作家さんがユーザーに直販することについてその2
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本日のお題:作家さんがユーザーに直販することについてその2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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■作家さんがユーザーに直販することについてその2
本日のお題は「メーカーさんがユーザーに直販することについて」です。先週のその1は前置きだけでメルマガのほとんどが費やされるというまさかの展開でしたが今週は真面目に書き…いやいや、先週も真面目に書いたんですよ。ただ作家さんの立ち位置を理解していただかないとこれからの話もよくわからないと思いまして…。
先週書いたように、作家さんは取引している卸問屋を経由して小売店の展示会に出品、販売するのが主でした。作家さんの作品は単価が高いため、売れるか売れないかで展示会全体の成功が左右されたのですが生活様式の変化により着物市場が急速に縮小し、展示会自体が非常に少なくなってしまいました…というのが先週までのお話です。
で、現在のインターネット全盛の時代。作家さんやメーカーさんが直接ユーザーに自分の作品を届けることは、すぐに実現できそうだと思われるかもしれません。当店もツイッターで様々な情報発信をしており全国の着物ファンと交流させていただいておりますので、昔と違って作家さんの直接の声をユーザーに届けるのはそれほど難しい話ではないと思います。
しかしですね、ちょっと考えてみてください。もしインターネットで直接販売するサイトを作り、いろいろ宣伝してお客様に見ていただけるようになったとしたらいくらで販売しますか?メーカーから卸問屋に販売するのと同じ価格?それとも展示会で販売されている一般的な小売り価格にしますか?実はこれ、ものすごく難しい選択なのです。
展示会等で販売することも卸問屋との取引もなくなって明日からの販路が全くない、というところまで行っていればどんな値段をつけても全く問題ありません。しかしながら月に1回でも展示会に出品したり卸問屋を販売チャンネルとしてキープするのであれば、自分でサイトを作って卸価格で販売すると様々な問題が生じます。
先週書いたように作家さんというと展示会の企画の柱になりますので「○○先生来場!」というように作家さんの名前を前面に打ち出すことが多いのですが、その展示会で購入されたお客様は帰宅したのちに「いったいいくらぐらいで販売されてるんだろう」なんて検索することもあり得ます。そして同じような商品が展示会よりもかなり安く販売されているのを見つけることになり、お客様から「あんたの店は高い!」と怒鳴りこまれた上にキャンセルになってしまい、小売店からその作家さんを紹介した卸問屋さんへの大クレームとなってしまいます。
卸問屋としては展示会の企画として提案した作家さんに起因することであったとしても卸問屋の管理不行届き、そんな作家を紹介するなということになってしまいます。下手すれば管理の行き届いていない卸問屋というレッテルを貼られ、二度と使ってもらえなくなるリスクまで抱えることになりますので、そんなリスクのある作家さんは使えない=取引停止となるのは容易に想像できます。
実は昔、似たような事件を経験しました。といってももう20年ほど前のインターネット販売などなかった時代です。かなり特徴的な着物を作っておられた某作家さんの作品を販売しました。確か70-80万円ぐらいのかなりの高級品です。問題なく納品させていただきその後も親しくおつきあいをさせてもらっていたのですが、それから間もなく全く購入していただけなくなり、外回りで御用聞きに行ってもなんとなく冷たい。
うーん、何か気に入らないことしてしまったかなぁ、と思ったまま疎遠になってしまったのですが、数年後にそのお客様とお会いすることがあり、重い口を開いたのは「他店で半額程度で売っていた」とのことでした。実はその作家さん、お客様が購入してくださった後に事業が破綻してしまい、その作家さんの商品が安く市場に大量に出回ってしまったのでした。また運の悪いことに(?)非常に特徴的な作品を作っておられる方でしたので、パッと見ればすぐにその作家さんの作品であることがわかるんですよ。そしてショーウインドウにかけられている作品を見て「あれ?私倍以上の高い値段で買わされた!」と思われたのです。
数年後になりましたが、そのお客様には作家さんが破綻したことを説明してわかっていただけましたがその間は全く取引がなくなってしまいました。
先ほど書いたように、お客様は気に入った商品を購入すればすぐ検索する時代です。どんな作家さんか、どんな値段で販売されているのか、なんならメルカリやヤフオクも見られてしまいますが、作家さんの直販サイトで安く販売されているのを見つけたら大クレームになります。大きな組合のない呉服業界ではありますが、小売店同士の普通のお付き合いはありますので世間話で「あの作家、展示会で販売する価格より安くサイトで販売してるからお客様からクレームになってせっかく販売してもキャンセルになるよ」なんて言われて敬遠されてしまいます。
誤解しないでいただきたいのは、先週から申し上げているようにこれほどインターネットが発達して作家さん(メーカー)とお客様が簡単につながれる時代ですので直販することについては全く異論はありません。しかし価格面は、多かれ少なかれ卸問屋と付き合っていくならば、卸問屋を経た小売価格と同程度にしておかないと卸問屋さん、小売店、そして購入していただいたお客様にも迷惑がかかってしまいます。
つまり、今まで卸問屋経由で販売していた方が直販サイトで安く販売しようとするならば、今までの付き合いを全て切ってしまって直販サイトに全力で取り組む必要がでてきます。今まで安定して売り上げを作っていた卸問屋経由の商売か、0から始めるインターネットの直販一本で頑張るか、なかなか難しい選択ですね。
ちょっと前、有名芸能人が事務所を離れたというニュースが続けざまにありましたが、それってYouTubeをはじめとするインターネットが関係しているらしいです。つまり、今までは芸能事務所がテレビ番組の制作会社に売り込んで出演料を得てきましたが、有名芸能人だったら知名度を生かしてYouTubeを開設すれば比較的早く収益化できますし、SNSから直接オファーを受けることも可能なので芸能事務所に所属する必要がなくなります。
作家さんも同じように、自分たちで収益を得られるのであれば当然そうするべきでしょう。職人として修行して独立したばかりで、卸問屋さんや小売店と取引がないような方でしたら、最初から卸問屋とは一切付き合わずにインターネットを主戦場にすることも戦略の一つとして検討すべきですし応援したいと思います。広告費や集客の経費、その他諸々を考慮して正当な対価を得られる値段をつけて販売すればいいと思います。
でも結局、そこで人気が出てきたら卸問屋が取引したいと訪れて「30点購入するけど卸の価格はいくら?」とか言ってくるんですよね…。
インターネットで販売すると、その作家さんの作品の値段として認知されるため、まとめ買い&継続して仕入れてくれる卸問屋さんはそれより安い卸価格での購入を提案してきます。売る手間や広告宣伝の経費は減って安定収入が得られることにはなるものの、1作品あたりの作家さんに入るお金は減ることになります。
元々は作家さんがモノ作りをしてユーザーに届けていたものを、丁寧な接客や品揃えができる小売店がある程度まとめ買いをすることによって安く卸してもらい、またその上により大量に仕入れて各小売店に行き渡らせる卸業者が出来て今の流通が出来上がってきたので、将来はなかなか集客できないネットの作家のサイトを集めるネット卸問屋ができて…。主な売り場がネット上になっただけでまた今の流通と同じようになっていくような気もします笑。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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