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浴衣販売は難しいのです

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本日のお題:浴衣販売は難しいのです
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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先日より店舗の警備システムを新しくいたしました。今までは、めったにないことですがセンサーが反応すると自動で電話がかかってくるので夜中でも明け方でもとにかく駆けつけるという方法でした。そしてほとんどが風などによる誤報で、ホッとしながらも「眠いのに起こすな」と思いながら家に帰ってもう一眠りするのでした。

ところが先日よりついに警備会社のシステムを入れることになりまして、これで安心して寝ることができます。スマホでシステムの操作もできるようで、とても便利になりました。

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■浴衣販売は難しいのです

今週のお題は「浴衣販売は難しい」です。長かった冬が終わり、春爛漫のとても気候の良い季節でおそらく誰もがこの季節は好きなのではないでしょうか。御多分に洩れず私もこの季節は心地よくて好きです。お風呂上がりにベランダでビールを飲んで涼んでいると「今日も1日頑張った!生きててよかった!」と思います(おおげさ)。

でも心地いい季節はほんの2ヶ月ほどで6月に入ると暖かいのを通り越してどんどん暑くなってきます。洋服ですとTシャツだけで歩けるのでそれほど暑くはないのですが、肌襦袢、長襦袢、長着の3枚を着て、人によっては補正などもするためどうしても厚着になってしまいます。こうなると6月でも着物を着るのは暑いんですよね。

そして夏を迎えるとリサイクル着物屋にとって受難の季節の始まりです(笑)。

日本の夏は湿気が多く、当然汗もかきます。リサイクル市場で主流の素材である絹は家庭で洗うことができないため、衿山部分や脇汗で変色しているものが多く、また非常によくお手入れされている綺麗な夏物はなかなか手を出しにくいぐらい高くて仕入れるのも難しいんです。丸洗いのできる麻の着物は見かけることはまずありません。比較的値頃な商品としてはポリエステルになってしまいます。

というわけで仕事を頑張ろうにも販売する商品が少ないので頑張ることすらできないというなんともいやはやな状態です。

なんてことを言っていると「浴衣売ればめちゃくちゃ忙しくなるんちゃうん」なんて言われるんですが、ここからが今週の本題です。いつも行っているリサイクル着物店…いや、リサイクル着物店だけじゃなくて普通の呉服店でも意外と浴衣を販売している店って少なくないですか?浴衣も当然着物の一種ではありますが、竺仙など逸品型染めのものは別として浴衣をしっかりと扱っているところは意外と少ないのです。

確かに夏場になると浴衣が売れます。この3年間はコロナの影響でお祭りや花火大会がなかったので市場でも浴衣がかなりだぶついて、浴衣のメーカーは大変だったと聞いていますが、今年からはおそらくまたお祭りや花火大会がはじまるし、それに伴って浴衣も売れることと思います。

楽天では各ジャンルの店の上位10店舗の売上が表示されるのですが(店名はわかりません)、呉服ジャンルの売上は夏場になると3倍から4倍ぐらいになって、おそらく梱包作業やらなんやらでめちゃくちゃ忙しいかき入れ時になるんだろうな、と羨ましく思いながら眺めているんですが、残念ながらこういうのは当店では真似できない…というか先ほど書きましたように小規模な呉服店では浴衣を大々的に扱っているところは少数派かと思います。

去年、アウトレット品のめちゃくちゃお得な浴衣が少し入ってきたので商品登録をしたのですが、同じリサイクル着物を扱っている同業者から「あんた浴衣触ってる(扱ってるの意味)んかいな!やめとかなケガすんで(大損するという意味)!」と言われました笑。

「できない理由」をあげつらってグダグダいうのはあまり好きじゃないんですが、当店のようなしがないリサイクル店は資本力も限られているのでどこに資本を投下するかはシビアな問題です。「自分の得意な、勝てるところだけに絞って資本投下する」というのが基本ですので、以下の3つの理由から「しがないリサイクル屋さんは工夫して頑張ってるんだな」とでも思っていただければ幸いです。

理由その1
大資本には太刀打ちできない

「夏場は売れなくてねぇ」というとみなさん口を揃えて「浴衣が売れるんじゃないの?」と言ってくださるように確かに浴衣は呉服業界の夏場の主力商品なんですが、残念なことに(?)洋服アパレル業界にとってもよく売れる商品なんですよね。浴衣は本格的な呉服ほどの染めや織の知識は必要ではないとは思うので比較的参入障壁が低く、洋服アパレル業界からも参入しやすいです。夏場の都心のファッションビルなどに行きますとおしゃれな売り場で浴衣が所狭しと並んでおり、また綺麗なモデルが着たポスターが掲示されていますよね。洋服アパレル業界でも夏場は浴衣に力を入れているのがよくわかります。

