見出し画像

作家さんのお仕事

====================

本日のお題:作家さんのお仕事

呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

きくや着物チョイ話は着物好き方々のために参考になることを紹介させて頂く豆知識メルマガです。着物教則本などに載っているものではなく現在呉服業界で営業している呉服店発の生の情報を配信しております。

上記本店サイトに会員登録していただくと、毎週水曜日にご登録のメールアドレスに同じ内容のメルマガが配信されますのでぜひご登録ください。

ツイッターでも毎日着物豆知識をつぶやいています。

TwitterID:@gofukunokikuya

きくや着物チョイ話はメール全文そのままご使用時に限り、転載・無断使用可能です。

====================

いつもメルマガをご購読いただき誠に有難うございます。

先日、店の中にいたらバカでかいハチが入ってきまして。腹の部分がシマシマの凶暴そうなやつで顔のそばを通ると羽音が「ぶーん」と聞こえて顔に風圧が来るぐらいのやつ。うえええええ、と言いながらなんとか打ち落としたんですが、秋でもあんなに大きなハチがいるんですね。ハチは迷い込んで入ってきただけなのに申し訳ない…。

先日より岡重ショール1名様にプレゼント企画が始まりました。当店の会員様限定で1名様に洋服でも着物でもよく合う黒地岡重シルクショールのプレゼントです。11月21日23時59分締め切り、ご応募は下記リンクにて承っておりますので是非ご覧くださいませ。

画像1

====================

■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。

https://www.kikuya.shop/view/category/ct47

====================

■作家さんのお仕事

今週のお題は「作家さんのお仕事」です。作家さんというと工房にこもってモノづくりをしているようなイメージをお持ちの方も多いと思いますが、時代とともに作家さんの役割は変わり、バブル期から平成の時代にはモノづくりをしているだけではやっていけなくなった、というのは先々週、先週にも書いた通りです。

しかし近年、インターネットの普及によって作家さんの立ち位置や考え方とでも言いましょうか・・・また少々変わってきていますので、今週はその辺りを書いてみたいと思っております。

先ほど書いたように、昭和の頃、友禅作家さんの仕事は工房で作品作りをしていれば完結しました。企画や経営、営業すら必要なく、作家さんの仕事として一番大事なモノ作りだけに集中することができたのです。というのも、その頃は卸問屋が有能な若い職人さんを見出し、その職人の作る作品を全部買って支え育てていました。パトロンと言うとなんとなく「お妾さん」などの印象があるので言葉のイメージが悪いですが、昔のヨーロッパの作曲家や画家達の多くも同じようにパトロンに支えられることによって創作活動に打ち込むことができた結果、大成しています。

昔の卸問屋の仕入れ担当者は作品を見る目を持っていたので「ここはこうした方が良い、この色使いはやめた方がいい」などとアドバイスをしながら若い職人さんを育てていったのです。人間国宝と言われる着物作家さんの中にも、そうした卸問屋との二人三脚で頭角を現していった方が少なくありません。

作ったものを全て買ってもらえるという安心感があれば、作家さんは自分の本業である作品作りに集中できます。企画や営業などの事務仕事をする必要がなく、資金繰りすら考えなくても良かったのですから、ひたすらにいいものを作り、技術を磨くことに集中できたのです。

その当時はまだ着物がよく売れた時代ですから卸問屋も新人作家を育てる余力がありました。仕入れ担当者は自分の責任で着物を仕入れるので目が肥えて顧客のニーズや売れ筋商品にも詳しくなり、それを作家さんにフィードバックすることによって作品は洗練されていったのです。

しかし平成に入る頃から店頭での販売は下火になり、展示会での販売が主体となってきます。先々週、先週に書いた通り、展示会では企画の柱として「作家○○先生来場!」と大きく打ち出され、作家さんは実演販売を担うようになります。

先週書いたように、展示会での実演販売は作家さんが展示会の一角に作品を陳列、販売し、お客様に売れたものだけを卸問屋、小売店が仕入れる消化仕入れが主体でした。卸問屋や小売店は自分で目利きして仕入れないので作品の良し悪しすら分からなくなっていきました。そんな風では作家へのアドバイスやフィードバックなどできようはずがありません。昔は結城紬を手触りだけで亀甲数(どれだけ紬が細かいか)を当てる目利きの達人などもおられたのですが、そんな「着物のプロ中のプロ」と言える方にも最近はお目にかかれなくなりました。

