屋では振袖販売の組合に加入しておりました。1店舗だけでタレントさんを使って豪華なパンフレットを作るとめちゃくちゃお金がかかってしまうので数十店舗の店がお金を出し合ってパンフレットやDMをつくり、勉強会などをするグループでした。会議で夏から秋にかけてパンフレットに掲載する柄を決めて、加入店はそのパンフレットに掲載されている30枚ほどの柄を全て仕入れます。加盟店舗はそれぞれ同じ柄を仕入れているはずで「同じものがない」というわけではないのですが、組合の方針として成人式の場で同じ柄が被ることがないように1地域で複数の店は加入できないという決まりがありました。たまにどこで見たのか去年や一昨年のパンフレットに載っていた柄が欲しいと来店されるお客様がこられた、ということで組合の仲間から「去年の振袖売れ残ってない?残ってたら譲ってくれへん?」なんて要望はありました。
この時期はそろそろ今度の休みにでも振袖見に行く?なんてお嬢様と話し合っているご家庭も多いと思います。呉服店に行きますと、多数の振袖が並んでいると思います。先ほど書いたようにこの時期は振袖が一番売れる時期ですので、振袖に力を入れている店でしたら一年で一番品揃えが充実している時期かもしれません。レンタルと購入、どちらにしようかと迷っていると販売員から「購入する方がもちろん高いですが、その振袖は結婚後に袖を切って訪問着にすることもできますよ」なんて販売文句を聞くこともあると思います。
黒紋付裾模様振袖の袖を短くする(留める)ので留袖という名前になることからも想像できるように、昔は振袖の長い袖を、結婚した後に短くするというのは当たり前のように行われておりました。なお、黒紋付裾模様振袖は袖を短くすると黒留袖になりますが、現代において一般的に販売されている振袖は上半身にも柄がございますので袖を切るとカテゴリとしては訪問着ということになります(黒留袖の定義は裾模様だけで上半身に柄は入らない)。
と書きましたが、単純に振袖の袖を短くして本当に訪問着として着られるのか、というのが今週のテーマです。
振袖はどんなときに着られるか、もちろんご存知ですよね。概ね10代から20代の一番若くて力強い、元気一杯の年代のフォーマル着です。その力強い年代に合わせて振袖の色も真っ赤やピンク、濃いグリーンなど力強い色になります。また柄も比較的大きく、力強い地色に負けないバランスで描かれていることが多いです。つまり、振袖独特の色合いや柄がありまして、年がら年中着物を見ている呉服店からすると袖の長さを見なくても地色や柄を見ただけで振袖と判断できるのです。
一方、訪問着といえばどうでしょうか。多くのものははんなり系の薄い色で、大人の女性にふさわしい落ち着いた色合い、柄もあまり主張しすぎない柄のものが多くなっています。わかりやすくいえば振袖の色柄とは対照的なんですよ。そういう両極端とも言える着物ですので振袖の袖を単純に短くしても訪問着にはなりません…いや、定義としては訪問着になるんですが、先に書いたように訪問着ははんなりとした優しい色がほとんどのところ、違和感を感じるのは否めないと思います。
ちょうど最近振袖の袖を切ったであろう訪問着が入荷しましたのでご覧ください。
金通しでしっかりとした生地を使用したいいものなのですが、この「これぞ振袖」というような色柄の「訪問着」を着こなすのはかなりハードルが高いのではないでしょうか。背の高いかなりはっきりとした顔立ちの方でしたら似合うかもしれませんが、いずれにせよ非常に難しい色、柄であることは間違いないです。
ただし、この例はちょっと極端ですし、現実的に袖を切って訪問着として着られるものはありますので、将来訪問着にするのが前提であれば振袖を選ぶ時から適したものを選択する必要があるので、どういったものを選べばいいのかを箇条書きでお話ししたいと思います。
・地色ははんなり系を選ぶ
訪問着は薄めのはんなり系の色がほとんどですのでそういった色を選ぶといいでしょう。ただ、どうしても振袖としてはインパクトにかけてしまうので流通量としてはやや少なめです。もし気に入ったものが見つかれば帯や小物等を少し豪華な感じにする方がいいでしょう。
・柄はあまり大胆なものではなく、比較的細かい柄のものを選ぶ
先ほども書いたように振袖の柄はその地色の力強さに負けないように大胆な構図や大きめの柄のものが多くなっていますので、そういうものは避けた方がいいです。はんなり系の色を選んでおけばその地色にうまく乗せて合うようなおとなし目の古典柄だと思いますので、奇をてらったような大きな柄のものは少ないと思います。
・袖山から約49cmでバッサリ切ってもおかしくない図案を選ぶ
先ほどの写真の振袖(いまは訪問着)は地色はかなりキツい色で訪問着としては着にくいですが、柄の配置は訪問着としてはややモダンな感じではあるものの決しておかしくはない柄だと思います。標準的な袖丈の袖山から49cmの部分で切っても振りの部分で柄がプッツリ切れているとかそういうのもなく綺麗ですね。例えば袖の金箔の蝶の柄がちょうど49cmのあたりに描かれているとそこで蝶をバッサリ切るわけには行きませんが、写真のものは蝶の柄がちょうどいいところに置かれています。もちろん49cmにこだわる必要はないので多少長くても短くてもトータルバランスで綺麗に見えるならそれでもいいと思います。
・袖と身頃の柄は繋がっていない方がいい
これは必ずしも必要なわけではありませんが、袖丈49cmの位置で袖をバッサリ切ると蝶の胴体が真っ二つになってしまうなど、違和感のある仕上がりになる場合、袖山をずらすという方法があります。身頃と袖の柄が繋がっていないことが前提ですが、袖山をずらすことができれば袖の一番いい部分(大体袖の一番下の方ですが)を袖丈49cm程度の部分まで上に持ってきて残せる可能性があります。身頃と袖の柄が繋がっている場合は袖山の位置が決まっていて動かせないので(動かすと柄が途切れて繋がらなくなる)そのままバッサリ切る以外の方法はありません。
これらに気をつけて振袖を選ぶと将来訪問着にするときもスムーズにできると思いますが、振袖として着ても、将来袖を切って訪問着としてもどちらでも魅力のあるものはそう多くありません。多くの場合はどっちつかずの中途半端になってしまうので、私のお勧めは訪問着のことまではあまり考えずに、とりあえず振袖としてお嬢様が100%気に入るものを選んで、もしそれが結果的に訪問着としても自然にお召しいただけるような色柄だったらそこで初めて訪問着にすることを考える、というので十分な気がします。
着物はちゃんと保管しておけば、親から子へ、子から孫へと受け継ぐことができるものです。せっかく手に入れた、またはご両親が買ってくださった振袖はお嬢様が結婚してまたお子さんができて成人式を迎える時まで大切に保管しておいてもいいのでは、と思います。最近はお母様の振袖を着るのも「ママ振り」といわれて流行しているようですし、そういうのもプライスレスな体験でいいと思うんですがいかがでしょうか。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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