訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシか
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本日のお題:訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシか
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■訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシか
今週も「着物ルールは時代と共に自然に変化するシリーズ」その2です。え?シリーズだったの?と思った方、私もシリーズ化するつもりはなかったんですが、時代と共に着物のルールも変わっていくネタを二週連続で思いついただけでして…。次回もこのシリーズにするかどうかはまた来週になってみないとわかりません笑。
SNS全盛の昨今、私も色々着物ファンが集まる場所に出て行って着物豆知識を配信したり、着物ファンの着姿を見せていただき楽しませていただいているのですが、たまに訪問着に羽織を合わせてる方がおられます。約30年前、私がこの業界に入った頃は訪問着に羽織を合わせるのはNGと言われておりましたのでやはりここでも時代は変わってきたな、というのを実感致します。
羽織の歴史を調べてみましたところ「wakore」というサイトに詳しい記載がございましたので引用します。
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羽織の歴史は戦国時代まで遡ります。有力な武将は自分の家紋や好きな柄をあしらった羽織を冬の防寒具として使用していました。江戸時代には羽織袴が様式化し、武士は日常着、町人は礼服として定着しました。
江戸中期になると紋付羽織袴が最も正式な服装となり、それと同時に身分や家柄を示すために家紋を入れるようになります。ただし、羽織姿は百姓では村役、商人では番頭以上など着用できる人は限られていました。
幕末では羽織袴は武士の正装、男子の礼装として普及していき、現在では正月などおめでたい時には芸能人が羽織を着てテレビ出演しているのをよく見かけます。
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ちょっと長めの引用でしたが、上記のことからわかるように羽織はもともと男性用のもので女性が着ることはありませんでした。しかし江戸の中頃になると江戸の芸者さんたちが着用するようになります。いろんな話を総合するとこのころの芸者さんは現在のTVタレントのような位置でファッションの最先端を取り入れて、そして羽織は女性も着用するものとして定着いたしました。
というわけでもともとは男性用のものが進化して女性も着用するようになったものなので羽織は礼装用にはならない、というのが一昔前の定説でした。そして今回の「訪問着に羽織を合わせるのはアリかナシか」というお話に入っていくわけですが、女性の訪問着は礼装用なのでその上に羽織を合わせると礼装用のものに礼装じゃないものを合わせることになってしまい、そういう合わせ方はNGとされていたのです。
しかしですね、冒頭で書いたようにSNS等でみていると訪問着に羽織を合わせる方が多々おられまして、時代は少しずつ変化して行ってるなぁ、と思うことが多くなりました。そういう合わせ方をみて「訪問着に羽織を合わせるのはダメなんですよ」なんて野暮なことは申しません。服飾文化は少しずつ変化していくものであり、江戸時代の芸者さんが羽織を着始めた時に「それは男性が着るものですよ」なんて言ってたら今から考えたら野暮ですよね。それと同じでそんなことをいちいち指摘するのは野暮ってもんです。
先日、あるラジオ放送を聞いておりましたら、こんなことを言ってる方がおられました。
ら抜き言葉ってありますよね。例えば「洋服を着られる」が現代は「洋服を着れる」という使い方をする方が多く、これは間違いとされています。しかしながらこの「ら抜き言葉」を方言として使っている地方もあり、果たしてそれが日本全国どこでも間違いであるかと言われればなかなか難しい。
例えば「洋服を着れる」というのは間違いですが同じような響きの「包丁が切れる」というのは間違いでなく、前者がなぜ間違いで後者が間違いではないのかを考えると文法を紐解いて考察していかなくてはならず、そんなことしてたら喋られへんわ!東京の標準語なら間違いだけれど、それを指摘するのが本当に正しいのかというお話でした。これって着物に置き換えても同じですよね。
日本はそれほど大きな国ではありませんが、昔はインターネットはもちろん、ラジオやテレビもありませんでしたので全国的に言葉が標準化されておらず、日本各地に様々な方言があります。着物のルールもそれと同じで「着物の方言」もあるのです。訪問着に羽織を合わせるのがNGというのはスタンダードなルールで見れば確かにそうなんでしょうけれど、日本全国で一斉にルールが決められたわけではなく自然発生的に定着していくものなので一概に「間違いだ!」と断じることには少々違和感を感じてしまうのです。私は知りませんが、訪問着に羽織を合わせるのはOKとされる界隈もあるかもしれません。
…とここまで書いてハタと思いましたが、インターネットのSNSという「地方」では訪問着に羽織はアリという「方言」ができたのかもしれません。着物のルールは親から子へ、子から孫へと受け継がれていき、自然と広まってきました。もちろん私たち呉服店もそれに倣ってお客様が恥をかかないようにある程度の着用ルールはお伝えします。
昭和から平成に時代は移り変わり、本来子供に伝えていくべき親も洋服生活になり様々な着物着用のルールが途切れてしまいました。しかし着物を着てみたいな、という方は少ないながらもおられました。ネット通販で店とコニュニケーションを取らずに購入し、インターネットで自分で情報を探して頑張って着物を着てみた結果、今までのルールと違う着方になってしまうのはある程度は当然かもしれません。先ほど書いたようにインターネットという地方の方言が出来上がったと考えるのがスムーズで、情報が全国一瞬で流れるこの時代ではその「方言」があっというまに今までの着物のルールを駆逐して全国的に標準とされる着方になっていくのでは、と思っております。
まあ、これも時代の流れですよね。おそらく明治や大正時代にゆっくりゆっくり時間をかけてできた着物のルールが、平成、令和になってインターネットという強力な情報ツールによってどんどん変わっていくのを目の当たりにすると非常に興味深いな、と思うのです。
訪問着に羽織がOKとなったら次は留袖にもOKになりますでしょうか。留袖は五つ紋で最高のフォーマル用着物であるのに対し、羽織は紋をつけたとしても一つ紋で、明らかに格が下がることになり、さすがに違和感を感じる方は多いのではないでしょうか。しかし訪問着に羽織がOKとされるなら留袖に羽織も同じ理屈で通せそうな気もしますがいかがでしょう。私の予想では留袖はインターネットで着姿をお披露目する機会が少なすぎて着物ファンの目に止まることもないので留袖+羽織はこれから先もNGのままではないかな、と思いますがいかがでしょう。この答えは50年後か100年後ぐらいに出るかもしれません。
なんてことを思ってツイッターでアンケートを取ってみました。もしかすると投票してくださった方も多くおられるかもしれませんが、呉服店としては驚くべき結果が出たのですが、ちょっと長くなりそうなので詳しくは来週に続きます。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
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