作家さんの立場からすると、消化仕入れだと消費者に直接販売しているように感じるでしょうし、卸問屋や小売店が仕入れるといっても伝票のやり取りだけですから、卸問屋も小売店も要らんやん!と思うのは当然かもしれません。しかし展示会の企画を組んだり集客をしたり、販売後の仕立てやお客様への様々なフォローをするのは小売店で、めちゃくちゃ手間がかかっているのですがそれはまた別の話・・・。

そして現代。インターネットの普及によって作家さんの仕事のやり方も変わってきました。

昔はいいものを作って卸問屋に買ってもらって、卸問屋から小売店に販売し、最終的にユーザーに流れていきました。昭和の話ではありますが、だいたい全てちゃんとお金を払う「買取仕入れ」で流通していたわけですが、当然全て売れるわけではありません。中には残念ながら売れ残ってしまうものもあるでしょう。

仕入れたはいいけれど売れ残ってしまい、3年、5年経ってもなかなか売れない。呉服屋は固定客に支えられていたので作家物を好むお客様に一通りお見せして全敗してしまったら、値下げしてでも処分したいと考えるのは商売をやっていたら当然のことです。

一昔前なら売れなかった着物を値下げして固定客に販売するのは珍しいことではありませんでしたし、他の方にその値段を知られることはありませんでした。しかしながら今やインターネットによって、地方の販売店で「ダブついた商品」の情報は日本中に一瞬で伝わってしまうのです。

以前、おつきあいのある卸問屋から某作家さんの作品を買わないかという提案があったのですが、通常20万円ほどのところ5万円というとんでもない安値でした。おそらくどこかの卸問屋か小売店が倒産したか資金繰りのために放出したかだったのでしょう。とにかくめちゃくちゃに安くなっていましたが残念ながら見送ることにしました。当店もその作家さんとは親しく付き合っていたので、そのような破格の安値で販売するわけにはいかなかったのです。

その旨を卸問屋の担当者に伝えると「そうですか、その気持ちは尊重しますけれどこの商品はまた別の店に持っていくので別の店で安く販売されるだけですよ」とのこと。まあそりゃそうなんですが、親しくさせてもらっている作家さんの値崩れを当店が率先してやるわけにはいきません。ものすごーく魅力的な話だったのですが残念ながらお断りいたしました。

しかしよく考えてみると、いい作品を作って有名になって、ネームバリューを活かして卸問屋にどんどん買取仕入れてもらって、というのが作家さんの成功のセオリーでした。しかしインターネットの普及によって作家さんの作品もその値段も一瞬にして北海道から沖縄まで知れ渡るようになった結果、買取仕入れしてもらった商品が卸先でだぶついてしまうと値崩れの原因になってしまいます。卸問屋が安く販売するならまだ作家さんからクレームを入れることができますが、その先の小売店となると直接の取引がないので価格に注文をつけるのも難しくなります。

誤解のないように書きますが、作家さんは自分の作品を不当に高く売ることを要求しているわけではなく、不当に安く売ることも要求していません。あくまでも「その作品に対する適正な価格」での販売でお客様に喜んでいただくことを望んでる方がほとんどです。余談ではありますが、展示会にお手伝いに行ったとき、作家さんが「こんなに高く売られた困る」なんて怒ってることはたまに目撃しました。

最近は展示会の場に行くことがほとんどないのですが、当時お会いした作家さんの中には買取仕入れしてもらうと売れ残った時に値崩れの原因になるので問屋には卸さない、小売店にも仕入れてもらわなくてもいい、小売店の展示会に呼んでもらって直接お話しした方のみに購入してもらうようにしている、という作家さんも少なくありませんでした。また、作品に落款は一切入れず、着物雑誌に掲載される時にも大きく名前を出さないようにしている、という方もおられます。

以前の作家さんは名前を売って有名になってどんどん仕入れてもらって、というのが成功だったのかもしれません。しかし現代はそれが値崩れの元となり、最終的には自分で自分の首を絞めてしまうということにもなりかねません。かと言って展示会等で顔を合わせたユーザーにのみ販売するのでは販売数が少なすぎます。展示会は週末だけですし毎週行われるというわけでもありませんし、販売数はある程度必要なのと、値崩れのリスクと、色々考えながら微妙なバランスが要求されそうです。

====================

発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや

住所:大阪市大正区泉尾3-15-4

電話:06-6551-8022

https://www.kikuya.shop/

上記URLにて会員登録していただくと毎週水曜日にこのブログと同じ内容のメルマガがご登録のメールアドレスに送信されます。

====================

いいなと思ったら応援しよう!