展示会の裏側とご来場お土産予約
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本日のお題:展示会の裏側とご来場お土産予約
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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■展示会の裏側とご来場お土産予約
本日のお題は「展示会の裏側とご来場お土産予約」です。ネットでのみ着物を購入している方は「お土産のご予約ってなんだ?」と思われるかもしれませんが、今日は呉服店の展示会の裏側をご紹介したいと思っております。大昔ではありますが私も展示会開催を販売の主体とする店におりましたので、裏側をかなり知っております。このメルマガの読者にとってはちょっと衝撃的な話かもしれませんが、一方で興味深いかも、と思って書いてみます。
このメルマガの読者の中に、呉服店に行った時に展示会の案内をされてお土産を予約したことがある方はいらっしゃるでしょうか。「◯月◯日に展示会を致します。つきましてはご来場のお客様にこんなお土産を用意してますので予約してください。通常◯千円で販売してるものですがお客様は1000円だけご負担ください」てやつです。
展示会というのは、店の総力を挙げて行う販売会です。店舗内で開催することもありますが、ホテルや公民館などの広い会場を借りることもあり、会場を埋めるために取引の問屋から大量の商品を借りて陳列します。限られた開催期間中に大きな売上を得るために広告宣伝費もかけていますし、失敗するわけにはいかないのです。そのためにどういうことをするかと申しますと、まずは「ご来場予約」なんですよ。
ありふれた粗品のようなお土産を差し上げたところで、展示会に来て下さるお客様はなんでもお持ちで喜んでいただけないだろうから、お客様にも幾らかの金額を負担していただいて、より良いもの、使っていただけるものを用意します、ということなんですが当然ながら建前です。本音はもっと違うところにあるんですよ(後述)。
展示会の売上は次のような計算式で算出することができます。
ご来場人数×お買い上げ率×平均単価
例えば開催期間中に100人がご来場になってそのうちの80%の方が購入してくださり、一人平均15万円使って下さるとすると、100人×80%×15万円=1200万円の売上ということになります。お買い上げ率と平均単価は何度も展示会をやっていると自然に決まってくるものでして、大まかに先読みすることができます。もちろんこれらを少しでも上げる努力はしますよ。例えば着物を購入してくださったお客様に帯やコートも勧めたり、それがダメならガード加工をお勧めしたりも。そんな感じで平均単価を上げることができますし、人気の作家さんに来ていただいたり販売を手伝う専門の方を雇ってお買い上げ率が上がるように工夫します。
さて残りの「ご来場人数」ですが、今どきチラシを撒いて宣伝したところでお客様がすすんで足を運んでくれる、なんてことはありません。このメルマガ読者の「着物が好きな方」であっても、全く知らない呉服店の新聞チラシが入っていても、きっとほとんどの方は展示会場に足を運んでみようとは思われないでしょう。ですので、前もって店頭などで集客のために「ご来場予約」することが必要なのです。先ほどの計算式にあてはめて考えると「ご来場人数」が増えれば増えるほど売上も増えていく計算になります。ただし、ご来場予約をした方が全員展示会に来られるわけではないので、
ご来場予約人数×来場率×お買い上げ率×平均単価
とこういった式が成り立ちます。ちなみに、もうなくなってしまいましたが大阪の某大手呉服店はこの来場率を100%に近いところまで持っていくことで業界の中では有名でした。お客様にご予約を取ったのに来場されなかったら展示会の夜のミーティングで営業マンが吊し上げられるらしく、必死だったということはもちろんなんですが、それ以上にお客様と深い人間関係を構築しておかなければこうはなりません。正直、あまり評判の良くなかった店ではありますがその点に関してはすごいなぁ、と思います。真似しようとは思いませんが…。
先ほど書いた「お客様に1000円程度のご負担をいただく」ことの解説に戻ります。