まあ、正直当店はごく小さな下町の店でして、ネット販売はさておき店舗の方ではそれほどの売り上げがあるわけでもなく、想像もできないほどの集客力を持った店やファッションビルのフロア全体が浴衣になっているような品揃えと張り合ってもなかなか難しいというのが下町の店の正直なところです笑。

振袖も同じですが、浴衣のように多くの需要を見込める商材は大資本が思いっきりお金をかけてブルドーザーのように売り上げを取っていくのが世の常です。綺麗なパンフレットを作ってTVCMをバンバン流して零細呉服店には絶対真似のできないような販売方法を展開していきます。そんなところとまともに張り合っても勝てないので、私たちは自分たちの勝てるジャンル、つまり浴衣に比べて格段に専門知識の必要なリサイクル着物に特化するのです。

理由その2
儲からない。とにかく儲からない。

マーケティング戦略用語で言えば、浴衣はいわゆる「レッドオーシャン」。レッドオーシャンというのは参入障壁が低く、誰でも参入しやすい代わりにライバルも多い市場のことを指します。しかしながらライバルが多いということは、それだけ価格競争も激しく、概して利益の少ない市場となりやすくなります。

楽天市場で「浴衣」で検索すると244,025件ヒットしました。さらにそれを注意深くみてみると送料無料で浴衣、帯、下駄の三点セットで税込2999円、しかも全国送料無料。おそらくシーズンオフの時に大量に現金仕入れをしておられるのだと思いますが、考えうる限り安く仕入れたとしても消費税300円、送料(500-800円程度?北海道や沖縄、離島になると1000円超えるかも)、楽天の利用料(300円程度?)などを差し引くと手元にいくら残るんだろう、と計算してしまうのです。

リサイクル着物も儲からないですが(汗)さすがにここまでは値崩れしていないです。

理由その3
ネット販売でも大手が勝つのです。

これはネット販売をしている店ならではの理由なんですが、ネット販売ですとどうしても写真撮影の手間がかかってしまいます。大きな店ですと同じ柄を何百枚、何千枚と仕入れてモデルを使って撮影、大量に販売するのですが、当店のように小資本の店ですと同じ柄を何百枚も仕入れてもしその柄の見込みをミスって人気がなくてコケてしまったら大量の在庫を抱えて会社存続が危うくなる一大事です。

同じ柄ですと一枚販売して300円の利益としてもそれを500枚販売したら150000円の利益を生むページになりますが、小資本の店は「もしコケたら」と思うとせいぜい同柄は数枚しか仕入れられないのでページ作りの手間ばかりかかって利益を生みにくいページになってしまいます。150000円もの利益を生むのであればモデルに浴衣を着てもらって写真撮影などコストをかけたページ作りもできるのですが、同じ柄を数枚しか販売できないとなるとコスト的にも手間的にもモデルを使った撮影は難しいので衣桁にかけた写真になります。モデルが着ている写真と衣桁にかけただけの写真では見た目の訴求力は格段の差がありますよね。

なおかつ、これは大手ショッピングモールの仕様なんですが、販売実績があればあるほど検索で上位に表示されます。つまりそのページで100枚、200枚と販売しているページがどんどん上に行ってお客様の目に止まるようになり、何枚かしか販売できていないページはどんどん後ろの方に追いやられていきます。先ほど書いたように24万件以上ヒットするので後ろの方に表示されてしまうとそんなページはもう無いのと一緒です。ネット販売するにしても大量販売していく店が有利になるのです。

そんなこんなで今回は「できない理由」を書いてきました。先ほど書いたように、本来はこういう「できない理由」を挙げて「でもでもだって」というようなことを言うのは嫌いなので書きながらだんだんと嫌になってきましたが(笑)、そもそも大手とは勝負せずに金銭的なコストも労働コストも絹のリサイクル着物にほぼ全振りしてそっちで勝ちに行くという戦略なのです。浴衣という、自分たちに不利な土俵でコストをかけるのは最小限にして、得意なところで勝負していくのが小さい店が大ケガせずに生きていく方法でしょうか。

今日も新しい情報をせっせと仕入れ、染めの勉強をし、織の勉強をし、それらをお客様にフィードバックするなど大手の店にはできない細かい知識と対応で頑張ります。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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