展示会の開催が決まると、店頭に来られたお客様にはもちろん、営業マンがお客様のご自宅に訪問して展示会の案内をします。しかし2-3週間前から順次案内していくとなると、一番はじめの方に案内したお客様は展示会のことを忘れてしまうんですよね。しかし少しでもお金をお預かりしておくとお客様の印象に残るので、1000円程度のお土産代を預かることで忘れないで来ていただけるようになるんです。お土産にお金を取るなんて少し変ですけどね。
例えば300人の方にご来場予約をいただいて、来場率が80%、お買い上げ率が80%、平均単価15万円とすると、2880万円の売上となります。来場予約の数字が出ることで、展示会が始まる前により正確に売上が読めるのです。
ご来場予約を取るメリットは他にもあります。
おそらく予約を取るときに展示会期間中何日の何時に来られますか?と聞かれることが多いと思います。これはお客様が重ならないように、もし重なってしまったときにはAさんに誰が接客するか、Bさんには誰が接客するのかなどを事前に決めておくためです。誰も接客する人がいなければお客様はすぐに帰っちゃいますし、お客様に「展示会来てくださいよ」と言いながら誰もお相手できないというのも失礼ですからね。
そんなに簡単にご来場予約をもらえるものか?という疑問はあると思いますが、呉服屋って基本は顔見知りのお得意さん相手の商売なんです。お得意さんの中には3日と開けずに店に来てお茶を飲んで話に来るという方もおられますし、展示会ごとに遊びに来ておもてなしのお菓子を食べて帰るという方もおられます。そういう方ですと
「また今度展示会があ…」
「はい、1000円渡しとくわ。来場予約いるんでしょ」
「いや、展示会の内容ぐらい聞いてくださいよ笑」
「ごちゃごちゃ言わんでも行くから。今日は忙しいねん」
そんなやりとりが普通に行われます。
もちろんお目当の着物があればご来場予約を取るときにリサーチして展示会場で見てもらえるように用意しますよ。展示会期間中は多くの商品を用意しておりますが、かえって目移りしてしまったり、好みに合うものが見つけられなかったりするので、事前に好みを伺ってお気に召しそうなものを用意しておけるのもご来場予約のメリットです。
ご来場予約は生モノなど食料品がいいとされていました。神戸から作家さんが来られたら神戸牛、年末ならカニ、そうそう、先ほど出てきた大阪の某大手呉服店はお客様から5000円程度いただいて豪華なおせち料理を配ってましたね。普通のノベルティグッズ程度なら取引先に返品ができますが、生モノですと返品することができないのでお客様に「生モノでお客様のために用意してるから必ず来てください」とお願いできますから。このあたりも顔なじみのお客様相手だからこそ言えるのでしょう。
私自身は集客のためにできる限り手を尽くすというやり方はもうこりごりで、現在は通販を主にしてのんびり店舗運営しておりますが、決してこういうやり方を否定しているわけではありません。呉服店側も商売ですから損するわけにはいきません。展示会を開催するには多大な経費がかかりますし、取引先から多くの商品も借りていますので絶対に成功させなくてはなりません。そのためには事前にどれだけの売上を取ることができるのか予測をし、ご来場予約が芳しくなければさらに企画を追加してお客様に来ていただけるよう、当日まで目いっぱい努力することは必要だと考えます。
こんな風に集客のために工夫している様子はともすると悪徳業者のように見えることもありますが、実際は家族ぐるみのおつきあいをしていたり、近くに来たら買うものがなくてもお茶を飲みに立ち寄ってくれたり、親しく付き合っている方ばかりを相手に商売していましたから、無理やり押し付けて購入させていたわけではありません。お客様側も展示会場でお茶やお菓子を食べながら店員や職人さんとおしゃべりして夜遅くまで楽しんでいた、そんな時代でした。
すごく荒っぽい言い方をすると、展示会って顔なじみのお客様に集まってもらってワイワイ言いながら最後には「しょうがないなあ、付き合いで買っとくわ」的な場だったように思います。最近はそういうやり方が通用しなくなってきて呉服業界全体的な市場が小さくなってきているんですがそのあたりの考察はまた次の機会に…。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
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